約 194,393 件
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4197.html
『愛された果てに』 40KB 観察 家族崩壊 現代 独自設定 失礼します。 anko2611 ゲスゆっくり奮闘記1 anko2622 ゲスゆっくり奮闘記2 anko3414 ゲスゆっくり奮闘記3 anko3417 ゲスゆっくり奮闘記4 anko3456 れいむのゆん生 anko3458 まけいぬとゆっくり anko3461 ゆっくりに生まれて anko3484 ゆっくりブリーダー anko3489 休日とゆっくり anko3652 ドスについて anko3715 ゆっくりに餌を anko3729 はじめてのぎゃくたい anko3730 はじめてのしいく anko3794 まりさとの勝負 anko3843 野球部のゆっくり anko3855 ゆっくりと会話してみた anko3932 ゆっくり観察日記 anko3933 ゆっくりと子供 anko3953 しんぐるまざーの朝は早い anko4016 虐められるためのゆっくり anko4094 普通の人とゆっくり 「」ゆっくりの台詞 『』人間の台詞でお願いします 「ゆっくりおきるよ!」 朝のまだ早い、やや薄暗いだろう時間の、ある大きな群れ。 そこに所属する一匹のまりさが巣の中で声をあげた。 木の根元に作られた広く、またすべすべの巣の中、奥のベッドで寝ている番のれいむに、その子供たちを見ながら彼女はニッコリ笑う。 一家の長として、これから狩に向かう彼女は家族の寝顔を見て、それをエネルギーに頑張ろうとしているのだ。 それと同様の光景は、周囲に乱立する木の根元にある巣で数多く見られている。 それらを朝の日課を終えたのか、広い群れの敷地の木の根元からぞろぞろと父親役だろうゆっくりが出てくる。 まりさ種が一番に多く、次にみょん種、ちぇん種など活発なゆっくりが続き、れいむ、ありす、ぱちゅりーなどもチラホラ見られた。 まりさは、近隣のゆっくりたちに声をかけながら食事を探すために跳ねながら移動していく。 「きょうっも! おいっしい! ごはんっさん! たっぷり! あってね!」 疲れるだろうに、まりさはゆっくりらしく自分の考え行動を大声で喋りながら跳ねていく。 街中の、惨めに這いずって、黙々とゴミを漁るゆっくりとは対照的な伸び伸びとして姿。 他のゆっくりも同じように声をあげ、皆笑顔で飛び跳ねながら狩に向かっていっていた。 まりさはしばらく跳ねて、いつもの狩場にたどり着いた。 既に、そこには何匹ものゆっくりがいて狩を開始しているようだった。 早い者は、既に十分な食料を得てこれから巣に戻って家族とゆっくり過ごそうとしている者もいる。 「ゆっ! まりさも いそがないと!」 それを見て、まりさは同じく狩を始める。 「きょうっも おいしいごはんさんがたくっさんだよ! まりさはかりのたつゆんだね!」 目につく限りの食料をどんどん帽子に詰め込んでいき、ほんの短時間でまりさの帽子と口の中は食料で埋め尽くされていた。 通常の野生ゆっくりの数倍の食料を手にしたまりさは、笑顔のまま巣に向かって跳ねだした。 「ゆふふ、きょうも たっくさんごはんとれたよ! これで、れいむもおちびちゃんも おおよろこびだよ!」 相変わらずの不思議饅頭、口を閉じたまま喋ってニヤニヤ気味の悪い笑顔を浮かべていた。 そして、自分の巣に飛び込むようにして入る。 「ゆ! ゆっくりただいま!」 「ゆ! まりさおかえりなさい!」 「「おちょーしゃん! おきゃえりなしゃい!」」 まりさの声に、既に起きていて朝のうんうんの真っ最中だったらしい子供と、その手伝いをしていたれいむが声を返した。 大き目の葉っぱの上に、うんうんをさせていたれいむは、それを舌で器用に丸めると巣の奥に開いた穴に落とした。 「ゆふふ、きょうもしっかりうんうんできたねおちびちゃん」 「ゆっ、それはえらいね! たくさん うんうんして どんどんおおきくなってね!」 「「ゆ! わかっちゃよ! しょれよりごはんにしちぇね!」」 毎日うんうんするのは健康と成長の証、親からそう言われて育ったまりさとれいむは、子供のうんうんに笑顔を浮かべて頷きあう。 二匹の子まりさ子れいむは、褒められたのは嬉しいけれどお腹が空いているのが優先なようで、涎を垂らしながらまりさを見つめていた。 「ゆ! ごめんねおちびちゃん、ついわすれちゃってたよ! すぐにごはんにしよーね、れいむおさらをよういしてね!」 「ゆっくりりかいしたよ! ゆっしょゆっしょ」 まりさの声に、れいむ巣の奥から大きめの葉っぱを持ってきた。 「ゆっぺ! ゆふふ、きょうもおいしいごはんがたっくさんだよ!」 「「ゆ、ゆわぁぁああ!! おいちちょー! おちょーしゃんしゅごーい!!」」 口の中のご飯を葉っぱに吐き出すと、子供たちは目を輝かせうれしーしーまでしながら喜んでいた。 それに「ゆふゆふ」笑いながら満足したまりさは、帽子の中の食料を奥の食料庫に放ってから戻る。 しっかり躾をされているのか、その間も子供たちは涎を垂らしながらも、ご飯には口を着けず待っている。 子まりさは、お下げを振り回しながら「ゆわゆふ!」と目を輝かせて涎を垂らしていて。 子れいむは、もみ上げをピコピコさせながら、何故か底面を持ち上げもるんもるんと振っていた。 「ゆわぁ、おちびちゃん とってもぷりてぃーだよぉ hearts;」 「まりさもおなじきもちだよ! さ、あんまりおちびちゃんをまたせたら かわいそうだから ごはんにしようね!」 親子四匹で大きな葉っぱに乗った山盛りの食料を囲む。 二匹の子供は、今か今かと涎を垂らして、二匹の親はその可愛さに頬を緩ませていた。 そして。 「それじゃ、ゆっくりいただきます!」 「「いちゃじゃきまーーす!! はむ! ぐちゃぐちゃ! はぶ! ぱにぇ! これ! はんぱねぇ!」」 汚れるのも構わず、大量の食料に頭から突っ込んで尻を振りながら貪って行く二匹を、両親は優しく見守る。 「ほんとにゆっくりしてるね!」 「まりさのおかげだよぉ、おいしいくささんに、きのみさんに、おちびちゃんが だいすきなちゃいろさん、こんなにたっくさんとってきてくれたから……まりさは ほんっとうにじまんのだんなさんだよ!」 「ゆふふ、それほどでもないよ、まりさはれいむたちが いるからがんばれるんだもん」 二匹は身体を寄せて、親愛を表す優しいすーりすーりを繰り返す。 寒さを凌ぐのではなく、性欲の発散でもない、お互いの頬をゆっくり優しく、暖かさを確かめ合うような行為を、最愛の子供を見ながら繰り返した。 「「ゆげっぴゅ! みょう いらにゃいよ! ゆっぷ!」」 山盛りの食料の一部を貪り切った二匹は、食べ進んだ所で食べかすだらけの体を仰向けにして、膨らんだ腹を見せつけながら動きを止めた。 「ゆふふ、たっくさんむーしゃむーしゃしたね! おちびちゃん、ぺーろぺーろしてあげるよ!」 「ゆひゃひゃ! くしゅぐったいよ!」「れいみゅも! れいみゅもしちぇね! すぐでいいよ!」 れいむは、二匹の身体についた食べかすをその長い舌で舐めとっていく。 その姿を見ながら、まりさは幸せに浸っていた。 優しい妻に、可愛い子供の成長、これ以上の幸せはないと信じて笑みを浮かべる。 「ゆふふ、みんなゆっくりしてるね……」 これまでの自分のゆん生を振り返って、苦労を思い出すと涙が出そうになるが、まりさは父親としてそれを飲み込む。 子供の頃の姉妹の死、何回も経験した越冬、おうち作りの苦労、れいむとの熱愛、狩の辛さ。 様々な記憶が、今の幸せに繋がっていると思うと、感情が震えだしていた。 「まりさ? どうかしたの?」 「ゆっ!? な、なんでもないよ……おちびちゃん、ねちゃった?」 「うん、みて、かわいいねがおだよ……」 静かになったまりさを心配して、れいむが声をかけてきた。 それにビクッと反応して、目線をれいむに向けると、彼女はお腹を一杯にして眠りだした子供二匹を優しく見つめていた。 まりさたちは、食事をしたら直ぐにご飯あとのすーやすーやを始めるのは、大きくなる秘訣だとそう教わっていた。 まりさは、ずーりずーりと底面を静かに這わせて、草のベッドで眠りにつく子供たちの頭をお下げでそっと撫でる。 「ゅ、ゅぴぴ、れーみゅの、こんしゃーとに、あちゅまってくれて、ゆぷぅ」 「ゆぴー、ゆぷー、まりしゃ、ちゅいにどしゅになっちゃの じぇぇ、ゆぴぴぅ……」 寝言を漏らしながら、幸せ一杯の寝顔を見せている二匹を、まりさとれいむは満面の笑顔で見つめる。 「かわいいね、おちびちゃん」 「うん、れいむも そうおもうよ」 しばらくその幸せをかみ締めるように、寝顔を堪能した二匹は、静かに子供の食べた後の食事を開始した。 時より、ベッドの方を見て、夫婦で微笑みあったりしていた。 食事を終えて、余った食料をれいむが色々分別するのを見ながらまりさは外を見つめる。 「……れいむ! まりさ ちょっとおさんぽしてくるよ!」 「ゆ! わかったよまりさ、おひるにはかえってきてね!」 「ゆん! あたりまえだよ、それじゃあ おちびちゃんをよろしくね!」 れいむに子守を任せると、自慢の帽子を一番格好良いと思っている角度で被って巣の外に出る。 「ゆっゆ~ん! きょうもいいてんきだよ!」 朝の狩では急いでいて感じる暇もなかったけれど、今日も空は青空で心地よい暖かさだった。 「そろそろなつさんがくるんだね」 まりさは夏が好きだった、暖かいし、何よりまりさが生まれたのは3回前の夏。 子供が生まれたのは秋の終わり、そう考えると秋も好きだなと、まりさは考えていた。 「むきゅ、まりさ、こんにちは、おさんぽかしら?」 「ゆ? おさ! ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね」 暖かい森の中を進んでいたら、まりさの所属する群れの長であるぱちゅりーが声をかけてきた。 この長ぱちゅりーは、10回以上のの越冬を経験した頼れる長だった。 「まりさ、おちびちゃんはげんきかしら?」 「げんきだよ! きょうもごはんさんたーっぷりたべて いまはすーやすーやタイムのまっさいちゅうだよ!」 「それはよかったわね、おちびちゃんがおとなになるまでのにねんかん、しっかりそだててあげるのよ?」 長の言葉にまりさは笑顔で、自信に満ちた笑顔で頷いた。 「とうっぜんだよ! まりさがそうしてもらったんだから、まりさもおちびちゃんをたいっせつにそだてるよ!」 まりさの言葉に満足したのか、長はニコニコ頷いて、ゆっくりとその場を後にした。 その後ろ姿を見送ってから、まりさはまた進み出した。 周りには、もう季節を一回りして子ゆっくりサイズになったゆっくりたちが声をあげて走り回って遊ぶ姿が見える。 それを横目に見るように、親ゆっくりが複数集まって世間話をしたりもしていた。 「ゆふふ、みんなゆっくりしてるね」 その光景に笑顔を浮かべながら進み、ちょっと開けた池がある場所に出た。 「ゆっ、こんなとこまできちゃったんだね」 まりさはうっかり遠出してしまったことに驚きながらも、ゆっくり池に近づく。 この池にはにとり等が住む他に、群れの皆の大切な水分補給の役目を担っているのだ。 歩きつかれたまりさは、池に近づいて水を飲むと、しばらくその場で休憩を始めた。 「……ゆっ、そろそろかえるよ! おちびちゃんとごはんにしなくちゃね!」 十分ゆっくりりたのか、思い立って直ぐにぴょんぴょん跳ねて巣に向かう。 周りにも同じように、跳ねて巣へ戻ろうとするゆっくりが何匹もいた。 そのゆっくりに負けないように跳ねて、まりさはれいむと子供の待つ巣に向かった。 「ただいま! ゆっくりかえったよ!」 「ゆっ、まりさおかえりなさい」 「「おちょーしゃん! おきゃえり! おにゃきゃしゅいたよ!」」 巣に戻ると、れいむと遊んでいた可愛い我が子が出迎えてくれた。 相変わらず食欲旺盛な子二匹だけど、それがまた可愛らしく感じられるのか、まりさは明るい笑顔を見せた。 「れいむ、またせちゃったみたいだから、さっそくごはんさんにしよーね」 「わかったよ、ちょっとまっててね!」 「ぎょはんだよ! まぃちゃのむーしゃむーしゃタイムだよ!」「れいみゅのむーしゃむーしゃだよ!」 まりさの声に、二匹は直ぐに涎を垂らして、また嬉しーしーを漏らしながら震えていた。 「まったく、おちびちゃんはくいしんぼうさんだね! ゆふふ」 「ゆっ、みんなごはんだよ!」 れいむが朝のように大き目の葉っぱに、食糧庫に保存しておいたものを持ってきた。 一番多く取れて、保存の利く茶色いものがメインに、乾燥した山菜なども乗せてあり、それなりに彩りがある。 「それじゃあ、ゆっくりいただきます!」 「「いちゃじゃきましゅ! はぐむぐ! むーしゃむーしゃ! ぱねっぇ! こりゃむっちゃぱにゃい!」」 食事が開始されれば朝の焼きまわしだ。 尻を振り乱しながら、お下げともみ上げをピコピコさせて、全身で食糧に突っ込んで食べるだけ食べたら眠る。 理性と対極に位置してそうなその姿を、親二匹は笑顔で見つめていた。 我が子が成長するに必要な栄養を全力で摂取しているのだから、当然のように幸せなのだろう。 「「おちびちゃん、いっぱいたべて、いっぱいおっきくなってね!」」 …………。 ………………。 「いたいよぉおおおぉお!! れーむのあんよがいたいよぉおおおおお!!」 「ゆ、ゆぁ、ゆわぁあああ!! お、おちび、おちびちゃんがぁああ!!」 「れ、れいむ、おちついて! まずはおちついてね!!!」 一冬越えた春先、もう外に出られるくらい大きくなった二匹の子供の内、子れいむが転んで底面、あんよを切る大怪我をしてしまった。 ゆっくりにとって足の怪我は死活問題、即座に死ぬ危険はないけれど、治さなければ一生の問題になってくる。 れいむは、それを解っていて大声でうろたえていた。 その姿に、自分だけはしっかりしなくてはと、まりさは語調を強くしながら叫ぶと、どうしたら良いかを考える。 そして、直ぐに思い至ったのか、ハッと息を呑んだ。 「おさに、おさにきけば なおすほうほうが きっとわかるのぜ!!」 「ゅ、ゆう?」 「おさはなんでも しってるのぜ! まりさがいまからおさにきいてくるから まってるのぜ!!」 まりさはゆっくりしないで、巣の外に出た。 外はもう暗くなっていたけれど、関係ない。 どこからか「う~う~」と、れみりゃの声が聞こえて来たけれど、大切な子供の為に危険も顧みず走り出した。 「おちびちゃん! まっててね、いま まりさ、が……ゆぴぃ、ゆぷ~」 ……。 …………。 「ゅ? ゆっくりおきるよ! ……ゆ?」 翌朝、いつもみたいに巣の中で目を覚ましたまりさは、不思議な気分に包まれた。 「ゆぅ?」 しかし、それが何だったかは思い出せなかった。 ただ、何か妙だなぁ、と思っただけで直ぐに忘れ、いつものように寝ている家族に見て笑いそして狩にでかけた。 「まりさはかりのたつゆんだから、きょうも たっくさんごはんとってくるよ!」 そっと見たベッドの中の子れいむ、まりさに向けているあんよの一部が薄っすら色が変わっていたが彼女はそれに気付かないで跳ねていった。 いつものように狩に向かう皆の流れに乗って狩場に向かうと、いつものようにご飯を口と帽子につめて、来た道を引き返す。 家につくと、何やら中から声が聞こえてきた、どうやら家族が起き出したようだ。 「ゆっ、ただいま!」 「おちびちゃん、ほんっとにだいじょうぶ? どこかへんなとこはない?」 「ゆぅ? なにいってるのおきゃーしゃん、れーむどこもいたくないよ?」 「おとーしゃん、おかえりなのぜ! まりさもそろそろかりにいきたいのぜ!」 まりさの声に反応したのは子まりさだけで、れいむと子れいむは何やら話していてこちらに気付いていないようだった。 しばし、そろそろ狩に行きたい言う野球ボールくらいの大きさになった子まりさと話してから、れいむと子れいむに声をかける。 「れいむ、いったいどうしたの?」 「ゆ、まりさ……」 「おかーしゃんが、さっきかられーむにだいじょうぶ? だいじょうぶ? ってきいてくるんだよ! れーむどこもいたいいたいじゃないのに」 れいむは心配そうな顔で、子れいむをチラチラ見ながら、子れいむはちょっと不機嫌そうな顔でまりさを見てきた。 「れいむ、おちびちゃんがどうかしたの?」 「まりさ、なんだね、おちびちゃんが いたいいたいだったきがするんだよ でも おちびちゃんはだいじょうぶっていうし」 不確かながら、何やら不安を感じているらしいれいむを、まりさは優しくぺーろぺーろした。 「ゆふふ、れいむはやさしいね でも、おちびちゃんは れいむがまもって くれてるから きずひとつないよ」 「ゆぅ~ん、まりさぁ、ありがとうね、れいむ あんっしんしたよ! ぺーろぺーろ」 まりさの行為でれいむは安心したのか、不安そうな顔を引っ込めて笑顔を浮かべた。 れいむが自分の心配をしなくなったので、子れいむはまりさが取ってきた食糧の前で食事の合図を今か今かと待っていた。 それは子まりさも同じらしく、チラチラ親を見ながら涎を垂らす。 「ゆっ! れいむ、そろそろごはんさんにしようね! おちびちゃんがまってるよ!」 子二匹に気付いたまりさは、れいむに声をかけてゆっくり這いずって朝食を始めた。 それからしばらく平和な春が過ぎて、異変は夏に起きた。 そろそろまた秋が訪れてるちょっと前、子ゆっくり二匹が巣立ちをする目前の時期だった。 毎朝のように狩に出かけたまりさは、狩場に起きている最近の変化に声を漏らした。 「きょうも くささんがないよ……ゆん、さいきん ずっとだよ でもちゃいろさんが たくさんあるから だいじょうぶだね!」 ここ数日、普段持ち帰っていた山菜や、木の実などが丸っきり姿を消していたのだった。 その代わりに大量に置かれていたのは、普段は草よりやや大目くらいにある茶色い食べ物。 とりあえず他にないし、それは甘くて美味しいので持ち帰って皆で食べることにした。 「ゆ! かえるよ!」 声をあげて跳ねだした、周りには他のゆっくりも元気に巣に戻っているところだった。 まりさは、その波に乗るように負けぬように跳ねながら、また微妙な違和感を覚えた。 「ゆ…………きのせいだね!」 何だか、少し周りのゆっくりが少ない気がしたけれど、まりさは気にせず家路を急ぐことにした。 「ただいま! きょうも ちゃいろさんがたっくさんだよ!」 「「やったー! おとーさんありがとー!」」 「まりさ、おつかれさま!」 巣に戻れば、もう大分大きくなって巣立ち目前の子二匹と、新たにお腹に子を宿したれいむが迎えてくれた。 いつものように葉っぱにとってきたものを置いて、残りを保存する。 そうしてから、皆で朝の食事を始める。 もう頭から食糧に頭を突っ込むこともなくなった子れいむと子まりさと同じタイミング食事を始める両親は、二匹に巣立ちについて色々と教えているようだった。 巣の作り方、番の見つける基準、子育ての仕方、それらを思い出話と交えながら楽しそうに語っていく。 「ふたりとも まりさの じまんのおちびちゃんだから とってもゆっくりした かぞくをつくれるよ!」 「「ゆん! ありがとうおとーさん!」」 食事を終えると、子ゆっくり二匹は友達と遊びに外に跳ねていった。 既に二匹には意中のゆっくりがいるらしいので、目的はどちらかと言うとそちらだろう。 まりさは、二匹が跳ねていった巣の出口を皆がら息を吐く。 「もう おちびちゃんも すだちのじきなんだね」 「そうだね、まりさ……このおちびちゃんも きっとゆっくりしたこにそだてようね」 まりさの声に聞いて、れいむは揉み上げで自分の膨らんだ腹部を撫でる。 大分大きくなり、そろそろ生まれる新しい我が子に、慈愛の笑みを向けていた。 それは、まりさも同じで、優しい視線でれいむの中の我が子を撫でるように見つめる。 「まりさと れいむのこなんだから きっとゆっくりしたこになるよ!」 「ゆふふ、そうだね」 二匹は寄り添い、次の生まれてくる子供のことを熱心に話し合った。 それから数日経ち、相変わらず山菜が取れない日々が続き、秋になったある日二匹の子供は両親にこう切り出した。 「おとーさん、おかーさん、まりさとれいむははなしが あるのぜ」 「ゆん……わかってるよ」 「ゆぐっ、ゆぐ、ゆあーん! ゆあーん!」 子まりさの真剣の表情から内容を察したまりさは重く、そして嬉しく受け止めて。 れいむは、内容を察した上で寂しさから声をあげて泣いていた。 子れいむ、子まりさも何かに耐えるように身体を震わせ目に甘い涙を浮かべながらも笑顔を浮かべて話し出した。 「れ、れいびゅと、ま、まりじゃは、ひ、ひとりだち、するよ!」 「いばばで、ぁりがぼうなのぜぇ!!」 「ゆん、ゆん……こちらこそ、だよ」 「ゆわぁぁあん! やだよ! やだよぉおお!! いっちゃやだよぉおお!!」 涙を流さぬようにする三匹の分も泣くように、親れいむは大声で泣き続けた。 それでも、時間は残酷に過ぎて行く。 子れいむの番になるちぇんが迎えに来たところで、子まりさもこれから番になるありすと迎えに行くと言うので巣を出て行った。 れいむは最後の最後まで二匹にすーりすーりを繰り返して、二匹が巣を出てからもずっと大きな声で泣いていた。 「ゆん、れいむ すーりすーり、だよ」 「ばりざぁぁあああ!! おちびちゃんが、おちびちゃんがぁああ!!!」 「ゆん、だいじょうぶ、きっとすぐに かわいいおちびちゃんをつれて あいさつにきてくれるよ、ゆん」 泣きじゃくるれいむを、まりさはずっと優しく優しくあやし続けた。 その日まりさは、泣きつかれたれいむをぺーろぺーろして、一筋だけ涙を零すと、れみりゃの声を聞きながら眠りについた。 ……。 …………。 ………………。 「ゅ? なんだか、さむい、よ? ゆぅ?」 まりさが目を覚ますと、そこは見たこともない場所だった。 今まで住んでいた森の中と違う、暗く鬱葱と草が茂り、ジメッとした地面の上にまりさはいた。 「どこ……ここ……」 呆然としながら、まりさは周囲を見回すと直ぐ後ろには番のれいむが寝ていた。 頬に涙の跡をしっかり残したれいむの身体を、まりさは自分のお下げで優しく揺する。 「れいむ、れいむ! おきてね!おきてね!」 「ゅ、ゆうん、なに、まりさ、もうかりはおわったの? ゆ? ゆ? なんで、れいむおそとにいるの」 寝ぼけ眼を揉み上げで擦っていたいたれいむは、自分がいる場所を認識して目を覚ました。 まりさと同じく周囲をキョロキョロ見回してから、不安そうな顔を見せる。 「ま、まりさ、こ、ここ、どこ? なんだか ゆっくりできないよ……」 「まりさも、わからないのぜ……むれのもりとは なんだかちがうみたいだよ」 まりさは言いながら、群れのあった森を思い出す。 柔らかく歩きやすい地面に、綺麗で巣になる木、綺麗な草花に、爽やかで暖かい風。 そのどれもがここにはない、地面は硬くごわごわしていて。 捻じ曲がって、どこか化け物みたいで途方もなく大きな樹木、どこか攻撃的に尖った草花、ジメッとして青臭い風。 どれもこれもがまったく自分の常識外だった。 しかし、泣きそうなれいむを前に自分まで泣く訳にはいかないと顔を引き締める。 「ま、まずは だれかさがそうね! ここがむれのどこか わからないと おうちにかえれないからね!」 そして、努めて明るくまりさは振る舞い、れいむに声をかけた。 その姿に、れいむは少し安心したのか小さめの笑顔を見せて頷き、浮かんでいた涙を揉み上げで拭い消した。 「そ、そうだね! はやくおうちにかえってごはんにしようね! じゃないとおなかのおちびちゃんもおなかをすかせちゃうよ!」 「ゆん! じゃあ、いこ、んゆぎゃぁぁぁあぁああ!?!?!」 「ば、ばりざぁぁぁあ!?!」 一声気合で、一歩跳ねたまりさは大きな声をあげて転げまわった。 「い、いだい、いだいいぃいいい!! あんよがいだいぃいいいぃいいい!!!」 「まり、まりさ、お、おちつ、おちつ、ゆわぁぁあん!! ゆわぁぁああん!!」 今まで見たことがないくらいの動揺を見せてまりさに、れいむは落ち着かせようとするが、直ぐに自分の限界が来て泣き出してしまった。 まりさの跳ねた先には、やや大きめの小石が転がっていて、その上に乗ってしまったのだ。 その鋭い痛みにまりさは声をあげて、涙を流して転げまわる。 転げまわる度に、硬い地面や石、痛い草に身体を傷つけられて更に声をあげ続ける悪循環。 まりさのゆん生では味わったことのない痛み、それが全身を支配していた。 まりさのこれまでは、こんな石を踏んだこともなければ、こんな痛い草に触れたことも、ごわごわの土に触れることもなかった。 何故なら、まりさは室内で飼われていたゆっくりなのだから。 ――――。 ――――――。 ある都市の中心に立てられた、屋内型森林公園。 かなりの広さと、行き渡った設備は一ヶ月の内に四季を再現する、少し寂れていた街の活性に繋がっている施設だった。 その施設の名前は〔ゆふぁりパーク〕名前の加減から想像出来る通りの、ゆっくり園と呼ばれる場所だった。 ゆっくり園とは、屋内に土を敷き、草花を植えて、野生のゆっくりの生活を街に再現するという触れ込みの、ゆっくりの動物園のような場所だった。 ゆっくりに人気に肖り、日本中に数多くのゆっくり園が出来ていたが、ここはそれとは規模も施設も桁違いだ。 収容ゆっくり数は、通常のゆっくり園が一つの群れに相当する150~300に対して、驚きの2300匹。 通常種だけでなく、希少種、捕食種まで完備されている。 しかも、普通のゆっくり園ではないような四季の整備により、より野生のゆっくりの生活を見れるという触れ込みで、週末になれば日本中から多くの人が詰め掛けていた。 柔らかい土を引いて、小石一個でも取り除いて、芝生を敷いたり、ゆっくりの肌を傷つけない草花を植えて、いつでも快適に暮らせる環境を整えてあった。 一週間ごとに季節が変わり、知らず知らずにゆっくりたちは一ヶ月を「いちねん」と呼んでいた。 基本的に内部のゆっくりは自分たちが建物の中にいるとは考えてない、人間と接触は0になるようにされていたから。 夜になれば、れみりゃの声をスピーカーで流して、巣に戻らせてからラムネスプレーが全域に撒布されて、例外なく睡眠状態にして、その間に園内の掃除や、調整、傷を負ったりしたゆっくりの治療などを秘密裏に行う。 一般客が通るのは、床からほんの2mほどの位置を蜘蛛の巣のように通されたアクリル製の通路だ。 この通路には仕掛けが施されていて、ゆっくりが見上げてもそこに人がいるとは判断されない作りになっていた。 ゆっくりにとっては見えないというのは認識出来ないと一緒であるために、いくら喋ろうが気付くことはない。 これにより、人間と関わらない本来のゆっくりの姿を楽しめるという風に言われていた。 巣も全て、木を模したオブジェでその内部は、それぞれオブジェに設置されたモニターを通じて通路から確認出来るようになっていた。 巣の奥にはうんうんを捨てる穴があり、そこに放り込まれると最終的に全ての巣から集まり捨てられる仕組みになっていた。 ゆっくりが集まるポイントも人工的にいくつも作られていて、そこにはアクリルの大き目のラウンジ状態になっていて多くの人が集まる。 そんなゆふぁりパークの一日は、まずは係員が広大な敷地の指定されたポイントに、餌となるゆっくりフードと、山菜など野山でも取れるだろう食料を置くところから始まる。 大きな木の板の上に、それらを置いておけば、あとはゆっくりが〔狩り〕をしにやってきて勝手に持っていく。 餌やりが終わると開園で、しばらくすると起き出したゆっくりの狩り風景を見ることが出来る。 そして入場客を案内したり、モニターでどこかでゆっくりが問題を起こしていないかを観察する。 危ないものがないゆっくり園ではそうはないが、ゆっくりは弱いので怪我をすることは多々ある。 なので、怪我をしたゆっくりを発見したらその程度によって対処する。 即座に治療が必要なら、その区画にラムネスプレーを噴射して対処。 それ以外は夜になってから、治療を行う。 そして、四季の代わりによって変化するゆっくりの生活を入場客に説明する姿をちらほらと確認出来た。 このゆふぁりパークは、ゆっくり愛護団体により運営されていて。 〔野生本来のゆっくりのゆっくりらしい生活を見れる!〕という触れ込みによる多くの客を呼んでいたが。 施設のコストと、来場客からの入場料が徐々に釣り合いが取れなくなっていった。 それに伴い、野生のゆっくりが狩りをしてとれるだろう山菜や木の実など、手がかかるものを出せなくなり、ゆっくりフードだけを与えるようになっていき。 ゆっくり好きから支援などもあったが、終に財政が破綻してしまった。 残ったのは大量も大量のゆっくり。 希少種、捕食種などは他のゆっくり園や、希望者に引き取られていったが、通常種の扱いに困ってしまった。 1700近い不良債権たるゆっくりたち。 普通なら加工所行きだけれど、まかり間違ってもゆっくり愛護団体の施設、それだけはなしとされた。 しばらくは〔野生のゆっくり〕という触れ込みで里親を探したり、ペットショップに持ち込んだりもしたが。 ただゆっくりしただけで、躾も何もされてないゆっくりを飼いたがる人も、売りたがるペットショップもそうそうなかった。 種ゆや、生餌としてならという申し出もあったけれど、施設の人は怒りを露に断った。 『あなたたちはこんな可愛いゆっくりに、良くそんなことが出来ますね!』と。 怒っても何してもゆっくりの行き先は見つからない。 ゆっくりフードはまだ在庫はあったがそれもいつかは尽きてしまう。 もう加工所に頼むしかないのか、となったときに誰かが言い出した。 『あの、前に人間が育てたオランウータンを森に返すとか、見たんですけど』 その言葉に、施設の面々、愛護団体は名案と大いに賞賛した。 『ここのゆっくりは野生の環境で育てて来たんだ、野生に返しても生きていけるはずだ!』 殺すことはしない、自分では世話出来ないから誰かに押し付けたいけど相手がいない、だから捨ててしまえ。 そんな思考回路で、こっそりと大量のゆっくりが手分けして各地の山や森に捨てられた。 それぞれの心の中は、野生に返してやると言う崇高な使命で埋め尽くされていた。 それを大義名分に、野生ではありえない優しい空間で、異常な空間でしか生きてこなかったゆっくりを、厳しく辛い本当の野生に返したのだった。 ……。 …………。 「ゅ……れいむ、ごはんさん、とってきたよ」 「ゆ……これっぽっち、なのぉ?」 まりさが野生に返されて早数日。 今までの世界とはまるで違う生活に、二匹は傷つき疲弊しきっていた。 ふかふかで柔らかくて、いくらでも跳ねれた地面。 いつでも爽やかで暖かかった空気。 有り余るくらい取れた大量の食糧。 そして、快適な巣。 そのどれもが存在しなかった。 あの日、痛みから何とか起き上がったまりさは、泣いてるれいむを宥めて、進みだした。 奇しくも街中のゆっくりのように、無言でずーりずーりと底面を這わせての移動だった。 それもまるで鑢の上を歩くように激しい痛みを与えてきたけれど、跳ねて進めばどんな目に合うか解らないので仕方がない。 しかし、歩けど歩けどかつての群れにたどり着けない、と言っても痛みで悶えたり、慣れない本当の地面で疲れたりで50mも進めていなかったのだが。 段々暗くなり、異様な寒さに餡子が芯まで冷え切りそうになったまりさは、泣きつかれたれいむの為に巣を作ることにしたのだが。 かつての巣作りは、木のオブジェの根元に立てかけられた枝を外すだけの作業。 それしか巣の作り方を知らないまりさは、大きな木の根元を舐めたり、お下げで叩いたりするしかなかった。 「おでがいでずぅううぅう!! きさん! ばりざにおうぢをくだざいいいい!!」 そんな声と、必死に土下座する声が森に響いていた。 しかし、そんなことで巣が出来るはずもなく、まりさはれいむに謝って木の根元で身体を寄せ合って眠った。 季節は本当の秋、作られた秋ではない寒さと豊穣の季節、外で寝るには寒すぎた。 二匹は、いつまでも泣きながら身体を擦り合わせていた。 そして今にいたる。 相変わらず木の根元を拠点にしている二匹だったが、その生活はギリギリを通り越してアウトだった。 まりさは、体中傷だらけ泥だらけで、痛みで泣くから涙の跡が頬に染み付いて、そこに更に泥などがついて怪しい化粧のようになっていたし。 髪はぼざぼさで、今まで傷一つなく大事にしてきた帽子はヨレヨレ、栄養不足で頬はこけて、寝不足で隈が出来ている。 れいむは狩りにいかない分まだましかと言われればそうでもない、まりさに巣作りを任せられたれいむは、木の根元で日がな懇願したりしているので疲労が限界に達していた。 腹に子を宿しているのもあり、頬がまりさよりもこけている。 以前は、朝に狩りに行き、大量の食糧を取ってきていたまりさだけれど、今では一日中這いずり回って、僅かな、しかも苦くて硬い草をとってくるだけになっていた。 「ごめん、でも ぜんっぜんごはんさん なくて……」 「ゅう、これじゃ、おちびちゃんがゆっくりできないよ……」 申し訳なさそうに頭を下げるまりさから目を逸らして、れいむは自分のお腹を見つめた。 「まりさは かりのたつゆんじゃなかったのぉ? ひもじいよう……」 「っ!」 意図はあったのかなかったのか、まりさに対して責めるような言葉を向けた。 その言葉に、まりさは唇をかみ締めて震えだした。 「れ、れいむこそ、おうちはまだできないの? もう、なんにちたってるとおもってるの?」 そして、まりさは自分で思っていた以上に強く、非難するようなことを言ってしまう。 言ってから、少し罪悪感を覚えたけれど、毎日毎日必死に狩りをしているのは自分なのだからと正当化しようとしていた。 しかし、れいむはまりさの言葉にワナワナと震え、歯を食いしばった。 「こんな、こんなニガニガさんしかとってこれないまりさに なんでれいぶがせめられないど いげないのぉおおおぉおお!!!」 「ゆひっ……!」 涙を流して叫び、びたんびたんと身体を暴れさせるれいむに、まりさは息を呑んで一歩引く。 「ぼう! ごんなぜいがついやだよぉおおぉおおお!!! おながすいだよぉおお!!」 「れ、れいぶ、れいぶぅ! ごめんね、ごべんねぇぇえ!!」 「「ゅ、ゆわぁぁぁぁああんん!!」」 二匹はまるで輪唱をするように声を合わせて泣き続けた、疲れ果てて眠ってしまうまで。 朝、どちらともなく起き出した二人は、お互いの愛情を再確認しようとザラザラの肌ですーりすーりを繰り返していた。 そして、ぽつりぽつりと話し出した。 「おちびちゃんは ゆっくりさせてあげなきゃね、れいむ」 「そうだね、まりさ、あったかいおうちで、おいしいごはんをむーしゃむーしゃさせたいね」 「ゆん、そうだね、おちびちゃんはゆっくりできるもんね、がんばろう……かりに、いってくるよ」 「いってらっしゃい、れいむも おうちをつくれるように がんばるね」 二匹は、これから生まれる子供の為に、頑張ろうと誓い合って、それを糧に動き出した。 まりさは食糧を、れいむは住居を。 それぞれ必死で求めることにした。 しかし、必死になっても、野生知識0の二匹では何も出来ることはなく。 まりさは口や舌を傷つけながら、硬い草を少量とって来て、れいむは木に対する懇願を続ける、ただそれだけだった。 なるべくれいむに優先的に食事をさせて、生まれてくる子供の栄養に回すようにさせていた。 流石にまだ慣れはしないし、今まで甘いゆっくりフードを食べていたので苦い草なんか受け付けないけれど、食べなければ死ぬので二匹は必死に食べて暮らしていた。 そして、予定よりかなり遅れて、ついに子供が出産のときを迎えた。 今日ばかりは暗い表情を消して、二匹は新しい我が子の誕生に笑顔を浮かべる。 「ゅぎぎぎぎ、う、うばれる、よぉお!!」 「れいむ! がんばって! おちびちゃんはまりさがうけとめるよ!」 体中に気持ち悪い汁を浮かべて踏ん張るれいむの前で、まりさは帽子を咥えて構える。 これから飛び出る我が子を受け止めるために、そしてそのときは来た。 「ゆっ、ゆっ! ゆっぽぉおぉおおお!!」 「しぇかいいち ぷりぷりてぃーなれーみゅがこうっりんしゅるよぉおおお!!」 尊大な声を合図に、子れいむがまりさの帽子に飛び込んできた。 「ゆ、ゆわぁぁぁああ!! てんしさんのたんっじょうだよぉおお!!」 「ゆぎぐ……あ、あれ? もうひとりおちびちゃんがいるきがしたのに……」 涙を流して誕生を喜ぶまりさとは対象的に、れいむは不思議そうにない首をかしげていた。 れいむは、子供は二匹いると考えていたのだけれど、生まれたのは子れいむ一匹、お腹に残っている様子もなかった。 「ゅう……ゆっ、ふしぎなこともあるんだね! おちびちゃーん、れいむがおかーさんだよ!」 直ぐにその不思議を餡子の隅に追いやると、バカ面下げて生まれた子れいむに近寄っていった。 「ゆげっぴゅ、おきゃーしゃん! おとーしゃん! ゆっくちしていってね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 生まれて初めての挨拶をしてくれた子れいむに、二匹は全力の「ゆっくりしていってね!」で返す。 「まりさのおちびちゃん、とっても、とぉってもかわいーよぉお!!」 「ゆぅぅん! かんっどうてきだよぉお!!」 「げっぴゅ、れーみゅきゃわいい?」 「「とうっぜんだよぉおおお!!」」 この森に捨てられ、もとい野生に返されて久しぶりのゆっくりを全力で堪能していた。 それも長くは続かなかったのは当然極まりないけれど。 ……。 …………。 「しゃっしゃと さいしょのあみゃあみゃもっちぇこぉおぉおおおい!! このクズおやどもがぁぁぁああ!!」 「お、おちびちゃん、お、おちついてね! おちついてね!」 子れいむ誕生から数日。 れいむは必死に子れいむを宥めようとしていた。 この子れいむ、何故だか苦い草はまだしも、まだましな草などを優先的に食べさせているのに、どれも食べては吐き出すを繰り返していた。 そして、食べさせたことなどない筈の「あまあま」をしきりに要求してくるのだった。 ほとんど食事を取らない取れない状況に、未だに巣はない、自分をゆっくりさせない親に子れいむは簡単にゲスの兆候を見せている。 れいむとまりさがいたような、満たされた空間ではゲスは生まれない、何故ならゆっくりで満たされているので、それ以上を求めないからだ。 そして、他の者も自分と同レベルのために、向上する意欲も生まれない。 だから、ゲスは存在しなかった。 そのために、この子れいむは二匹が始めて出会うゲスだった。 ゲスと言っても可愛い我が子、ゲスを知らないこともあるし、ゆっくりさせてあげられてない自覚もあったので二匹は精一杯頑張っていた。 まりさは、気絶するくらいまで頑張って狩りをして帰って、子れいむに罵られて。 れいむは、まりさが帰るまで子れいむの癇癪を受け止めながら木に「おうぢをぐだざいぃいいい!」と頭を下げる日々。 「おでがい、じばず、きさん、おうぢぃ……」 「しゃっしゃと! あみゃあみゃもってこい! ゲスクズゴミカスおやぁぁぁ!!」 必死に木に頭を下げるれいむの身体に、子れいむは何度も体当たりを繰り返していた。 肉体的なダメージはなく、ただただ心が痛いその行為にれいむは枯れない涙を流していた。 「れい、む……ただ、いば」 「ゆぅう、まりさ、おがえりなざい……」 大分暗くなった頃に、帽子にも穴が開いてボロボロのまりさが帰ってきた。 お互いに目を合わせて、収穫がなかったことを理解して落胆する。 そんな二人の悲哀をぶち壊すように、子れいむは声をあげた。 「ゆきゃきゃ! ゆっくりできないクソおやがかえってきたよ! きょうこしょはあみゃあみゃとれたにょ!? まともに かりもできにゃいの!? このむのー!!」 「ゆぎっっ!!」 かつては、自分のことを「かりのたつゆん」と称したまりさである、狩りについて貶されるのが何よりゆっくり出来なかった。 たとえ、それが用意された場所でしか得られない称号であっても、その事実を知らない限りでは一生「かりのたつゆん」だったのだから。 それでも、平和にゆっくりしたゆん生を送ってきたまりさは怒りという感情の置き場を知らずに、ただ我慢するだけだった。 「ごめん、ごめんね、おちびちゃん、すくないけど、これたべてね……れいむ、はなしがあるよ」 「ゆん?」 どうにか手に入れた柔らかい草や木の実を子れいむに渡すと、れいむを呼んで話をする。 「もう このきさんは まりさたちにおうちをくれないみたいだから ここをいどうしよう、どうにかしてむれにかえろう!」 「ゆっ! …………ゆん、そうだね、ここにいたらおちびちゃんもゆっくりできないしね」 まりさの提案にれいむは頷いた。 子れいむは「げろまじゅ! こんにゃのしかとってこれないむのーはしね!」と、食べては吐き出して、一番美味しい部分だけを食べていた。 そんな我が子の姿をしばらく眺めてから、れいむとまりさは明日の移動の為に、吐き出された草をもそもそ食べだした。 「ゆきゃきゃ! こにょクジュはへんったいだね! れいみゅのつばしゃんがついたのがだいしゅきなんだから! きみょいよ!」 「「……むーしゃむーしゃ」」 笑われながらもそれに耐えて、どうにかして群れに帰りたいと二匹は無言で涙を流した。 「ゆゆ? にゃににゃいてりゅの? れいみゅがこわかったの? ゆぷぷ! なさけにゃいね! ゆぷぷ、ゆぷぷ!」 「「…………」」 ……。 …………。 「ゆへ、ゆへぇえ、まだ、つかないの、お」 「ば、ばりざ、そろそろ、おちびちゃん、かわるよ……」 次の日、起きてから直ぐに二匹は行動を開始した。 近場にある枯れ草などを食べてから、子れいむを頭に載せて必死に森の中を進んでいく。 交互に子れいむを運んで、ぐずる彼女をあやしながら、群れに帰ることを夢見て進む。 どこがゴールかも解らず、つい先日までぷにぷにだったあんよをガチガチのまっくろにして、綺麗だったお飾りをボロボロにしながら必死に必死に這いずり回っていき。 「「ゆ、ゆわぁああぁああ!!」」 「ゆ? にゃんにゃの?」 三匹がたどり着いたのは一面の野菜野菜野菜。 中にはかつて餌として与えられていたものもあり、久しぶりにゆっくりした食事が取れると二匹は涙を流して喜んだ。 寝ぼけている子れいむを、まりさは頭から下ろすと自信に満ちた大声で話す。 「みて! おちびちゃん! これがきょうのごはんさんだよ! たっぷりたべてね!」 「ゅ、ゆわぁああ!! こりぇじぇんぶれーみゅの!?」 「「ゆふふ、おちびちゃんゆっくりしてるね!」」 目を輝かせて、野菜の群れに飛び込んだ子れいむを二匹は幸せそうに見つめていた。 子れいむはとりあえず手ごろな野菜に齧り付いては、違う野菜にと食べながら移動していく。 「まぁまぁ! これめっちゃまぁまぁ! さいしゃのあみゃあみゃにはまけるけど、めっちゃそれなりぃ!」 子れいむは「それなり」を連呼しながら、どんどん食ながら進む。 その姿に笑みを浮かべていた二匹も、そろそろ自分もと久しぶりの満足いく食事を始めた。 「「むーしゃむーしゃ! しあ 「にゃにやってるにょぉおお!!」 ゆ?」」 二匹が食事を始めたら、野菜を掻き分けて子れいむが鬼の形相でやってきた。 「お、おちびちゃ……」 「いま! にゃにをやってちゃの!?」 「む、むーしゃむーしゃ、だよ? どうしたの、おちびちゃん?」 あまりの形相に怯えながら、二匹はそう告げた。 その言葉に、子れいむは怒りを露に震えて叫びだす。 「これは! じぇんぶれいみゅのだよ!? おまえら みたいなむのーなクズに いっこでもわけてあげりゅと おもったにょぉおお!?!?」 「「ゆ!?」」 確かにさっき「こりぇじぇんぶれーみゅの」とか言ってはいたが、まさか本気とは思わず二匹は固まる。 「れーみゅをゆっきゅりさせにゃかったばちゅだよ! そこでれーみゅのむーしゃむーしゃタイムをみててね! たべたかったら さいしょのあみゃあみゃもっちぇこい! このクズ!」 口の周りに野菜クズをつけたまま、生みの親たる二匹を大声で怒鳴りつけて行く。 そのあまりにもあまりな態度に二匹は硬直してしまっていた。 そして、れいむは前から気になっていたことを恐る恐る聞くことにした。 「お、おちびちゃん? まえからいってる、さいしょのあまあまって、なに? れいむ、あまあまなんかあげたおぼえない、よ?」 子れいむがことあるごとに引き合いに出してきた「さいしょのあまあま」その存在がふと疑問になり、れいむは質問した。 その言葉に、子れいむはあからさまにれいむを小馬鹿にした表情を作り、語りだした。 「ゆふぅ、まっちゃく ゆっきゅりしてにゃいおやは あたまだけゆっくちしちぇってるんだね! れいみゅがうまれるまえに おまえのぽんぽんの なかにおいてあっちゃしゃべるあみゃあみゃだよ! れーみゅのこちょをおねーちゃんとかよぶ ずーずーしいあみゃあみゃだよ!」 「…………」 「ゆ、どーゆーこと? れいむ? れいむ?」 れいむは子れいむの言葉と一緒に、生んだときを思い出していた。 「そうだよ……ふたり、いたんだよ……」 「ゆ?」 ぶつぶつ呟くれいむを、まりさは心配そうに覗き込んだ。 まりさは理解出来ていなかった、何故なら腹に子を宿したのれいむだったから。 そして、れいむはしっかりと理解した、してしまった。 栄養が足りなくて、この子れいむは一緒に生まれるハズだった妹を食べたのだと。 想像すらしていなかった禁忌の同属食いに、この態度。 平和に暮らしていた、作られた森で生きていれば一生知らなかっただろう怒りがれいむを支配していた。 「こ、ごのぉおおぉおおおおおぉおお!!!!」 「ゆぴ?」 「れ、れいむ? どうしたの? どうしたのれいむ!?」 怒りを叫びに変えて、大地が震えるように声を弾き出した。 今まで喧嘩すらしたことのなかったれいむは、怒りをどうしたら良いか理解出来ずに、涙と声で発散していた。 「ゆぅ、きみのわりゅいゆっきゅりだね れーみゅはむーしゃむーしゃにもどりゅよ! ゆぴょ!?」 大声で叫び続けるれいむを見限って、子れいむは再び野菜を食べに行こうとして何かにぶつかった。 「にゃ、にゃにしゅりゅの!? れいみゅのきゃわいしゃに しっちょしにゃいでね!」 『ったく、これから収穫だってのに、ざっけんなよ、協定はどうしたんだよ糞ゆっくり!』 子れいむがぶつかったのは、れいむの叫びを聞いてやってきた畑の持ち主の青年だった。 この畑がある村は、まりさたちがやってきた森にある群れと協定を結んでいた。 もちろん相互の理解なんてものはなく、人間が仕方なく住まわせてやっているレベルで、用もなしに森から出たゆっくりは直ぐに潰されるし野菜に手を出すなんてもっての他だ。 無論、まりさたちは群れのゆっくりではないけれど、人間にはそんな違いはわからない。 これから収穫の野菜のいくつかを駄目にされたのだ、純粋に腹立たしいに決まっている。 「にゃにいっちぇるの! しゃっしゃとれーみゅにあやまっちぇね!」 「ゆぐがぁぁぁぁああぁああああ!!」 「れいむ?! れいむぅ!!」 彼の前では、子れいむが憤り、れいむが叫び、まりさがオロオロしていた。 青年は前からゆっくりが大嫌いだったが、協定の為に山狩りなどは出来ないでいたし。 森の群れのゆっくりはそれなりに優秀で、森から出ることはなかった。 しかし、今回野菜を食べられたことでゆっくりを根絶やしに出来ると青年は歪んだ笑みを浮かべていた。 ……。 …………。 「ゆぎゃぁぁっぁああああ!! やべでぇっぇええ!! ゆるじでぇぇぇえええ!!」 「ゆるす! わけが! ないのぜ! おまえたちの! せいで! あやうく! むれが!!」 森の中にある群れの広場で、まりさが群れゆっくりたちに何度も体当たりをされていた。 あの後、青年が皆に話して群れのゆっくりを呼びつけたのだが、三匹が群れのゆっくりではないと解った為に、駆除の思惑は外れてしまった。 その腹いせにれいむは青年に踏み潰され、まりさと子れいむは群れに引き渡され、せいっさいの真っ最中だった。 何とか人間に目をつけられないように暮らしていたのに、余所者のせいで駆除されそうになったのだから群れの怒りは相当のものだった。 まりさは帽子を引きちぎられ、足を棒で裂かれた上で袋叩きにあっている。 子れいむは、というと。 「だしぇぇぇぇぇぇええ!! れーみゅをこんにゃくしゃいとこにいれちぇ ただですむとおもっちぇるにょ!?」 群れのうんうんを集める穴に放り込まれて、一生そこでうんうんを食べて暮らせと命じられていた。 子れいむは、そんなことは出来ないと大きな声で鳴いてはいるが、それは群れのゆっくりを楽しませるだけで。 「ゆぴゅ!? く、くしゃいぃい!! やめちぇ! うんうんしにゃい、ゆげぇぇえ!!」 「ゆぷぷ! あのゲスちび、ゆっくりしてないね!」 今もまた、子れいむ目掛けてうんうんが放られた様だった。 まりさはまりさで、ずっと暴行を受けてもはや意識が朦朧としていた。 そんな彼女の前で、大きなまりさと、ありすが何やら話をしているようだった。 「さいきん よそものがふえたのぜ」 「しかも、いなかものばっかりね、どーゆーことかしら?」 二匹の話すとおりに、最近森に見たことないゆっくりが増えてきたのだった。 もちろん、ゆふぁりパークで捨てられた、もとり野生に返されたゆっくりたちだ。 この森には、まりさたち以外にも何家族か捨てられていて、その何匹かがこの群れに着たり、村に行ったりしていた。 群れに来たゆっくりは、「かりのたつゆん」を名乗っていたくせに、まったく狩が出来ず、しかも巣も作れないし、何も出来ない能無しばかり。 そして、村に出たゆっくりのせいでこの群れが疑われて、今回のような駆除の原因になりそうになったりしていた。 長であるありすは大きくため息をついて、ボロボロのまりさを見つめる。 「どこのいなかからきたのかしら? このいなかものは」 野生に返されたゆっくりたいは、その大半が死に絶えて、残りは各地で様々な被害を起こしていた。 畑荒らし、人間に喧嘩を売る、子供のお菓子を狙う、住居侵入。 人間とうまくやっている群れの崩壊、野生ゆっくりとの諍いなど等。 数え上げたらキリがないほどの被害を出していた。 そんな被害の引き金ともなった愛護団体は、そ知らぬ顔で捨てゆっくりの問題に噛み付き、非常識な飼い主、虐待趣味について言及して 『ゆっくりを捨てるな! ゆっくりに愛を!』と歌っていた。
https://w.atwiki.jp/hutaba_ranking/pages/42.html
※ちょっと基本にかえってリハビリ 『森の消毒』 D.O ここは人里から少し森に入った所にある、平和でのどかなゆっくりプレイス。 気候も穏やかで大きな動物もおらず、背の低い草が青々と茂り、 木々も程よくまばらに生えているため、日の光も柔らかに大地を包む。 豊かにして優しい、実にゆっくりとしたゆっくりプレイスであった。 「ぱちゅり~!きのみさん、たくさんとれたのぜ!」 「むきゅ~・・・むきゅん!おつかれさま! じゃあ、これとこれはほぞんしょく、あとはみんなでたべましょう。」 「ゆっくりりかいしたのぜ!みんなー!ちょぞうこまではこぶの、てつだうのぜ!」 「「「わかるよー!!」」」 こんな場所なら当然だろうが、ここにはゆっくりの群れが住み着いていた。 まだ住み着いて一回しか冬を越していない、若い群れだ。 長はそこそこ賢いぱちゅりーが、補佐はその旦那さんであるまりさが行っている。 頭脳労働はぱちゅりーが行い、その提案に沿って群れを動かすリーダーがまりさの役割。 あえてぱちぇを長としているのは、その方が群れのみんなが言う事を聞いてくれそうだからである。 元からリーダー格のまりさについては、特に肩書きを必要とはしてなかったのであろう。 ともあれ、能力をきちんと考えた役割分担で、群れの運営はなかなかに上手くいっていた。 そんなゆっくりプレイス内にある一本の枯木の根元。 そこにれいむは住んでいた。 「おかーさん!おかえりなさい!!ゆわーい、いもむしさんだー!」 「おちびちゃん、ただいま!」 れいむはまだまだテニスボールサイズの子ゆっくり。 赤ちゃん言葉は抜け切り、お外を元気に跳ね回れる程度には成長しているものの、 まだまだ独り立ちは先のことだ。 それでも、父まりさが狩りの途中に命を落として以降、、 母れいむが狩りに行っている間は、妹たちの世話をしながらお留守番を一生懸命がんばっている。 「はやくむーちゃむーちゃさせちぇにぇ!れいみゅ、おなかぺーこぺーこにゃんだよ!」 「ゆゆ!?れいむ、おかーさんにおかえりなさい!がさきでしょ!」 「ゆぴっ!?・・・ゆぅ、ゆっくちおかえりなしゃい・・・ごめんにぇ。」 そんなれいむには、2匹の妹達がいる。 好奇心旺盛で元気いっぱい、少々わがままなのが玉にきずだが、 それでも姉である自分のいうことは素直に聞く次女れいむ。 「むーちゃむーちゃ、むーちゃ、ち、ち、ちあわちぇー!!」 「ま、まりさぁ。おくちのまわりがよごれてるよ。ぺーろぺーろ。」 「ゆぅぷ、ちゅっきりー!おねーしゃん、ありがちょーなのぢぇ!」 それと、とっても甘えん坊で、いつも自分にべったりの、お姉ちゃん子の末っ子まりさ。 れいむの可愛い妹達。 ホントは姉妹ももっと多かったのだが、野生の世界は全員無事に成長させてくれるほどには甘くない。 それでも、れいむは優しい母れいむと、自分を慕ってくれる妹達に囲まれて、 この上なくゆっくりした毎日を送っていた。 「しつれいするみょ~ん!おちびちゃんたち、あそびにいこうみょ~ん!」 「わかるよー。ちぇんたちとおそとであそぼうねー。」 「むほぉ!むほぉぉ!」 れいむ一家が仲良く昼ごはんをむーしゃむーしゃしていると、 今日も群れの保育担当であるみょん達が、赤ゆっくり達に遊びのお誘いに来た。 天気のいい日には、この群れでは赤ゆっくり達を広場に集め、みんなで仲良く遊ばせているのだ。 同年代の赤ゆっくり達を仲良く遊ばせることで、将来大きくなってからも群れが結束するように、との考えである。 まあ実際のところは、手のかかる赤ゆっくり達を一時的にでも一か所に集めて管理し、 親ゆっくり達の負担を軽減しようという狙いがあったりするのだが。 「ゆあーい!れいみゅ、みょんおにぇーしゃんたちと、あしょんでくるにぇ!」 「ゆふふ。じゃあ、みょん、ちぇん、ありす。おちびちゃんをよろしくね。」 「むほぉおお!!」 「ゆぃ。まりしゃ、おかーしゃんとゆっくちしゅるのじぇ!」 「ゆ?ゆふふ。おちびちゃんは、まだまだあまえんぼさんだね。」 もちろんどんな赤ゆっくりでも連れていくわけではない。 ベッドから這い出れない、生まれて数日以内の赤ゆっくりは、もちろんおうちで母親が世話をするし、 末っ子まりさのようにまだまだ精神的に幼い赤ゆっくりは、両親の元に残ることも多い。 「おかーしゃん!おねーしゃん!いってくるにぇ!」 「「ゆっくりいってらっしゃい!!」」 ともあれ、普段おうちからも出してもらえない赤ゆっくりにとって、 この青空お遊戯会は、おとな社会への最初の一歩なのであった。 次女れいむは保育みょん達の方に跳ねながら、母達に輝くような笑顔を見せて出発の挨拶をした。 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 そしてこれが、れいむ一家が仲良く顔を合わせた最後の時になった。 ------------------------------------------------- 「むきゅきゅ、まりさ。むれのおちびちゃんたち、ゆっくりしてるわね。」 「そうなのぜ~。これもぱちゅりーのおかげなのぜ~。」 「むきゅぅん。まりさがきょうりょくしてくれてるからよ。ゆぅ・・・すーりすーり。」 「だ、だめなのぜぇ。こんなおそとですっきりーなんて、はずかしいのぜぇ。すーりすーり・・・」 群れの素晴らしいゆっくりっぷりに、思わずすっきりーしてしまいそうになる長ぱちゅりー達。 保育みょん達が集めた赤ゆっくり達は、その長ぱちぇと補佐まりさが見守る小さな広場の中で、 楽しそうな声を上げながら遊びまわっていた。 「おし~りふりふり、の~びの~び!うんうんさんも~おでかけするよ~!す~す~、すっきり~!」 「「「うんうんしゅるよ~!しゅっきり~!」」」 保育ちぇんは最近お腹の調子が悪いおちびちゃん達を集め、お通じをよくするうんうん体操をさせる。 「むほぉおお!むほぉおお!むほぉ!」 「「「みゅ、みゅほぉおお!!ちゅ、ちゅっきり!」」」 保育ありすは赤ありす達を集め、都会派になるための礼儀作法やコーディネート技術を教えている。 「ちょうちょしゃん!ゆっくちまっちぇ~!」 「ゆっくちこっちにくるのじぇ!まりしゃがむーちゃむーちゃしてあげるのじぇ!」 「おはなしゃん、れいみゅにゆっくちたべられちぇにぇ!」 また、お腹がすいた赤ゆっくり達は、狩りの練習を兼ねて野原の美味しい恵みを味わう。 本能的に備わっているのであろう。 遊びの内容も、将来おとなになってから役立つ技能を身につけるのに必要なものなのだ。 「まりしゃがぷくーするのじぇ!ぷっきゅ~!」 「ゆわわ~、しゅごいにぇ!まりしゃはさいっきょうのゆっくりだにぇ!」 「ゆゆぅ~ん。でも、おとーしゃんのほうが、ぷっく~はおっきいのじぇ!おとーしゃんがさいっきょうなのじぇ!」 口の中に空気を溜めて体を膨らませる、威嚇行動であるぷくーの練習をしている赤ゆっくりもいる。 これなら、将来は家族達を守っていける、立派なおとなになれることだろう。 「かけっこだよー!ちぇんについてこれるー。」 「みゅほぉ!みゅほおお!!」 「あ、ありしゅ?おめめがこわいよー!?」 森で生きるには、駆けっこの速さも大事な技能だ。 多くのおちびちゃん達は、有り余る元気を発散させるように、広場の端から端まで元気に跳ねまわっている。 ・・・この広場で遊ぶおちびちゃん、群れの次代を担う新しい生命達は、 子育てのベテランである保育ゆっくり達に見守られ、元気に遊びながら目に見えるほどスクスクと成長し続けていた。 その明るい未来に、一点の曇りすらないかのように・・・ ガサッ。ガサッ。 「ゆぅ?」×200 そこに、なんの前触れもなく、突然の来訪者が現れた。 「むきゅ?・・・にん、げんさん?」 それは、長ぱちゅりーを含め、群れでも数匹しか見た事のない生き物。 ゆっくりと同じ言葉を使い、胴付きゆっくりのような体を持った不思議生物。 ・・・『にんげんさん』。 「ぽかーん。」×200 赤ゆっくり達は、その未知の生物を見て、逃げるでもなく声をかけるでもなく、 口をぽかーんと開けてその姿を見上げていた。 にんげんさんは、ひとりではなく、この広場をぐるっと囲めるほどの人数がいて、 そして手には、先端が赤くメラメラと燃える棒、松明を持っていた。 まだ真昼間で、森の中でも心地よいほど明るいというのに。 しばらくお互いに無言のまま、広場には静寂が続いた。 「おにーしゃん!ここは、れいみゅたちのゆっくちぷれいすだよ!ゆっくちしちぇっちぇにぇ!!」 その静寂を破り、最初ににんげんさんに声をかけたのは、ここにいた赤ゆっくり達の中でも特に好奇心の強いゆっくり。 あの、れいむ一家の次女れいむだった。 ジュゥゥ・・・ボゥワッ! そして、次女れいむがおにいさんに近づき、声をかけると同時に、 その頭に松明の火が押し付けられた。 「ぴぃうっ?・・・ぴ・・・」 妹れいむは、か細い悲鳴をわずかにあげてころころと2、3回転がると、そのまま炭になって動かなくなった。 「・・・・・・むきゅぅぅうう、みんなにげてぇぇえええ!!」 突然の光景に、ここにいた全てのゆっくりが考える事を止めたかのように茫然となった中で、 長ぱちゅりーの叫びが静寂を切り裂いた。 「ゆ、ゆわぁぁああ!おちびちゃんたち、ちぇんのおくちにはいってねー!」 「むほぉおお!むほ、むほぉっ!」 「みんな、はやくまりさのおぼうしにはいるのぜ!にげるのぜぇええ!!」 「めらめらしゃんは、ゆっくちできにゃいぃぃ!」 「ゆぴぁああん!おにぇーしゃんのおくちに、ゆっくちはいりゅよ!ゆっくち!!」 「ゆっくちー。おくちのなかなら、あんしんだにぇ!」 長の叫びは、群れの全員を自失の状態から現実に返すことに成功した。 保育ゆっくり達は、自分達のお口に赤ゆっくり達を入らせていく。 子供達をお口の中に入れるこの行動は、ゆっくり達が自分の子供達を危険から守る時に行う、本能的行動だ。 親のお口の中に赤ゆっくりを入れることで、 外敵から隠す・親の体を外敵からの盾にする・逃走が必要な時はそのまま赤ゆっくりを連れていく、 といった効果を無意識に狙って生まれた本能なのであろう。 「むきゅっ、みんな!おちびちゃんをおくちにいれたら、はやくここからにげるのよ!!」 「「「ゆっくりりかいしたよ!!」」」 そしてお口に、近くにいた赤ゆっくり達を数匹づつ入れた保育ゆっくり達は、 長ぱちゅりーの指示に従って広場から飛び出していったのであった。 お口に赤ゆっくりを満載したせいで、這うように遅い歩みではあったが。 長ぱちゅりーはその間にも、次の指示を補佐まりさに出す。 「むきゅ、まりさ。まりさはみんなのおうちをまわるのよ! ここにきてないおちびちゃんたちを、はやくにがしてあげて!」 「ゆっくりりかいし・・・ゆゆっ!?ぱちゅりーはどうするのぜ!?」 「ぱちぇは・・・にんげんさんと『こうしょう』してみるわ!」 長ぱちゅりーは、最も危険な任務を自分に課すつもりだった。 「そ、そんなのあぶないのぜ!いっしょににげるのぜ!!」 「ぱちぇのあんよじゃ、まりさのあしでまといよ! それに、おはなしするのは、ぱちぇはむれでいちばんじょうずだわ! まりさはまりさの、ぱちぇはぱちぇのできることをするのよ!むきゅんっ!!」 「ゆ、ゆ、ゆっくりりかいしたのぜ・・・にげきったら、またすーりすーりしようなのぜー!」 ぱちゅりーはその弁舌をもって人間と交渉を、まりさはその脚力とリーダーシップをもって群れの避難誘導を、 お互いに能力を生かして最善の役割を果たそう、長ぱちゅりーはそう言って補佐まりさを説得した。 だが、それは半分正しく、半分嘘だった。 長ぱちゅりーは自分が生き残れない可能性が高いと理解しながら、 みんなが逃げる時間を稼ぐためにここに残ったのであった。 ・・・そして、もちろん補佐まりさもそれを察していた。 「むきゅ!にんげんさん、ぱちぇたちは、ここでゆっくりしてるだけよ! もしなにかめいわくをかけたなら、あやま『ジュゥゥウウウウウ』びゅ・・・」 結局、長ぱちゅりーは時間を5秒も稼げなかった。 長ぱちゅりーは顔面だけを松明で軽く炙られ、目と口だけを潰されたまま死ぬ事も出来ずに放置されて、 群れの崩壊する悲鳴を最後の最後まで聞き続けることになったのである。 お口に赤ゆっくりを入れて広場から逃げ出した保育ゆっくり達も、 その這うような鈍足のせいで早々に追いつかれ、近場の木の洞に逃げ込むのがやっとだった。 「むほぉおお!ぷっくー!!」 「ありしゅおにぇーしゃん、がんばっちぇー!」 「ゆっくちまもってくれちぇ、ありがちょー。」 保育ありすは、もはや逃げ切れない事を悟り、近場の木の洞に赤ゆっくり達を放り込むと、 その入り口を塞ぐようにぷくーっして赤ゆっくり達を守っていた。 隙間なくぷくーっで塞がれたその入り口からは、人間さんの手どころかイモムシ一匹も入る事はできないだろう。 そこに松明を持った人間さんが近づく。 「むほぉ!ぷっくー!!」 どむっ。 ジュゥゥゥゥウウウ。 「む・・ほごぉ・・・とか・・いば・・・・・・」 人間さんと向かい合った次の瞬間には、保育ありすのまむまむを松明が貫いていた。 せめてもの救いは、ありすの中枢餡がその一撃で砕かれ、ほとんど一瞬で絶命出来た事だろう。 ジュゥゥウウウウ!ボゥワッ!ジュジュジュウウ! 「ゆぴゃぁああん!あちゅい、あちゅいぃいいい!!」 「どうしてめらめらしゃん、はいってくりゅのぉおお!?こっちこにゃいでぇぇえ!」 「ありしゅおにぇーしゃん、どうしちぇ、たしゅけちぇくれにゃ・・・『ボゥッ』ぴぅっ!」 松明の先端はありすの体をやすやすと突き破って、木の洞の奥まで届いていた。 ありすには、逃げ場のない洞の中で焼き尽くされるおちびちゃん達の悲鳴が、聞こえていただろうか。 保育みょんとちぇんも、人間さんに追いつめられていた。 2匹は背後の木の根元に10匹ほどの赤ゆっくり達をかばいながら、周囲を人間さんに取り囲まれている。 もはや逃げ道を作るには、人間さんと戦って包囲を破るしかなかった。 「みょぉおん!みょんがこのけんで、みちをつくってやるみょん!みょっ!!」 ぶんっ!ひょい。ぶんっ!ひょい。 鋭く尖らせた木の枝を振りまわしながらみょんは包囲に突撃したが、 その木の枝の一撃一撃は、人間さんにあっさりとかわされる。 「がんばっちぇ~!みょんおねーしゃーん!」 「ゆっくちまけにゃいでー!」 「みょぉおおん!げんきひゃくばいだみょん!!みょっ!」 声援に力づけられさらに攻撃を続けるみょん。 だが、何回か突撃を続け、もう一撃、そう思った時、ふとみょんは後頭部の熱に気づいた。 「みょ・・・」 「「ゆぴゃぁぁああん!みょんおにぇーしゃぁああん!!」」 メラメラメラ・・・ 人間さんは、みょんの攻撃を軽くかわしながら、その松明をみょんの髪の毛にかすらせていた。 そして、みょんがその熱に気づいた頃には、みょんの髪の毛はほとんど全体が炎に包まれていた。 「みょぉぉ!?ぉおお・・・!!」 ゆっくりは、特にその皮膚や髪の毛は燃えやすい。 みょんが高熱の中で、自分がもうすぐ走る事も、 声を出す事も出来なくなる事を悟るまで、それほど時間はかからなかった。 だから、みょんはその最後に残された力全てを、おちびちゃん達への叫びに注いだ。 「お、おぢびぢゃんだち・・・にげでぇぇえええ!」 「みょ・・・?」 だが、そんなみょんを処理済みと判断した人間さんは、 その時すでに赤ゆっくり全員を火だるまにし終えていた。 「ぴょ・・・ぴ・・・」 「あちゅ・・・ぴぃ・・・」 「やめちぇぇぇええ!めらめらしゃんこわい『ボウッ』ぴ・・!ぴゃ!?・・・」 「みょ・・ん・・・」 「おぢ・・び・・・・・・」 ちぇんはみょんの死にざまを見て、すでに戦意も保育役としての誇りも失っていた。 目の前でおちびちゃん達を焼き尽くされるのを茫然と眺めながら、よろりと仰向けになり、腹を人間さんに見せる。 これは、ゆっくりの全面降伏を意味していた。 「だ、だずげでよー・・・。ちぇんはむていこうだよー、わかるー・・・?」 もちろんそんなことどうでもいい人間さんは、ちぇんの腹のど真ん中に松明を押し付けた。 たっぷり一分ほどかけて、ちぇんは炭になった。 一方その頃れいむ一家は、補佐まりさに先導されて群れの避難場所に向かっていた。 その集団は、生まれたばかりでベッドからも這い出られないような幼い赤ゆっくりと、 その母ゆっくり達でほとんどを占められていた。 「みゃみゃー、どこいくにょ?ゆっくち!」 「とってもゆっくりできる、あんぜんなところだよ。ゆっくりあんしんしてね。」 「ゆぁーい!みゃみゃのおくちのなか、ゆっくちしちぇるにぇ!ゆゆぅ~ん。」 母ゆっくり達は、赤ゆっくり達をお口の中に入れ、 なるべく自分達の不安を伝えないように話しかけながら這い進んだ。 そんな中、れいむ一家の母れいむが、決意を固めた表情で補佐まりさに話しかけた。 「まりさ・・・れいむは、おちびちゃんをさがしてくるよ!」 母れいむは、保育みょん達に預け、広場に遊びに行かせた次女れいむを諦めることができなかったのだった。 たとえ自分の身を危険にさらし、残り2匹のおちびちゃんが母親を失うことになってしまうかもしれないとしても。 「な、なにいってるのぜ!?れいむ!!」 「みょんたちがいるからだいじょうぶだとおもうけど・・・やっぱりむかえにいかないと・・・」 補佐まりさも、群れで最初に焼き殺されたのが、このれいむ一家の次女れいむだと言うことにまでは気づいていない。 だから、母れいむを止めるのに躊躇してしまった。 「まりさ、おちびちゃんたちをよろしくね!おちびちゃん!れいむはすぐもどってくるからね!いいこにしてるんだよ!」 「おかーさん!はやくかえってきてね!ぜったいだよ!」 「ゆっくち、いってらっしゃいなのじぇ!」 「ま、まつのぜ!れいむー!!」 そして、補佐まりさは母れいむを止め損ねてしまったのであった。 ぐしゃ。 母れいむは、変わり果てた次女れいむの姿を目にすることは無かった。 木の影から不意に顔を出した人間さんに、すれ違いざまに松明を振り下ろされ、 一撃で顔面を砕かれて息絶えたからである。 ------------------------------------------------- 母れいむとの永遠の別れの後、補佐まりさに先導されたれいむと末っ子まりさは、 群れの生き残り達と一緒に大きな洞窟へと避難していた。 人間さんでもすっぽり入れるほど大きな広い洞窟。それが、群れであらかじめ決めていた緊急時の避難場所。 他にも人間さんの目をかいくぐった生き残りがいれば、全員ここに集まってくるはずであった。 洞窟の中には、れいむと末っ子まりさ、補佐まりさの他には、 10匹程の母ゆっくりと、その幼いおちびちゃん達が一家族あたり4~5匹づつ。 それが全てである。 「ゆぅーん。このどうくつしゃん、ゆっくちしちぇないよぉ。」 「ごめんね、ちょっとがまんしててね。」 「みゃみゃー、おなかすいちゃよぉ。むーちゃむーちゃさせちぇにぇ。」 「いまは、ごはんがないんだよ。ちょっとだけがまんしててね。」 洞窟の中では生き残りのゆっくり達が、不安をまぎらわそうと、寄り集まってお話をしていた。 れいむ姉妹も例外ではなく、補佐まりさにぺったりくっついて、お話をしている。 「おきゃーしゃん、おそいのじぇ。」 「ゆぅぅ、きっともうすぐもどってくるよ。まりさもがまんして、ゆっくりまとうね。」 「そうなのぜ。きっとだいじょうぶなのぜ。」 ばさっ。 その時、洞窟内の地面全体を覆うように、網がかぶせられた。 「ゆわぁぁああ!?なんなのこれぇぇええ!!」 「ゆっくちうごけにゃいー!みゃみゃー!」 「な、なんなのぜ!このあみさんは、なんなのぜぇぇ・・・え?」 網の向こうには、人間さんが立っていた。 最初から、全ては人間さんの計画通り。 ゆっくりの行動、子連れならどのくらいの速さで逃げるか、 そして、このゆっくりプレイス内で最後に逃げ込むとすれば、それはどこか・・・ ・・・全てを計算した上で、逃げ込みやすく捕まえやすい、適度な広さの洞窟を用意していたのだった。 その後、網に捕まった群れの生き残りのうち、赤ゆっくり達は卵パックのような容器に優しく分別され、 母ゆっくり達はダンボールに乱暴に突っこまれて、最初に襲撃に遭った広場のど真ん中まで連れてこられた。 「ゆぅ・・・ゆぅぅ~、にんげんさん!いもーとを、すえっこまりさをかえしてね!」 「ゆんやぁ~ん。ゆっくちできにゃいのじぇ~。」 れいむ姉妹もまた、離ればなれにされていた。 れいむはダンボールの中に、末っ子まりさは卵パックの中へと。 そして、広場のど真ん中にはたき火が作られ、その上には水を張った、炊き出し用の大鍋が湯気を上げている。 れいむは実際に火を見た事などなかったのだが、メラメラと輝くそれと、白い湯気を上げる鍋が、 とてつもなく不吉な物に見えていた。 ちゃぷちゃぷちゃぷっ・・・ 「ゆわーい!みずあびしゃんは、ゆっくちできりゅにぇ!」 「ゆっくちー!」 そんな不安をよそに、赤ゆっくり達の方からきゃっきゃと楽しそうな声が聞こえてきた。 何事かと見てみると、人間のおねえさんが、ボウルに張った水で赤ゆっくりを丁寧に洗ってあげているのが見える。 「ゆ、ゆぅう!!そうだよ!おちびちゃんたちは、ゆっくりできるんだよ!ゆっくりさせてあげてね!!」 「おねーさん、ありがとー!」 「ゆわぁ~。おちびちゃんたち、ゆっくりしてるよぉ~。」 補佐まりさとれいむを除く母ゆっくり達は、みんな自分達のおちびちゃんが嬉しそうに水浴びしているのを見て、 早くも先ほどまでの恐怖を忘れて、ゆっくりし始めていた。 だが、それも人間さんが、赤ゆっくり達全員をキレイに洗い終わるまでのことだった。 「こーりょこーりょ、ゆっくちー。」 「ぷりゅぷりゅぷりゅっ!しゅっきりー!」 水浴びを終えた赤ゆっくり達は清潔な布巾の上に乗せられ、 赤ゆっくり達はこーろこーろ、ぷーるぷーるして水分を切っていた。 そうしてみんながすっきりーとした表情でゆっくりしていると、 先ほどのおねえさんが、何やら変わった手袋を両手につけて、 手近にいた赤れいむをつまみあげる。 「おしょらとんでるみちゃーい!」 そして、手袋をつけた両掌で包み込むと、 ごしっ・・・ごしっ・・・ 2回ほど揉んだ。 「ゆっぴ?ぃぃいいいいあぁああああああ!?」 おねえさんが手のひらを開けると、そこには髪の毛と薄皮がきれいに削り取られた、 スベスベ真ん丸饅頭の『元』赤れいむがいた。 「いぢゃぁぁああいぃぃ!!みえにゃい!いぢゃい!?みゃみゃぁぁあああ!!」 その皮膚はムラなく薄皮がこそぎ取られ、まぶたと目玉の表面も削り取られている。 髪の毛もお飾りも、薄皮と一緒に手袋の中に残っていた。 「「「ど、ど、どうぢでぞんなごどずるのぉおおおお!!」」」 そのおねえさんが付けていた手袋は、ゆっくり用皮むき手袋。 表面がやすり状になっており、野生ゆっくりの汚れた皮膚や髪の毛などを削り取るために作られたものだった。 森に響き渡る悲鳴は、おねえさんが手をごしごしと揉むたびに大きくなっていった。 「ゆびゃぁあぁああ!!やべぢぇええええ!!」 「おぎゃあぢゃあああん!!」 「みえにゃい!みえにゃいよぉおお!!いぢゃぁぁあい!!」 数十匹の赤ゆっくり達が、あっという間にスベスベの薄皮饅頭になっていく。 それはゆっくり達にとって、まさしく地獄の光景だったであろう。 悲鳴を上げつづける母ゆっくり達に混じり、れいむも必死に叫び続けた。 そんなれいむの視界に、れいむの良く知る、世界で最も愛する存在の姿が映った。 「おにぇーぢゃん!たしゅけちぇぇぇええ!!」 「まりさ!ゆ、ゆぁあああん!!おねーさん、やべで、やべであげでぇぇええ!!」 末っ子まりさの順番は、赤ゆっくり達の中で、一番最後だった。 「いやなのじぇ、だじゅげ」 ごし・・・ごしっ・・・ そして、集められた赤ゆっくり達は、一匹残らず薄皮饅頭になった。 「ゆぴゃぁあああ!!ゆっぐぢでぎにゃい、ゆっぐぢでぎにゃいぃぃいい!! おぎゃーしゃん、おにぇーじゃん!ゆびゃぁぁああああ!!」 「どうぢで・・・どうぢでぇ、ゆっぐぢぢでだのにぃ・・・」 れいむは、可愛い末っ子まりさを、守りきることが出来なかったのだった。 『元』赤ゆっくり達の悲鳴が周囲に響き続ける中、 母ゆっくり達は、自分達のおちびちゃんの、あまりにも痛ましい姿に、 泣き叫ぶ気力も残されておらず、ただすすり泣くように懇願し続けた。 「もうやべで・・・ゆっぐぢぢで・・・」 「おちびちゃ・・・ぺーろぺーろさせてぇ・・・」 その様子を気にしているのか、母ゆっくり達にはおねえさんの表情からはなにも読みとれなかった。 そして、おねえさんは薄皮饅頭を数十個乗せたおぼんを持ち上げると、 たき火の上でクツクツと音を立てる大鍋の前に運び、 じゃぽじゃぽじゃぽっ おぼんの中身を大鍋の中に落としていった。 「「「ゆっぴゃぁぁあああああああぁぁぁぁ・・・・・こぽ・・・こぽ・・・」」」 「「「おぢ・・・おぢびぢゃ・・・」」」 赤ゆっくり達は、一匹残らず大鍋の湯の中に溶けて消えていった。 ダンボールに入れられたゆっくり達は、それからしばらくの間放置された。 母ゆっくり達の詰め込まれたそのダンボールには、 赤ゆっくり達からこそぎ取られたお飾りや、髪の毛も放り込まれていた。 母ゆっくり達は、自分のおちびちゃん達の、お飾りと髪の毛をぺーろぺーろして泣き続ける。 だが、やがてたき火の火が弱くなったところで、そのダンボールから完全に気力を失った補佐まりさが取り出された。 「ゆ・・・やべで、やべでぐだざい・・・もういいでじょ・・・あとのみんな・・・ だずげでください・・・ぱちゅりーにやぐぞぐぢだんでず・・・だずげるっで、みんなだずげ」 ひょいっ・・・ボゥッ 「ゆぁぉ・・・」 補佐まりさは、一瞬で火の中に消えていった。 「やべでぇぇえええ!!」 「もうやぢゃ、もうやべぢぇ、ゆびゃぁぁあああ!」 それから間もなく、可愛いおちびちゃん達の物だったお飾りごと、母ゆっくり達はたき火に投げ込まれていった。 「どうぢで・・・どうぢでぇ・・・ゆっぐぢ、ゆっぐぢぃ」 最後に残されたのは、子ゆっくりだったためダンボールの中で一番小さかった、れいむだった。 ひょい。 恐怖と絶望で体が動かなくなっていたれいむは、逃げる事もできず、人間さんにあっさりつまみあげられた。 「おねえざん・・・どうぢで・・・?」 れいむは、すでに生を諦めていた。 ただ、それでも、どうしても質問せずにはいられない疑問があった。 れいむは、恐怖で震える口から、必死で声を絞り出したのだった。 「どうぢでごんなごどずるの・・・れいむたち・・ゆっくりしてただけだよ・・・?」 ひょいっ・・・ボッ そしてれいむは、疑問に対する答えを最後まで得ることなく、たき火の中に放り込まれて炭になった。 それから数分後、 ゆっくりの楽しげな声が消えた、かつてのゆっくりプレイスには、 美味しそうなお汁粉の鍋と、それを囲い談笑する人間さん達だけが残された・・・
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2524.html
【すりすり】 「ぎゃお~たーべちゃうぞー!」 目の前で手を掲げながら喋っているのはれみりゃ。胴体付きである。 「うー! ゆっくりしね!」 その隣の口の悪いのはふらんである。 この2匹は里子に出された二匹だ。なんでも元の飼い主が流石に子供の面倒まで見れないとかで 道端のポスターで里親を募集していたのを見て引き取った。 断っておくが、俺は虐待趣味などという特殊な性癖は持ち合わせていない。 ついでにロリコンでもない。ロリコンでもない。 さて、夕飯の時間だ。とりあえず餌となるゆっくりから取った餡子を与えることにした。 「う~あまあま~♪」 「うー! おいしいー!」 喜んで貰えてなによりだ。捕食種を買う上で注意することが食事だ。 下手にゆっくりなぞ与えようものなら、野生だろうが飼いゆっくりだろうが無差別に食べてしまう。 そうならないように、生きたゆっくりは食べさせない。しかし遺伝子レベルでゆっくりを求めるためにしっかり躾をしなければならない。 深夜1時。堪った仕事を終わらせた俺は、シャワーを浴び終えた後、一日の疲れを癒すことにした。 れみりゃ達とスキンシップを取るのだ。 二匹は積み木で遊んでいた。 「う~♪ ごーまかんのかんせいだどぉ~♪ りっぱなおうちだどぉ~♪」 「ゆっくりしね!」 「うー! れみりゃのごーまかんをこわさないでふらんー!」 「うー! こわれろ! こわれろ!」 実に楽しそうに遊んでいる。さてスキンシップを取ろうか 「おにーさんとすりすりしようかれみりゃ~」 「ぶれいなにんげんだどぉ~♪ でもれみりゃはやさしいからとくべつにゆるすどぉ~♪」 ひょいっと掴んでもあまり怒らないれみりゃ。 れみりゃの顔に俺の顔を近づけて・・・ハイパーすりすりタイムはじまるよー なんのことはない。ただれみりゃのほっぺと俺のほっぺをすりすりするだけだ。 「すりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすり すりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりィイイイ!!!!!!!」 あくまで優しく、一回一回丹念にすりすりする俺。れみりゃのもちもちの肌の感触は凄まじく気持ちいい。 ただ気持ちいいからといって力任せではいけない。あくまで紳士的に優しくだ。 「すりすりすーーーーーーーりすーーーーーーりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすり」 ヤバイ。なんか火がついた。予想以上だ。 実は「いだいどぉ~~~~!!!! ざぐやーーーーー!!!! ほっぺがあづいんだどぉー!」だの 「ぼうやべでええええ!!!! ぎぼぢわるいんですううううう!!!!!」 だのれみりゃは叫んでいたのだが、男の耳には何一つ入っていなかった。 「きもちいいよおおおおおお!!!! れみりゃあああああああああ!!!! ベロベロベロベロベロベロ。」 勢いに身を任せて男はれみりゃの頬を舐めはじめた。れみりゃの方は更なる苦痛に顔を歪めた 「きぼぢわるいどぉおおおおお!!!!!! べろべろやだああああああ!!!! ざぐやああああ!!!!」 「うー! おねーさまをはなせ! ゆっくりしね!」 ベシベシと男に攻撃を加えるふらん。しかし効果はなかった。 一時間後、そこにはすっきりした顔の男とぐったりしたれみりゃが居た。 ほっぺが赤く湿っていた。 「ざぐや・・・れみりゃやじぎにがえるどぉ・・・・」 「ぐっすり寝ちゃってるなれみりゃ・・・よっと、ベットでちゃんと寝ないとだめだぞ。」 男はれみりゃを専用のベットに運んだ。そして自分もベットに入る。ふらんを横に抱えて。 「うー! はなせ! はなせ!」 バタバタと暴れるふらん。男はふらんをガッシリと掴んで放さない。 「もう夜遅いから寝よーな。おやすみふらん。」 そういって眠った男。しかも何故か体をふらんに擦りつけながら。 「う-! しね!」 寝ているくせに何故かふらんは離さない男。寝ているのに関わらず、一分起きぐらいにすりすりしてきた。 男の顔は幸せそうだが、ふらんは堪ったものではない。 「ぎもい! ぎもい! もういや! ゆっくりじね! ゆっぐりじね!」 何せ自分より遥かにでかい生き物が、すりすりしてくるのだ。しかも男だし。そりゃ気持ち悪い。 体全体でのスキンシップはふらんの精神にダイレクトアタックだった。 朝、男は久し振りに気持ちよく目覚めた。 そして横のふらんを見る。目の下にくまができていた。 「ん? 眠れなかったのかふらん? 急におうちが変わったからだしわからんでもないが、ちゃんと寝ないとな。 今から朝ごはんを作るよ。」 鼻歌まじりでキッチンへ向かう男。一ヶ月後、この家からストレスで剥げたゆっくりが2匹ほど現れる事になるの 【バスケットボール】 れいむが気がつくと、見たこともない部屋に居た。白い壁で囲まれた部屋だ。自分は確かありすの巣で寝ていたはずなのだがと考えていると 目の前に誰かいる事に気づいた。 「ゆっくりしていってね!!!おにーさんはゆっくりできるひと?」 顔を少し傾けならながら聞くれいむ。しかし相手はそれに反応することもなく、突如男はしゃがみながら蹴りをれいむにお見舞いしてきた。 「ゆがッ!!」 堪らず嗚咽を漏らすれいむ。逃げようとするが後ろの壁まで飛ばされて逃げられない。 尚も男は攻撃の手を緩めない。れいむは男の手で空中に上げられると、まるでお手玉のように何度も何度も殴られた。 「ゆべぇ!!!」 男の手が一瞬止まり、地面に叩きつけらたかのように落下するれいむ。しかし男の攻撃は止まらない。 そのっま男は何度も何度もしゃがみながら、れいむを蹴り続ける。蹴られるたびにれいむの体はゴムまりの様に跳ねる。 「いじゃい゛!!な゛に゛ずるどぶえ゛っ!!でいぶおごる゛よ゛!!ゆがぁっ!!」 れいむには何故こうなったのかまるで分らない。れいむはただ日々ゆっくりしていただけだ。 たくさんお野菜が生えてるとこで食事をしたり、目の前を通った可愛いちぇんと愛し合ったり、ありすの巣でご飯をいっぱい食べてあげて寝ていたり。 毎日ゆっくりした生活を過ごしていただけだ。なのになんでこんな事をされるのか。 れいむの底部に蹴りが入る。 「いぎゃい!!!」 また蹴りが入る 「ゆべが!!」 また蹴りが入る 「ゆぼぉ!」 また蹴りが入る 「ゆるじでべえ!!」 また蹴りが入る 「でいぶがわるが!!!」舌を噛んだようだ また蹴りが入る 「ゆっぐり゛でぎながぁ!!!」 急に空高く上げられる 「ゆ・・・おそらをてんでるびぎゃ!!!」 そしてまた蹴られる 「なんでぇぎゃ!!!!」 何回蹴られたかなどもう忘れた。途中からパンチに変ったような気がしたがもうわからない。 皮膚はもはやところどころ破れ、餡子が漏れ出していた。 痛みも最早感じない。感覚が麻痺してきた。自分はもう長くないだろう。 なんでこのおにーさんはこんな酷いことをするのか。 「ぼう゛ゆ゛る゛じで・・・ぐだざい゛・・・」 もうゆっくり死にたかった。最後ぐらいはゆっくりと その願いが叶ったのか、れいむの体は今までで一番高く跳ねあがった。 「ゆ・・・おそらをとんでるみたい・・・これならゆっくりとしねるね。」 このまま地面に激突すれば死ぬだろう。しかしそれはおそらく一瞬の出来事。 そう思って安堵の顔で地面に落ちようとして、れいむは男が何か言ってることに気づいた。 「切り裂け!」 男の手刀はあまりの速さに凄まじい衝撃波を起こした。 それはれいむの体を文字通り切り裂くのに十分な威力だった。 「ゆぎゃぁああああ!!!!」 皮と餡子がバラバラになっていく。切り裂かれた痛みで意識が飛びそうになる。いやいっそ飛べばよかった。 もはや口だけが辛うじて残ってる状態で地面に落ちたれいむ。 「いぎゃあ・・・がぁ・・・ぼっどゆ゛っぐり゛じだが・・・」 男はれいむを見ながら言った。 「てめえごとき、南斗聖拳の前にはゴミクズ同然だ!!」 【ゆっくりお葬式をしていってね!!!】 昔々、あるところにとてもゆっくりしたれいむとまりさの夫婦が居ました。 5匹の子供に恵まれた二匹はとても幸せでした。 しかしある時、めりさが運悪く落石により死んでしまいました。 れいむと子供たちはまりさの死を悲しみながらも、強く生きてこうと決意しました。 そしてまりさの代わりに群のリーダーを引き受けることにしました。リーダーとしての最初の仕事は 前リーダーのまりさの葬式でした。 「あのよでゆっくりしてるんだねー。わかるよー。」 「とかいはなおはなをあげるわリーダー・・・」 「やすらかにねむってね、リーダー。」 群れの属する数十匹のゆっくり達、更には隣の群れのゆっくり達も葬式に駆けつけました。 それほどまりさは人望が厚いゆっくりだったのです。まりさの帽子を土に埋め、花や木の実を捧げたゆっくり達は 生前のまりさとの思い出を語りながら帰っていきました。 れいむは子供たちを家で寝かせると、一人外で泣きはじめました。 「ゆぐっ! ゆぐ・・・・ばりざあああああ!!!!!」 れいむの顔は涙でクシャクシャになっていました。するとそこへ 「ないたらだめよれいむ! ゆっかりなきやんでね!」 後ろから少女のような声が聞こえてきました。振り向くとそこには見たことのないゆっくりがいました。 「ゆ? だれなの?」 「ゆかりんだよ! ゆっかりしていってね!!!」 そう言うと、どこからか持ってきたのかハンカチを口に加えて、れいむの涙を拭いてあげました。 それから二人は夜が更けるまで会話を楽しみました。最初は乗り気ではなかったれいむも ゆかりんのやさしさに次第に心を開きました。 「そろそろかえるわねれいむ! ゆかりんはもりのけんじゃだからいつでもあそびにきてね!」 「わかったよ! さようならだねゆかりん!」 ゆかりんと別れてから一瞬間が立ちました。れいむはリーダーとしての仕事に追われ、更に子育てにも追われていました。 しかし常にゆかりんの事が頭の中を駆け巡っていました。 (ゆゆ・・・あいたいよゆかりん・・・) しかし隣の群れには中々いけないのが現実であった。 まりさが生きていたころならまだしも、リーダーとなった今、ゆかりんへ会いに行くほどの余裕などれいむにはなかった。 それに子供を置いていくわけにもいかない。というかそもそも、ゆかりんのおうちすら知らなかった。 (ゆゆ・・・どうしよう・・・・) 「おきゃーしゃんだいじょーぶ? ゆっきゅちちないとだめだよ!」 考え事をしていたれいむはハッと気づいた。寝ていたはずの子れいむがが心配そうな目で自分を見ていることに。 「ゆ、だいじょうぶだよ! おちびちゃんこそゆっくりしてね!」 子供に心配かけまいと笑顔を見せたれいむ。その時、何かが閃いた。 (ゆ! そうだね! れいむがこれないならゆかりんがこっちにくるようにすればいいんだね!) 善は急げ。れいむは赤ちゃんにこう話しかけた。 「ままをしんぱいしてくれたおちびちゃんに、とくべつにあまいものをたべさせてあげるね!」 「ゆゆ~! あみゃいのたべちゃい!」 「ゆっくりおかーさんのくちのなかにはいってね!」 「ゆゆ!」 勢いよく口の中へ入っていく赤れいむ。れいむはそのまま「そろーり、そろーり」と言いながらどこかへ消えていった。 そして群れから離れた場所まで来た。 「おきゃーしゃんまだー?」 「もうついたよ。」 「ゆ! ならおそとにでるね! ゆっくちおくちをあけちゃね!」 「あけなくていいんだよ。」 「ゆゆ?」 親の発言が理解できずに聞き返した赤れいむ。するといきなり上から押しつぶされた。 「ゆぎぃ! いじゃいよ! おぎゃーじゃんやべでえええええ!!!!」 突然の行動にパニックになる赤れいむ。母親は気にせずに 「すーりすーりするよ! ゆっくりつぶれていってね!」 更に口に力を込める。そして 「いぎゃ!・・・・・」 ブチっと言う音が響き渡る。赤れいむはその言葉を最後に沈黙した。 れいむは口をモゾモゾと動かし、赤れいむを吐き出す。そしてそのまま帰っていってしまった。 次の日の夜。リーダーの子供である赤れいむの葬式が行われた。 誰の手で殺されたかはわからないが、おそらく夜に家を抜け出し、他の動物にやられたのだろうと群れの中で結論がでた。 れいむは泣いてる子供たちを参謀のぱちゅりーに任せ、参列していたゆかりんのところへ向かった。 「れいむ・・・ざんねんだったわね。あかちゃんまでも・・・」 「うん・・・でも、ゆかりんがきてくれてれいむうれしいよ! ゆかりんからげんきをもらえるからがんばれるよ!」 れいむは笑顔で言った。 れいむはその後も同じ様な事を繰り返した。 最初は自分たちの子供を。次に参謀や群れの幹部を。最後には群れのゆっくりのこどもたちを。 そうしてどんどん殺していった。そのたびにゆかりんとの会話を楽しんだ。 一度結婚を申し込んだこともあっただ、れいむが群れのリーダーという理由で断られた。その時ほどまりさを憎んだ時はなかった。 そうしてどんどん殺しはエスカレートしていった。群れのゆっくりは犯人がわからない殺ゆっくりに怯え群れを離れた。 そうして最後にはれいむ一人だけになってしまった。群れのあったところには誰もいなかった。 「ゆゆ・・・だれもいなくなったね・・・これじゃあゆかりんにあえないよ。」 しかしどうすることもできなかった。群れを離れたゆっくりが今更戻るとも思えない。かといってゆかりんのおうちは未だに知らなかった。 どんなに聞いても「スキマのなかよ!」ではぐらかされ、いくら探しても見つけることはできなかった。 しかしここを離れたらゆかりんとは会えないだろう。 れいむは死ぬまでここでゆかりんを待ち続けることになるのだ。たった一人で 「ゆゆ・・・ゆゆ・・・さびじい゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!!!! だれ゛でもい゛い゛がら゛ でいぶどい゛っじょに゛い゛でえ゛え゛え゛え゛!!!!!!」 そんな声が森に響き渡った。 【あとがき】 思いつきをダラダラと テルヨフと添い寝したい。 byバスケの人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/2176.html
書きたかった事 親は子を見限れるのか でぶれいむ。ぶよぶよ 注意点 口の中いっぱいに食べたら一日分の食事くらいの設定です 作者 チェンマガツ? 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!」」」」 うららかな陽気に誘われてまりさとれいむ、そしてその子供達いずれもれいむ種の四匹が背の低い草が生い茂る原っぱで思い思いにくつろいでいる。 両親は子供達が遠くに行かないよう見守り、子供達は四匹仲良くかけっこや押し合いを興じている。 今年の冬も無事越す事ができ、順調にご飯も集まったことから早めの子作りをして番は群れのゆっくり達よりいち早く幸せそうな日々を送っている。 れいむが子供達を呼ぶとその小さな体で一生懸命に跳ねてくる。 そよそよと撫でるように静かに吹く風やその大きさの割にのっそりと動く雲のおかげでここはとてもゆっくりできる。 そして番と子供達は寄り添って昼寝を始める。 天高く昇った太陽が体を温めてぽかぽかと気持ちよく、日光はまるで餡子にまで染み渡るようだ。 そんなゆっくり達の平穏を破る者が現れた。 片手に鞄を持った人間だ。わざわざゆっくりがいる森の奧までハイキングをしてくるような変わった男である。 「ゆっくりしていってね!!」 無防備に眠っているゆっくりの家族に向かって男は挨拶する。 すると眠そうな目をしながら律儀に挨拶を返してきた。 「「ゆっくりしていってね!!」」「「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!」」」」 「おにいさん、ここはまりさたちのゆっくりぷれいすだからでていってね!!」 「まあそんな事言わずにここでゆっくりさせてくれよ」 「れいむたちはねむねむなんだよ? そんなこともわからないの?」 「せっかく君たちに美味しい食べ物を持ってきてやったんだがいらないのかい?」 男のその言葉に反応したのは子供達だ。今は睡眠欲よりも食欲が優先される時期なのだろう。 男の足下まで跳ねてきて、我先にとぴょこぴょこと垂直に飛び上がる。 「しょれってゆっきゅりできりゅ?」 「ああできるとも」 「れいみゅにいっぱいちょうらいね!!」 「れいみゅも!! れいみゅも!!」 「はいはい順番にね。お前達はいらないのかい?」男は番であるまりさとれいむにも呼びかける。 「ゆゆっ!! れいむたちにもちょうだいね!!」 「よしよし」 どうやら家族全員が男からのご飯に興味をもったようである。 男は手持ちの鞄から大きいおにぎりを一つ取り出しゆっくり達の背後に向かって放り投げた。 すると男の手を離れ放物線を描くおにぎりを家族全員が目で追う。 そしてゆっくり達は一目散に駆けだした。 おにぎりに一番近い位置にいるのは親であるまりさとれいむであり、あっという間におにぎりに食らいついていた。 それに遅れたのは子供達である。男の足下にいたうえ、親よりも移動速度も遅いのだ。 急いで跳ねていくがきっと辿り着いた頃には無くなっているだろう。 「にゃんでにゃげたのー!!」 「ゆえーん、いじわるしないでにぇ!!」 男に悪態を付きながら必死に跳ねていった。 そのうちの一匹の赤れいむが出遅れた。 男の足下で跳ねていて丁度着地してグニャっと変形しているときに男がおにぎりを投げた赤ゆっくりだ。 姉妹達の様子からようやくご飯が遠くにあることを知って、泣きながら後を追い始めたが完全に出遅れていた。 男はその赤れいむを見逃さなかった。 素早く背後から捕まえては叫ばれないように口に粘着テープで蓋をする。 さらに後ろ髪のリボンともみあげの飾りを奪って鞄の中から透明な箱を取りだしてそれにれいむを放り込んだ。 次に男が取り出したのは別の透明の箱でその中には飾りのない同じ大きさの赤れいむがいた。 そのれいむにこれまた素早く先程奪った飾りを取り付け、怪我をしないようそっとご飯の近くに投げた。 もちろんこの間の男の行動を家族のどのゆっくりも見ていなかった。それほど男の与えたご飯に注視していた。 そして男は静かにその場を去った。親であるれいむとまりさは自分の子供の中身がすり替わった異変に気が付くだろうか、いや気が付かない。 飾りで個体識別をするゆっくりにとってもはや本体は付属品なのだ。 まるでおまけ付きお菓子のような存在である。 余談はさておきゆっくりの家族の様子を見てみよう。 「うっめ、めっちゃうっめ」 男の投げたたった一個のおにぎりを親まりさと親れいむは二匹で食べ終えてしまった。 「おかーしゃん、おにいしゃんのごはんは?」 「ゆあああ、おいしくてぜんぶたべちゃったああああ」 「どおじでわけてくれにゃいのぉぉぉ」 「おかーしゃんのばきゃぁぁぁぁ」 「ごめ゛んね゛えええええええ」 泣き崩れて情けない表情の親子の元に男によって中身の変えられた赤れいむが近づいてきた。 「おなかへっちゃからごはんちょうらいね!!」 「ゆう?」親まりさは声のトーンが少し低いその赤れいむを少し不審に思った。 こんな声の子供がいたっけ。でも姿は間違いなくまりさの子供だし……。 だがそれ以上まりさは深く考えない。 「みんなおうちにかえってごはんたべようね!!」 「「「「ゆゆ~ん」」」」 親まりさは自分の気持ちを一旦押し込めて子供達のご飯を与える事を先決した。 どうせ気のせいだろう。よく思い出せば前からこんな感じだったさと何とも楽観的に考えながら家族仲良く帰宅したのだった。 「こんにゃのじゃたりないよ!! もっちょもってきてにぇ!!」 「おちびちゃんちょっとたべすぎだよ……」 親達が保管していたご飯を子供達に配り、皆で食べ終えさらに一匹だけおかわりをした直後の赤れいむの台詞である。 残り三匹の赤れいむはと言えば、お腹いっぱいで丸々としたその姿のせいかころころと巣の中を転がり回っている。 しかし残り一匹の様子がどうもおかしいのだ。 この一匹は親まりさが昼間の原っぱで異変を感じた一匹だったが、どこがおかしいのかわからないでいる。 「ゆゆっ……、しかたないからもうすこしもってくるね」 そう言って親れいむは食物庫に入っていく。食べ物の保管量に関しては申し分無いのでなんら問題ないが、今までに無い事態に少し戸惑っていた。 「れいむはそだちざかりなんだね!!」 親まりさはむしろそれを喜ぶ事にした。そうだ自分達が子供の頃もこれくらい食べたものだ。 いつも親の手を煩わしていた気もする。 そう思いこむ事にした。そうして問題を先延ばしにしてしまった。 「さあおちびちゃん、ゆっくりたべてね!!」 「はふはふ、むしゃむしゃ、がつがつ……」 「いっぱいたべてゆっくりおおきくなってね!!」 気持ちいいの食べっぷりに両親の頬は緩んだが、しかしそれを豹変させる台詞を赤れいむは吐く。 「まだしあわしぇーできにゃいよ!! もっちょちょうだいにぇ!!」 「「ゆ゛ゆ゛っ!!」」 結局その後普段の五倍の量を食べて赤れいむは渋々満足した。 あれほど食べたのにかかわらず体型が変わらないのが不思議なくらいだ。大食いの赤れいむの横で眠る姉妹はあんなにも丸々しているのに……。 そこには両親は気が付いていない要素があった。この赤れいむのサイズが一回り大きくなっていた事だ。 たった一回の食事で急激な成長をしたことになる。 中身の餡子が増えただけでは表皮が追いつかず破裂しかねないが、この赤れいむはその特異的な柔軟な皮のおかげで形を保っていた。 ようやく眠りについた赤れいむを見つめながら親まりさと親れいむは安堵のため息をつく。 しかしその安堵もその日の晩のご飯の時に打ち砕かれた。 再び大量のご飯を要求する一匹の赤れいむによりあれほど蓄えていた食料も残りわずかになってしまった。 「このちびちゃんはごはんをたべすぎだよ……」 「ゆゆっ……。まりさががんばってごはんをあつめるからだいじょうぶだよ!!」 就寝前に両親が一匹の赤れいむについての話をした。 ご飯を食べ過ぎる本人ももちろん心配だが、明日も明後日もこれから先ずっとこのペースで食べ続けられると家族全員のご飯が無くなってしまう心配があった。 翌朝、親まりさと親れいむが目覚めるといつもの挨拶を交わし合う。 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!」」」 あれ?とまりさとれいむはどちらともなく思った。 そしてもう一度、今度は少し大きめの声で挨拶をする。 「「ゆっくりしていってね!!!!」」 「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!!!」」」 まりさとれいむは巣の中をよくよく見回した。 そこにいるのは赤れいむが三匹だ。たしか自分達の子供はもう少し多かったような気がするのだが。 「おかーしゃんどうしちゃの?」 二度にわたる挨拶に赤れいむの一匹は不思議そうな顔をしている。 もう一匹は未だ眠そうな顔を、そして残りの一匹は朝からとても元気である。 「おなかへっちゃからごはんちょうだいね!!」 「そうだね、ごはんにしようね!!」 「れいむたちはゆっくりまっててね!!」 自分達の子供が一人減っている事に気が付かない親まりさと親れいむ。 ご飯の催促を受けてまりさが単身朝ご飯の調達に向かい、れいむは子供達と歌を歌ったり頬擦りをしながらその帰りを今か今かと待つ事にした。 所変わってここは町の加工場、ゆっくりたちの阿鼻叫喚に包まれるまさにゆっくり地獄と呼べる空間に冒頭に出てきた男が勤めていた。 男が勤務する部署は廃棄物処理の工程に携わっていた。 ゆっくり食品の製造過程においていくつか発生する商品適応外のものを処理することがメインで、その他にも繁殖、飼育中に出てくる残飯、発育不良品、死体等の処理も行うのだ。 この工場ではそういった物を一元化してゆっくりに処理させる工程にある方法を取っていた。 いわゆるゆっくりコンポストである。 コンポスト内には工場稼働中は常にゆっくりの餌となるものが流し込まれていった。 一般家庭や街角に設置してあるコンポストとは比にならないほどの処理効率を求められた内部のゆっくり達は、世代を経るたびにそこで生き残る術を身につけていった。 コンポスト設置当初は何度もゆっくり達は処理しきれない餌にまみれて死んでいき、工場全体の動きを停止せざるを得ない状況に陥らせた。 そこで男達が投入したのが表皮の伸縮性の高いゆっくりだった。 ゆっくりの食欲が完全に満たされるのは自分の体がパンパンになりこれ以上ご飯が食べられなくなったときだ。 つまりその状況までいかなければいくらでも食べ続ける事ができた。 そして通称コンポストゆっくりと呼ばれる大喰いのゆっくりが誕生した。 表皮が厚くさらにとても伸びるコンポストゆっくりはコンポスト内を溢れかえらすこともなく、その無限の食欲で廃棄物処理を行っていった。 このゆっくりは大喰いもそうだがやたらと成長が早いこともその特徴だった。 沢山食べるから早いのか、もっと沢山食べるために早く成長するのかは定かではない。 またコンポストを空にするのが彼らの目的であるためうんうんしーしーもきわめて少ない。 その体皮も手伝って体内の老廃物はすべて溜め込んでいるようだった。 結果コンポスト内では水ぶくれ気味で健康的なゆっくりからすればかなり太った体型となっていた。 男はこのコンポストゆっくりを興味本位で野に放ち、野生での適応は可能かを試してみる実験としてまりさとれいむの子供をすり替えたのだ。 そしてそのコンポストゆっくりの赤れいむはまさに猛威を振るっていた。 朝のうちから狩りに出かけた親まりさが昼ご飯も兼ねてかなりの量のご飯を取ってきていた。 昨日の昼ご飯、晩ご飯のことを考えれば二回の食事はこれくらいあれば食べ盛りの赤れいむも満足するだろう、そう思った結果である。 一般的なまりさからしてもとても優秀なご飯回収量といえる。 しかし、その大量のご飯はあっという間にコンポストれいむの食欲によって消費されることになる。 「むーしゃ、むーしゃ、ふまんぞくー」 「「なんでええええええ!!」」 ゆうに一回の食事量の十倍は超えている、それも成体ゆっくり換算でだ。 見てみるとコンポストれいむの体高はすでに子ゆっくり並の大きさで、球体というより円柱に近い形をしている。姉妹と比べるとその異様さは目立つ。 たった一回の食事でここまで急成長し、さらにデブ体型である。コンポストれいむ恐るべし。 親まりさとれいむは戦慄した。このままでは親の威厳が保てないと感じた。 どこのゆっくりの世界に子供に満足にご飯を与えてやることのできないゆっくりがいるのかと。 子供をゆっくりさせてやれない親はゆっくりできないゆっくりだ。 なんとしてもゆっくりさせてやらねばならないというような変な責任感の元に朝ご飯が終わると両親揃って赤ゆっくりを巣に置いて狩りに出かけてしまった。 しかしここで妙な気合いを出すのは無駄な行為であるとはまりさとれいむは知る由もない。 それはいくらご飯を持ってきてもコンポストれいむに満足という言葉はないからだ。 太陽が空高く昇りきった頃、親まりさとれいむはその帽子と口に入るだけご飯を入れて自分達の巣に帰ってきた。 巣で待っていたのは同い年とは思えないほど体格差のあるれいむの姉妹が二匹待っていた。 「ゆゆゆっ!! れいむはどこにいったの!?」 親れいむは子供が一匹いなくなっていると気が付いた。この狭い巣の中では隠れようもないのでやはりいないのだ。 「しらにゃいよ!! おきたらいにゃかったよ!!」 「ゆっくりはやくごはんちょうだいね!!」 「もしかしておそとにでていっちゃったの!?」 「どおじですでまっでないのおおおお!!」 しかし赤れいむが巣から出た形跡は全くなかった。なぜなら巣に戻ったときに巣の入り口の偽装は破られてはいなかったからだ。 「ゆっくりはやくごはんちょうだいね!!」 「「れいむはすこししずかにしてね!!」」 両親はしつこく催促してくる赤れいむにご飯を与えて黙らせる。 その間に巣の周辺の捜索していなくなった赤れいむの行方を追った。 しかしどうしても発見できなかった。赤れいむの移動速度なぞたかが知れている。 ご飯を探している時間がかなりあったとしてもそれほど遠くまでいけないのだ。 それでも見つからないというのは捕食種に食べられたと考えるのが妥当だった。 「ゆあーん、おちびちゃんがだべられだあああああ」 「れいむしっかりするんだぜ、のこったれいむたちをゆっくりそだてればいいんだぜ」 「ばでぃざ、ごめんね゛ええええええ」 「れいむがあやまることじゃないんだぜ。ゆっくりすにもどるんだぜ」 子供が一匹いなくなったことを後悔するれいむとそれを何とかなだめようとするまりさ。すでにいなくなったのが二匹目であることはわかっていないようだが。 そんな二匹が巣に戻ると今度は驚く事態が発生していた。 「もっとごはんちょうだいね!!」 「「ゆがーん!!」」 あれほど集めたご飯がもうすでに消えていた。朝与えた量の二倍はあったのに。 さらに巣の中にあったなけなしの蓄えもすっかり消えていた。 丸々とした赤れいむとほとんど成体サイズに近い赤れいむの対比も両親を驚かせる。 たった二日ばかりでもうすでに自分達と同じ大きさまで育ってしまった。 しかし心はまだ赤れいむのそれである。 「「しゅーりしゅーり」」 隣にいる普通の赤れいむとはまるで親子のようなご飯後の頬擦りをする。 力加減を誤れば赤れいむが潰されそうな勢いで頬擦りするので両親は内心ハラハラしてそれを見守っていた。 そのうち昼寝の時間なのか二匹は寄り添って寝息を立て始めた。 それを確認するとまりさとれいむは巣を飛び出した。 この時間を見計らって両親は再び大量のご飯を用意しなければならないのだ。 両親が巣から出たあとしばらくするとコンポストれいむは目を覚ました。 その空腹から満足な睡眠をとることはできずたびたび起きてしまうのだ。 そしてその寝ぼけ眼に入ってくるのは美味しそうなご飯だ。 とても丸々として美味しそうなご飯。 その餡子に刻まれた記憶では丸々としたゆっくりはご飯でしかないのだ。 もはやその体格差から小細工など必要ないから姉と呼んでいた赤れいむを豪快に一飲みにしてしまった。 こうしてこのれいむは三匹の姉妹を寝ているときに襲っては食料にしていた。 両親が気が付かぬよう別段に気をつけていたということはないがたまたま見つからなかった、それだけのことである。 しかしそれはどこか自分が生き延びていくために行ったという自然な光景にも見えた。 自分に親が集めてきたご飯を集中させることが目的であるようなそんな光景だ。 とある群れのリーダーであるゆっくりぱちゅりーは最近起こっていたご飯泥棒をついに捕獲することに成功した。 自分達の群れには属さないが群れの近くで住んでいる薄汚いまりさとれいむの番だった。 大量のご飯を盗んでいるはずなのに本人達は痩せ細っているのが不可解だが盗みの現場を目撃した限りやはり犯人なのだろう。 「むきゅー、いままでもっていったごはんをかえしてもらうわ!!」 「ゆっくりりかいしたよ……」 「まりさたちについてくるんだぜ……」 ぱちゅりーが泥棒ゆっくり達にご飯の返還を要求すると二匹はそれにすんなりと応じた。 自分達の非を認める潔さがあるのに盗みを働いたことがなおさらぱちゅりーの理解の範疇を超えていた。 森の中を二匹を先頭に多くのゆっくりがぞろぞろと這っている。 自分達のご飯を返してもらうため二匹の巣に向かっているのだ。 かなりの量が巣に溜め込まれているとみて群れから成体ゆっくりのほとんどが駆り出された。 二匹の巣の前に到着すると不思議な物が目に入ってくる。 巣の前にうずたかく積まれた土の山である。 これだけの量があれば、山を固めてそれをくり抜く事で地上の巣を作る事が出来そうだ。 群れのゆっくりがゆっくりできそうな土の山に見惚れている間に、先頭にいたまりさとれいむは巣の前に着くと中に向かって叫んだ。 「「ゆっくりできるごはんだよ!!」」 「むきゅ、そのなかなのね!! みんなゆっくりとりかえしてね!!」 「「「「ゆゆ~!!」」」」 まりさとれいむの様子から巣の中に持って行かれたご飯があるものとぱちゅりーは判断して、群れのゆっくりに号令を掛けた。 その声に反応のしてゆっくり達が列になってぞろぞろと巣の中に入っていった。 これだけの土を掘り返した巣だ。中はきっととてもゆっくりできる空間になっているだろう。ぱちゅりーは巣の外から中の様子を予想した。 どんどん群れのゆっくりが入っていくがまだその流れは止まりそうにない。 二十はいた大人のゆっくりが巣の中に入っていた。それだけの数が入っても窮屈そうな声が聞こえてこない辺り、中の広さは予想以上なのだろう。 ぱちゅりーは巣の住人と一緒に巣の外で群れのゆっくりが出てくるのを待っていた。 しかしいくら待っても中に入っていったゆっくりが出てくる様子はない。 いくら広いと言ってもご飯の匂いを嗅ぎつけて食物庫に入り、ご飯を口に入れて出てくるくらいならそれほど時間はかからないはずだ。 「おかしいわね。ゆっくりしてないででてきてね!!」 ぱちゅりーは痺れを切らして自らその巣の中へと入っていった。 それほど広くない入り口付近のトンネルをどんどん奧に入っていくと急に柔らかい地面の部屋が現れた。 その空洞は部屋と呼ぶにはそれほど広くなく大人三匹が入れば窮屈になる部屋だ。 不思議なのはその狭さなのに群れのゆっくりはどこにもいないのだ。 「むきゅー、みんなはどこかしら。むぎゃ!!」それがぱちゅりーの最期だった。 突然部屋の天井が下がってきてぱちゅりーを押しつぶした。 すると天井は再び上がり、また下がってくる。そのうちぱちゅりーだったものは部屋の奥へと消えていき、群れのゆっくりと合流した。 いずれも完全に潰された形ではあったが。 「れいむ、あのむれのこどもたちをここにゆっくりつれてきてね。まりさはすをひろげるよ……」 「ゆゆっ、わかったよ……」 肉体的にも精神的にも疲れ切った二匹のゆっくりは一秒の時間も惜しいとばかりにすぐに動き始める。 自分達の子供をゆっくりさせるためだけの親と成り果てたゆっくり達の姿である。 結局自分の子供の異変に疑問を持つのは最後まで無かった。 むしろ自分達の不甲斐なさを呪うほど子供に傾倒してしまった。 自分達がゆっくりであるためには大喰らいの子供をゆっくりさせてやらなければならない。 もし出来なければ自分達はゆっくりできないのだ。 やはりゆっくりという生物はゆっくりできないようにできているようだ。 どこかで子供を見捨てれば別のとてもゆっくりできたゆん生があったのかも知れない。 しかしもしの世界は実現しない限りあり得ない話であったのだ。 そんなゆん生はこの両親にはこれからもなく、忙しなくご飯やときにはゆっくりをかき集める日々が死ぬまで続くのだ。 加工場の男は不幸な二匹が死に絶えるのを見届け、野生に放したサンプルに挨拶をした。もちろん巣の中に向かってお互いの姿は見えないままでだ。 「れいむ、ゆっくりしていってね」 「ゆっくりしていってね!!」 巣の中からはれいむの重低音が響く声が聞こえてきた。この声はコンポストゆっくりが太りきったときの特徴でもある。 「そんなことよりもごはんちょうだいね!! まだしあわせーできないよ!!」 巣の中からご飯を求める声が聞こえてくる。 きっとこいつも最期までご飯を求め続けた事になるのだろうと思う。 幸せを知らぬまま死ねるのは不幸も知らないという意味で幸せなのかも知れない。 男は持参していたドスパークに用いられるキノコを巣の前に一山置き、中のコンポストれいむに話しかけた。 「巣の前にキノコを置いたから食べるといいよ」 「ゆっくりたべるよ!!」 その瞬間巣の中から大蛇のようなれいむの舌が伸びてきてキノコをかっさらっていった。 その様子を見届けると男はその巣を後にした。 男が森を後にした頃、木々を揺らす地響きと共に巣の中から黒い煙が吹き出した。 あとがき カッコウの托卵っぽいのをテーマに書いてみました。 自分より体の小さな親に育てられるカッコウの写真を思い浮かべて貰えると丁度そんな感じかも。 初期のありすが托卵で増えるという設定は今ならかなり面白そうな気がする。 コンポストれいむの成長と共に移動が困難になり、巣を拡張することで肥大による圧迫を防いだそうです。 巣の中にまりさ達が入るときは親であると叫びながら入っていったそうな。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3472.html
書きたかった事 親は子を見限れるのか でぶれいむ。ぶよぶよ 注意点 口の中いっぱいに食べたら一日分の食事くらいの設定です 作者 チェンマガツ 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!」」」」 うららかな陽気に誘われてまりさとれいむ、そしてその子供達いずれもれいむ種の四匹が背の低い草が生い茂る原っぱで思い思いにくつろいでいる。 両親は子供達が遠くに行かないよう見守り、子供達は四匹仲良くかけっこや押し合いを興じている。 今年の冬も無事越す事ができ、順調にご飯も集まったことから早めの子作りをして番は群れのゆっくり達よりいち早く幸せそうな日々を送っている。 れいむが子供達を呼ぶとその小さな体で一生懸命に跳ねてくる。 そよそよと撫でるように静かに吹く風やその大きさの割にのっそりと動く雲のおかげでここはとてもゆっくりできる。 そして番と子供達は寄り添って昼寝を始める。 天高く昇った太陽が体を温めてぽかぽかと気持ちよく、日光はまるで餡子にまで染み渡るようだ。 そんなゆっくり達の平穏を破る者が現れた。 片手に鞄を持った人間だ。わざわざゆっくりがいる森の奧までハイキングをしてくるような変わった男である。 「ゆっくりしていってね!!」 無防備に眠っているゆっくりの家族に向かって男は挨拶する。 すると眠そうな目をしながら律儀に挨拶を返してきた。 「「ゆっくりしていってね!!」」「「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!」」」」 「おにいさん、ここはまりさたちのゆっくりぷれいすだからでていってね!!」 「まあそんな事言わずにここでゆっくりさせてくれよ」 「れいむたちはねむねむなんだよ? そんなこともわからないの?」 「せっかく君たちに美味しい食べ物を持ってきてやったんだがいらないのかい?」 男のその言葉に反応したのは子供達だ。今は睡眠欲よりも食欲が優先される時期なのだろう。 男の足下まで跳ねてきて、我先にとぴょこぴょこと垂直に飛び上がる。 「しょれってゆっきゅりできりゅ?」 「ああできるとも」 「れいみゅにいっぱいちょうらいね!!」 「れいみゅも!! れいみゅも!!」 「はいはい順番にね。お前達はいらないのかい?」男は番であるまりさとれいむにも呼びかける。 「ゆゆっ!! れいむたちにもちょうだいね!!」 「よしよし」 どうやら家族全員が男からのご飯に興味をもったようである。 男は手持ちの鞄から大きいおにぎりを一つ取り出しゆっくり達の背後に向かって放り投げた。 すると男の手を離れ放物線を描くおにぎりを家族全員が目で追う。 そしてゆっくり達は一目散に駆けだした。 おにぎりに一番近い位置にいるのは親であるまりさとれいむであり、あっという間におにぎりに食らいついていた。 それに遅れたのは子供達である。男の足下にいたうえ、親よりも移動速度も遅いのだ。 急いで跳ねていくがきっと辿り着いた頃には無くなっているだろう。 「にゃんでにゃげたのー!!」 「ゆえーん、いじわるしないでにぇ!!」 男に悪態を付きながら必死に跳ねていった。 そのうちの一匹の赤れいむが出遅れた。 男の足下で跳ねていて丁度着地してグニャっと変形しているときに男がおにぎりを投げた赤ゆっくりだ。 姉妹達の様子からようやくご飯が遠くにあることを知って、泣きながら後を追い始めたが完全に出遅れていた。 男はその赤れいむを見逃さなかった。 素早く背後から捕まえては叫ばれないように口に粘着テープで蓋をする。 さらに後ろ髪のリボンともみあげの飾りを奪って鞄の中から透明な箱を取りだしてそれにれいむを放り込んだ。 次に男が取り出したのは別の透明の箱でその中には飾りのない同じ大きさの赤れいむがいた。 そのれいむにこれまた素早く先程奪った飾りを取り付け、怪我をしないようそっとご飯の近くに投げた。 もちろんこの間の男の行動を家族のどのゆっくりも見ていなかった。それほど男の与えたご飯に注視していた。 そして男は静かにその場を去った。親であるれいむとまりさは自分の子供の中身がすり替わった異変に気が付くだろうか、いや気が付かない。 飾りで個体識別をするゆっくりにとってもはや本体は付属品なのだ。 まるでおまけ付きお菓子のような存在である。 余談はさておきゆっくりの家族の様子を見てみよう。 「うっめ、めっちゃうっめ」 男の投げたたった一個のおにぎりを親まりさと親れいむは二匹で食べ終えてしまった。 「おかーしゃん、おにいしゃんのごはんは?」 「ゆあああ、おいしくてぜんぶたべちゃったああああ」 「どおじでわけてくれにゃいのぉぉぉ」 「おかーしゃんのばきゃぁぁぁぁ」 「ごめ゛んね゛えええええええ」 泣き崩れて情けない表情の親子の元に男によって中身の変えられた赤れいむが近づいてきた。 「おなかへっちゃからごはんちょうらいね!!」 「ゆう?」親まりさは声のトーンが少し低いその赤れいむを少し不審に思った。 こんな声の子供がいたっけ。でも姿は間違いなくまりさの子供だし……。 だがそれ以上まりさは深く考えない。 「みんなおうちにかえってごはんたべようね!!」 「「「「ゆゆ~ん」」」」 親まりさは自分の気持ちを一旦押し込めて子供達のご飯を与える事を先決した。 どうせ気のせいだろう。よく思い出せば前からこんな感じだったさと何とも楽観的に考えながら家族仲良く帰宅したのだった。 「こんにゃのじゃたりないよ!! もっちょもってきてにぇ!!」 「おちびちゃんちょっとたべすぎだよ……」 親達が保管していたご飯を子供達に配り、皆で食べ終えさらに一匹だけおかわりをした直後の赤れいむの台詞である。 残り三匹の赤れいむはと言えば、お腹いっぱいで丸々としたその姿のせいかころころと巣の中を転がり回っている。 しかし残り一匹の様子がどうもおかしいのだ。 この一匹は親まりさが昼間の原っぱで異変を感じた一匹だったが、どこがおかしいのかわからないでいる。 「ゆゆっ……、しかたないからもうすこしもってくるね」 そう言って親れいむは食物庫に入っていく。食べ物の保管量に関しては申し分無いのでなんら問題ないが、今までに無い事態に少し戸惑っていた。 「れいむはそだちざかりなんだね!!」 親まりさはむしろそれを喜ぶ事にした。そうだ自分達が子供の頃もこれくらい食べたものだ。 いつも親の手を煩わしていた気もする。 そう思いこむ事にした。そうして問題を先延ばしにしてしまった。 「さあおちびちゃん、ゆっくりたべてね!!」 「はふはふ、むしゃむしゃ、がつがつ……」 「いっぱいたべてゆっくりおおきくなってね!!」 気持ちいいの食べっぷりに両親の頬は緩んだが、しかしそれを豹変させる台詞を赤れいむは吐く。 「まだしあわしぇーできにゃいよ!! もっちょちょうだいにぇ!!」 「「ゆ゛ゆ゛っ!!」」 結局その後普段の五倍の量を食べて赤れいむは渋々満足した。 あれほど食べたのにかかわらず体型が変わらないのが不思議なくらいだ。大食いの赤れいむの横で眠る姉妹はあんなにも丸々しているのに……。 そこには両親は気が付いていない要素があった。この赤れいむのサイズが一回り大きくなっていた事だ。 たった一回の食事で急激な成長をしたことになる。 中身の餡子が増えただけでは表皮が追いつかず破裂しかねないが、この赤れいむはその特異的な柔軟な皮のおかげで形を保っていた。 ようやく眠りについた赤れいむを見つめながら親まりさと親れいむは安堵のため息をつく。 しかしその安堵もその日の晩のご飯の時に打ち砕かれた。 再び大量のご飯を要求する一匹の赤れいむによりあれほど蓄えていた食料も残りわずかになってしまった。 「このちびちゃんはごはんをたべすぎだよ……」 「ゆゆっ……。まりさががんばってごはんをあつめるからだいじょうぶだよ!!」 就寝前に両親が一匹の赤れいむについての話をした。 ご飯を食べ過ぎる本人ももちろん心配だが、明日も明後日もこれから先ずっとこのペースで食べ続けられると家族全員のご飯が無くなってしまう心配があった。 翌朝、親まりさと親れいむが目覚めるといつもの挨拶を交わし合う。 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!」」」 あれ?とまりさとれいむはどちらともなく思った。 そしてもう一度、今度は少し大きめの声で挨拶をする。 「「ゆっくりしていってね!!!!」」 「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!!!」」」 まりさとれいむは巣の中をよくよく見回した。 そこにいるのは赤れいむが三匹だ。たしか自分達の子供はもう少し多かったような気がするのだが。 「おかーしゃんどうしちゃの?」 二度にわたる挨拶に赤れいむの一匹は不思議そうな顔をしている。 もう一匹は未だ眠そうな顔を、そして残りの一匹は朝からとても元気である。 「おなかへっちゃからごはんちょうだいね!!」 「そうだね、ごはんにしようね!!」 「れいむたちはゆっくりまっててね!!」 自分達の子供が一人減っている事に気が付かない親まりさと親れいむ。 ご飯の催促を受けてまりさが単身朝ご飯の調達に向かい、れいむは子供達と歌を歌ったり頬擦りをしながらその帰りを今か今かと待つ事にした。 所変わってここは町の加工場、ゆっくりたちの阿鼻叫喚に包まれるまさにゆっくり地獄と呼べる空間に冒頭に出てきた男が勤めていた。 男が勤務する部署は廃棄物処理の工程に携わっていた。 ゆっくり食品の製造過程においていくつか発生する商品適応外のものを処理することがメインで、その他にも繁殖、飼育中に出てくる残飯、発育不良品、死体等の処理も行うのだ。 この工場ではそういった物を一元化してゆっくりに処理させる工程にある方法を取っていた。 いわゆるゆっくりコンポストである。 コンポスト内には工場稼働中は常にゆっくりの餌となるものが流し込まれていった。 一般家庭や街角に設置してあるコンポストとは比にならないほどの処理効率を求められた内部のゆっくり達は、世代を経るたびにそこで生き残る術を身につけていった。 コンポスト設置当初は何度もゆっくり達は処理しきれない餌にまみれて死んでいき、工場全体の動きを停止せざるを得ない状況に陥らせた。 そこで男達が投入したのが表皮の伸縮性の高いゆっくりだった。 ゆっくりの食欲が完全に満たされるのは自分の体がパンパンになりこれ以上ご飯が食べられなくなったときだ。 つまりその状況までいかなければいくらでも食べ続ける事ができた。 そして通称コンポストゆっくりと呼ばれる大喰いのゆっくりが誕生した。 表皮が厚くさらにとても伸びるコンポストゆっくりはコンポスト内を溢れかえらすこともなく、その無限の食欲で廃棄物処理を行っていった。 このゆっくりは大喰いもそうだがやたらと成長が早いこともその特徴だった。 沢山食べるから早いのか、もっと沢山食べるために早く成長するのかは定かではない。 またコンポストを空にするのが彼らの目的であるためうんうんしーしーもきわめて少ない。 その体皮も手伝って体内の老廃物はすべて溜め込んでいるようだった。 結果コンポスト内では水ぶくれ気味で健康的なゆっくりからすればかなり太った体型となっていた。 男はこのコンポストゆっくりを興味本位で野に放ち、野生での適応は可能かを試してみる実験としてまりさとれいむの子供をすり替えたのだ。 そしてそのコンポストゆっくりの赤れいむはまさに猛威を振るっていた。 朝のうちから狩りに出かけた親まりさが昼ご飯も兼ねてかなりの量のご飯を取ってきていた。 昨日の昼ご飯、晩ご飯のことを考えれば二回の食事はこれくらいあれば食べ盛りの赤れいむも満足するだろう、そう思った結果である。 一般的なまりさからしてもとても優秀なご飯回収量といえる。 しかし、その大量のご飯はあっという間にコンポストれいむの食欲によって消費されることになる。 「むーしゃ、むーしゃ、ふまんぞくー」 「「なんでええええええ!!」」 ゆうに一回の食事量の十倍は超えている、それも成体ゆっくり換算でだ。 見てみるとコンポストれいむの体高はすでに子ゆっくり並の大きさで、球体というより円柱に近い形をしている。姉妹と比べるとその異様さは目立つ。 たった一回の食事でここまで急成長し、さらにデブ体型である。コンポストれいむ恐るべし。 親まりさとれいむは戦慄した。このままでは親の威厳が保てないと感じた。 どこのゆっくりの世界に子供に満足にご飯を与えてやることのできないゆっくりがいるのかと。 子供をゆっくりさせてやれない親はゆっくりできないゆっくりだ。 なんとしてもゆっくりさせてやらねばならないというような変な責任感の元に朝ご飯が終わると両親揃って赤ゆっくりを巣に置いて狩りに出かけてしまった。 しかしここで妙な気合いを出すのは無駄な行為であるとはまりさとれいむは知る由もない。 それはいくらご飯を持ってきてもコンポストれいむに満足という言葉はないからだ。 太陽が空高く昇りきった頃、親まりさとれいむはその帽子と口に入るだけご飯を入れて自分達の巣に帰ってきた。 巣で待っていたのは同い年とは思えないほど体格差のあるれいむの姉妹が二匹待っていた。 「ゆゆゆっ!! れいむはどこにいったの!?」 親れいむは子供が一匹いなくなっていると気が付いた。この狭い巣の中では隠れようもないのでやはりいないのだ。 「しらにゃいよ!! おきたらいにゃかったよ!!」 「ゆっくりはやくごはんちょうだいね!!」 「もしかしておそとにでていっちゃったの!?」 「どおじですでまっでないのおおおお!!」 しかし赤れいむが巣から出た形跡は全くなかった。なぜなら巣に戻ったときに巣の入り口の偽装は破られてはいなかったからだ。 「ゆっくりはやくごはんちょうだいね!!」 「「れいむはすこししずかにしてね!!」」 両親はしつこく催促してくる赤れいむにご飯を与えて黙らせる。 その間に巣の周辺の捜索していなくなった赤れいむの行方を追った。 しかしどうしても発見できなかった。赤れいむの移動速度なぞたかが知れている。 ご飯を探している時間がかなりあったとしてもそれほど遠くまでいけないのだ。 それでも見つからないというのは捕食種に食べられたと考えるのが妥当だった。 「ゆあーん、おちびちゃんがだべられだあああああ」 「れいむしっかりするんだぜ、のこったれいむたちをゆっくりそだてればいいんだぜ」 「ばでぃざ、ごめんね゛ええええええ」 「れいむがあやまることじゃないんだぜ。ゆっくりすにもどるんだぜ」 子供が一匹いなくなったことを後悔するれいむとそれを何とかなだめようとするまりさ。すでにいなくなったのが二匹目であることはわかっていないようだが。 そんな二匹が巣に戻ると今度は驚く事態が発生していた。 「もっとごはんちょうだいね!!」 「「ゆがーん!!」」 あれほど集めたご飯がもうすでに消えていた。朝与えた量の二倍はあったのに。 さらに巣の中にあったなけなしの蓄えもすっかり消えていた。 丸々とした赤れいむとほとんど成体サイズに近い赤れいむの対比も両親を驚かせる。 たった二日ばかりでもうすでに自分達と同じ大きさまで育ってしまった。 しかし心はまだ赤れいむのそれである。 「「しゅーりしゅーり」」 隣にいる普通の赤れいむとはまるで親子のようなご飯後の頬擦りをする。 力加減を誤れば赤れいむが潰されそうな勢いで頬擦りするので両親は内心ハラハラしてそれを見守っていた。 そのうち昼寝の時間なのか二匹は寄り添って寝息を立て始めた。 それを確認するとまりさとれいむは巣を飛び出した。 この時間を見計らって両親は再び大量のご飯を用意しなければならないのだ。 両親が巣から出たあとしばらくするとコンポストれいむは目を覚ました。 その空腹から満足な睡眠をとることはできずたびたび起きてしまうのだ。 そしてその寝ぼけ眼に入ってくるのは美味しそうなご飯だ。 とても丸々として美味しそうなご飯。 その餡子に刻まれた記憶では丸々としたゆっくりはご飯でしかないのだ。 もはやその体格差から小細工など必要ないから姉と呼んでいた赤れいむを豪快に一飲みにしてしまった。 こうしてこのれいむは三匹の姉妹を寝ているときに襲っては食料にしていた。 両親が気が付かぬよう別段に気をつけていたということはないがたまたま見つからなかった、それだけのことである。 しかしそれはどこか自分が生き延びていくために行ったという自然な光景にも見えた。 自分に親が集めてきたご飯を集中させることが目的であるようなそんな光景だ。 とある群れのリーダーであるゆっくりぱちゅりーは最近起こっていたご飯泥棒をついに捕獲することに成功した。 自分達の群れには属さないが群れの近くで住んでいる薄汚いまりさとれいむの番だった。 大量のご飯を盗んでいるはずなのに本人達は痩せ細っているのが不可解だが盗みの現場を目撃した限りやはり犯人なのだろう。 「むきゅー、いままでもっていったごはんをかえしてもらうわ!!」 「ゆっくりりかいしたよ……」 「まりさたちについてくるんだぜ……」 ぱちゅりーが泥棒ゆっくり達にご飯の返還を要求すると二匹はそれにすんなりと応じた。 自分達の非を認める潔さがあるのに盗みを働いたことがなおさらぱちゅりーの理解の範疇を超えていた。 森の中を二匹を先頭に多くのゆっくりがぞろぞろと這っている。 自分達のご飯を返してもらうため二匹の巣に向かっているのだ。 かなりの量が巣に溜め込まれているとみて群れから成体ゆっくりのほとんどが駆り出された。 二匹の巣の前に到着すると不思議な物が目に入ってくる。 巣の前にうずたかく積まれた土の山である。 これだけの量があれば、山を固めてそれをくり抜く事で地上の巣を作る事が出来そうだ。 群れのゆっくりがゆっくりできそうな土の山に見惚れている間に、先頭にいたまりさとれいむは巣の前に着くと中に向かって叫んだ。 「「ゆっくりできるごはんだよ!!」」 「むきゅ、そのなかなのね!! みんなゆっくりとりかえしてね!!」 「「「「ゆゆ~!!」」」」 まりさとれいむの様子から巣の中に持って行かれたご飯があるものとぱちゅりーは判断して、群れのゆっくりに号令を掛けた。 その声に反応のしてゆっくり達が列になってぞろぞろと巣の中に入っていった。 これだけの土を掘り返した巣だ。中はきっととてもゆっくりできる空間になっているだろう。ぱちゅりーは巣の外から中の様子を予想した。 どんどん群れのゆっくりが入っていくがまだその流れは止まりそうにない。 二十はいた大人のゆっくりが巣の中に入っていた。それだけの数が入っても窮屈そうな声が聞こえてこない辺り、中の広さは予想以上なのだろう。 ぱちゅりーは巣の住人と一緒に巣の外で群れのゆっくりが出てくるのを待っていた。 しかしいくら待っても中に入っていったゆっくりが出てくる様子はない。 いくら広いと言ってもご飯の匂いを嗅ぎつけて食物庫に入り、ご飯を口に入れて出てくるくらいならそれほど時間はかからないはずだ。 「おかしいわね。ゆっくりしてないででてきてね!!」 ぱちゅりーは痺れを切らして自らその巣の中へと入っていった。 それほど広くない入り口付近のトンネルをどんどん奧に入っていくと急に柔らかい地面の部屋が現れた。 その空洞は部屋と呼ぶにはそれほど広くなく大人三匹が入れば窮屈になる部屋だ。 不思議なのはその狭さなのに群れのゆっくりはどこにもいないのだ。 「むきゅー、みんなはどこかしら。むぎゃ!!」それがぱちゅりーの最期だった。 突然部屋の天井が下がってきてぱちゅりーを押しつぶした。 すると天井は再び上がり、また下がってくる。そのうちぱちゅりーだったものは部屋の奥へと消えていき、群れのゆっくりと合流した。 いずれも完全に潰された形ではあったが。 「れいむ、あのむれのこどもたちをここにゆっくりつれてきてね。まりさはすをひろげるよ……」 「ゆゆっ、わかったよ……」 肉体的にも精神的にも疲れ切った二匹のゆっくりは一秒の時間も惜しいとばかりにすぐに動き始める。 自分達の子供をゆっくりさせるためだけの親と成り果てたゆっくり達の姿である。 結局自分の子供の異変に疑問を持つのは最後まで無かった。 むしろ自分達の不甲斐なさを呪うほど子供に傾倒してしまった。 自分達がゆっくりであるためには大喰らいの子供をゆっくりさせてやらなければならない。 もし出来なければ自分達はゆっくりできないのだ。 やはりゆっくりという生物はゆっくりできないようにできているようだ。 どこかで子供を見捨てれば別のとてもゆっくりできたゆん生があったのかも知れない。 しかしもしの世界は実現しない限りあり得ない話であったのだ。 そんなゆん生はこの両親にはこれからもなく、忙しなくご飯やときにはゆっくりをかき集める日々が死ぬまで続くのだ。 加工場の男は不幸な二匹が死に絶えるのを見届け、野生に放したサンプルに挨拶をした。もちろん巣の中に向かってお互いの姿は見えないままでだ。 「れいむ、ゆっくりしていってね」 「ゆっくりしていってね!!」 巣の中からはれいむの重低音が響く声が聞こえてきた。この声はコンポストゆっくりが太りきったときの特徴でもある。 「そんなことよりもごはんちょうだいね!! まだしあわせーできないよ!!」 巣の中からご飯を求める声が聞こえてくる。 きっとこいつも最期までご飯を求め続けた事になるのだろうと思う。 幸せを知らぬまま死ねるのは不幸も知らないという意味で幸せなのかも知れない。 男は持参していたドスパークに用いられるキノコを巣の前に一山置き、中のコンポストれいむに話しかけた。 「巣の前にキノコを置いたから食べるといいよ」 「ゆっくりたべるよ!!」 その瞬間巣の中から大蛇のようなれいむの舌が伸びてきてキノコをかっさらっていった。 その様子を見届けると男はその巣を後にした。 男が森を後にした頃、木々を揺らす地響きと共に巣の中から黒い煙が吹き出した。 あとがき カッコウの托卵っぽいのをテーマに書いてみました。 自分より体の小さな親に育てられるカッコウの写真を思い浮かべて貰えると丁度そんな感じかも。 初期のありすが托卵で増えるという設定は今ならかなり面白そうな気がする。 コンポストれいむの成長と共に移動が困難になり、巣を拡張することで肥大による圧迫を防いだそうです。 巣の中にまりさ達が入るときは親であると叫びながら入っていったそうな。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/786.html
書きたかった事 親は子を見限れるのか でぶれいむ。ぶよぶよ 注意点 口の中いっぱいに食べたら一日分の食事くらいの設定です 作者 チェンマガツ 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!」」」」 うららかな陽気に誘われてまりさとれいむ、そしてその子供達いずれもれいむ種の四匹が背の低い草が生い茂る原っぱで思い思いにくつろいでいる。 両親は子供達が遠くに行かないよう見守り、子供達は四匹仲良くかけっこや押し合いを興じている。 今年の冬も無事越す事ができ、順調にご飯も集まったことから早めの子作りをして番は群れのゆっくり達よりいち早く幸せそうな日々を送っている。 れいむが子供達を呼ぶとその小さな体で一生懸命に跳ねてくる。 そよそよと撫でるように静かに吹く風やその大きさの割にのっそりと動く雲のおかげでここはとてもゆっくりできる。 そして番と子供達は寄り添って昼寝を始める。 天高く昇った太陽が体を温めてぽかぽかと気持ちよく、日光はまるで餡子にまで染み渡るようだ。 そんなゆっくり達の平穏を破る者が現れた。 片手に鞄を持った人間だ。わざわざゆっくりがいる森の奧までハイキングをしてくるような変わった男である。 「ゆっくりしていってね!!」 無防備に眠っているゆっくりの家族に向かって男は挨拶する。 すると眠そうな目をしながら律儀に挨拶を返してきた。 「「ゆっくりしていってね!!」」「「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!」」」」 「おにいさん、ここはまりさたちのゆっくりぷれいすだからでていってね!!」 「まあそんな事言わずにここでゆっくりさせてくれよ」 「れいむたちはねむねむなんだよ? そんなこともわからないの?」 「せっかく君たちに美味しい食べ物を持ってきてやったんだがいらないのかい?」 男のその言葉に反応したのは子供達だ。今は睡眠欲よりも食欲が優先される時期なのだろう。 男の足下まで跳ねてきて、我先にとぴょこぴょこと垂直に飛び上がる。 「しょれってゆっきゅりできりゅ?」 「ああできるとも」 「れいみゅにいっぱいちょうらいね!!」 「れいみゅも!! れいみゅも!!」 「はいはい順番にね。お前達はいらないのかい?」男は番であるまりさとれいむにも呼びかける。 「ゆゆっ!! れいむたちにもちょうだいね!!」 「よしよし」 どうやら家族全員が男からのご飯に興味をもったようである。 男は手持ちの鞄から大きいおにぎりを一つ取り出しゆっくり達の背後に向かって放り投げた。 すると男の手を離れ放物線を描くおにぎりを家族全員が目で追う。 そしてゆっくり達は一目散に駆けだした。 おにぎりに一番近い位置にいるのは親であるまりさとれいむであり、あっという間におにぎりに食らいついていた。 それに遅れたのは子供達である。男の足下にいたうえ、親よりも移動速度も遅いのだ。 急いで跳ねていくがきっと辿り着いた頃には無くなっているだろう。 「にゃんでにゃげたのー!!」 「ゆえーん、いじわるしないでにぇ!!」 男に悪態を付きながら必死に跳ねていった。 そのうちの一匹の赤れいむが出遅れた。 男の足下で跳ねていて丁度着地してグニャっと変形しているときに男がおにぎりを投げた赤ゆっくりだ。 姉妹達の様子からようやくご飯が遠くにあることを知って、泣きながら後を追い始めたが完全に出遅れていた。 男はその赤れいむを見逃さなかった。 素早く背後から捕まえては叫ばれないように口に粘着テープで蓋をする。 さらに後ろ髪のリボンともみあげの飾りを奪って鞄の中から透明な箱を取りだしてそれにれいむを放り込んだ。 次に男が取り出したのは別の透明の箱でその中には飾りのない同じ大きさの赤れいむがいた。 そのれいむにこれまた素早く先程奪った飾りを取り付け、怪我をしないようそっとご飯の近くに投げた。 もちろんこの間の男の行動を家族のどのゆっくりも見ていなかった。それほど男の与えたご飯に注視していた。 そして男は静かにその場を去った。親であるれいむとまりさは自分の子供の中身がすり替わった異変に気が付くだろうか、いや気が付かない。 飾りで個体識別をするゆっくりにとってもはや本体は付属品なのだ。 まるでおまけ付きお菓子のような存在である。 余談はさておきゆっくりの家族の様子を見てみよう。 「うっめ、めっちゃうっめ」 男の投げたたった一個のおにぎりを親まりさと親れいむは二匹で食べ終えてしまった。 「おかーしゃん、おにいしゃんのごはんは?」 「ゆあああ、おいしくてぜんぶたべちゃったああああ」 「どおじでわけてくれにゃいのぉぉぉ」 「おかーしゃんのばきゃぁぁぁぁ」 「ごめ゛んね゛えええええええ」 泣き崩れて情けない表情の親子の元に男によって中身の変えられた赤れいむが近づいてきた。 「おなかへっちゃからごはんちょうらいね!!」 「ゆう?」親まりさは声のトーンが少し低いその赤れいむを少し不審に思った。 こんな声の子供がいたっけ。でも姿は間違いなくまりさの子供だし……。 だがそれ以上まりさは深く考えない。 「みんなおうちにかえってごはんたべようね!!」 「「「「ゆゆ~ん」」」」 親まりさは自分の気持ちを一旦押し込めて子供達のご飯を与える事を先決した。 どうせ気のせいだろう。よく思い出せば前からこんな感じだったさと何とも楽観的に考えながら家族仲良く帰宅したのだった。 「こんにゃのじゃたりないよ!! もっちょもってきてにぇ!!」 「おちびちゃんちょっとたべすぎだよ……」 親達が保管していたご飯を子供達に配り、皆で食べ終えさらに一匹だけおかわりをした直後の赤れいむの台詞である。 残り三匹の赤れいむはと言えば、お腹いっぱいで丸々としたその姿のせいかころころと巣の中を転がり回っている。 しかし残り一匹の様子がどうもおかしいのだ。 この一匹は親まりさが昼間の原っぱで異変を感じた一匹だったが、どこがおかしいのかわからないでいる。 「ゆゆっ……、しかたないからもうすこしもってくるね」 そう言って親れいむは食物庫に入っていく。食べ物の保管量に関しては申し分無いのでなんら問題ないが、今までに無い事態に少し戸惑っていた。 「れいむはそだちざかりなんだね!!」 親まりさはむしろそれを喜ぶ事にした。そうだ自分達が子供の頃もこれくらい食べたものだ。 いつも親の手を煩わしていた気もする。 そう思いこむ事にした。そうして問題を先延ばしにしてしまった。 「さあおちびちゃん、ゆっくりたべてね!!」 「はふはふ、むしゃむしゃ、がつがつ……」 「いっぱいたべてゆっくりおおきくなってね!!」 気持ちいいの食べっぷりに両親の頬は緩んだが、しかしそれを豹変させる台詞を赤れいむは吐く。 「まだしあわしぇーできにゃいよ!! もっちょちょうだいにぇ!!」 「「ゆ゛ゆ゛っ!!」」 結局その後普段の五倍の量を食べて赤れいむは渋々満足した。 あれほど食べたのにかかわらず体型が変わらないのが不思議なくらいだ。大食いの赤れいむの横で眠る姉妹はあんなにも丸々しているのに……。 そこには両親は気が付いていない要素があった。この赤れいむのサイズが一回り大きくなっていた事だ。 たった一回の食事で急激な成長をしたことになる。 中身の餡子が増えただけでは表皮が追いつかず破裂しかねないが、この赤れいむはその特異的な柔軟な皮のおかげで形を保っていた。 ようやく眠りについた赤れいむを見つめながら親まりさと親れいむは安堵のため息をつく。 しかしその安堵もその日の晩のご飯の時に打ち砕かれた。 再び大量のご飯を要求する一匹の赤れいむによりあれほど蓄えていた食料も残りわずかになってしまった。 「このちびちゃんはごはんをたべすぎだよ……」 「ゆゆっ……。まりさががんばってごはんをあつめるからだいじょうぶだよ!!」 就寝前に両親が一匹の赤れいむについての話をした。 ご飯を食べ過ぎる本人ももちろん心配だが、明日も明後日もこれから先ずっとこのペースで食べ続けられると家族全員のご飯が無くなってしまう心配があった。 翌朝、親まりさと親れいむが目覚めるといつもの挨拶を交わし合う。 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!」」」 あれ?とまりさとれいむはどちらともなく思った。 そしてもう一度、今度は少し大きめの声で挨拶をする。 「「ゆっくりしていってね!!!!」」 「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!!!」」」 まりさとれいむは巣の中をよくよく見回した。 そこにいるのは赤れいむが三匹だ。たしか自分達の子供はもう少し多かったような気がするのだが。 「おかーしゃんどうしちゃの?」 二度にわたる挨拶に赤れいむの一匹は不思議そうな顔をしている。 もう一匹は未だ眠そうな顔を、そして残りの一匹は朝からとても元気である。 「おなかへっちゃからごはんちょうだいね!!」 「そうだね、ごはんにしようね!!」 「れいむたちはゆっくりまっててね!!」 自分達の子供が一人減っている事に気が付かない親まりさと親れいむ。 ご飯の催促を受けてまりさが単身朝ご飯の調達に向かい、れいむは子供達と歌を歌ったり頬擦りをしながらその帰りを今か今かと待つ事にした。 所変わってここは町の加工場、ゆっくりたちの阿鼻叫喚に包まれるまさにゆっくり地獄と呼べる空間に冒頭に出てきた男が勤めていた。 男が勤務する部署は廃棄物処理の工程に携わっていた。 ゆっくり食品の製造過程においていくつか発生する商品適応外のものを処理することがメインで、その他にも繁殖、飼育中に出てくる残飯、発育不良品、死体等の処理も行うのだ。 この工場ではそういった物を一元化してゆっくりに処理させる工程にある方法を取っていた。 いわゆるゆっくりコンポストである。 コンポスト内には工場稼働中は常にゆっくりの餌となるものが流し込まれていった。 一般家庭や街角に設置してあるコンポストとは比にならないほどの処理効率を求められた内部のゆっくり達は、世代を経るたびにそこで生き残る術を身につけていった。 コンポスト設置当初は何度もゆっくり達は処理しきれない餌にまみれて死んでいき、工場全体の動きを停止せざるを得ない状況に陥らせた。 そこで男達が投入したのが表皮の伸縮性の高いゆっくりだった。 ゆっくりの食欲が完全に満たされるのは自分の体がパンパンになりこれ以上ご飯が食べられなくなったときだ。 つまりその状況までいかなければいくらでも食べ続ける事ができた。 そして通称コンポストゆっくりと呼ばれる大喰いのゆっくりが誕生した。 表皮が厚くさらにとても伸びるコンポストゆっくりはコンポスト内を溢れかえらすこともなく、その無限の食欲で廃棄物処理を行っていった。 このゆっくりは大喰いもそうだがやたらと成長が早いこともその特徴だった。 沢山食べるから早いのか、もっと沢山食べるために早く成長するのかは定かではない。 またコンポストを空にするのが彼らの目的であるためうんうんしーしーもきわめて少ない。 その体皮も手伝って体内の老廃物はすべて溜め込んでいるようだった。 結果コンポスト内では水ぶくれ気味で健康的なゆっくりからすればかなり太った体型となっていた。 男はこのコンポストゆっくりを興味本位で野に放ち、野生での適応は可能かを試してみる実験としてまりさとれいむの子供をすり替えたのだ。 そしてそのコンポストゆっくりの赤れいむはまさに猛威を振るっていた。 朝のうちから狩りに出かけた親まりさが昼ご飯も兼ねてかなりの量のご飯を取ってきていた。 昨日の昼ご飯、晩ご飯のことを考えれば二回の食事はこれくらいあれば食べ盛りの赤れいむも満足するだろう、そう思った結果である。 一般的なまりさからしてもとても優秀なご飯回収量といえる。 しかし、その大量のご飯はあっという間にコンポストれいむの食欲によって消費されることになる。 「むーしゃ、むーしゃ、ふまんぞくー」 「「なんでええええええ!!」」 ゆうに一回の食事量の十倍は超えている、それも成体ゆっくり換算でだ。 見てみるとコンポストれいむの体高はすでに子ゆっくり並の大きさで、球体というより円柱に近い形をしている。姉妹と比べるとその異様さは目立つ。 たった一回の食事でここまで急成長し、さらにデブ体型である。コンポストれいむ恐るべし。 親まりさとれいむは戦慄した。このままでは親の威厳が保てないと感じた。 どこのゆっくりの世界に子供に満足にご飯を与えてやることのできないゆっくりがいるのかと。 子供をゆっくりさせてやれない親はゆっくりできないゆっくりだ。 なんとしてもゆっくりさせてやらねばならないというような変な責任感の元に朝ご飯が終わると両親揃って赤ゆっくりを巣に置いて狩りに出かけてしまった。 しかしここで妙な気合いを出すのは無駄な行為であるとはまりさとれいむは知る由もない。 それはいくらご飯を持ってきてもコンポストれいむに満足という言葉はないからだ。 太陽が空高く昇りきった頃、親まりさとれいむはその帽子と口に入るだけご飯を入れて自分達の巣に帰ってきた。 巣で待っていたのは同い年とは思えないほど体格差のあるれいむの姉妹が二匹待っていた。 「ゆゆゆっ!! れいむはどこにいったの!?」 親れいむは子供が一匹いなくなっていると気が付いた。この狭い巣の中では隠れようもないのでやはりいないのだ。 「しらにゃいよ!! おきたらいにゃかったよ!!」 「ゆっくりはやくごはんちょうだいね!!」 「もしかしておそとにでていっちゃったの!?」 「どおじですでまっでないのおおおお!!」 しかし赤れいむが巣から出た形跡は全くなかった。なぜなら巣に戻ったときに巣の入り口の偽装は破られてはいなかったからだ。 「ゆっくりはやくごはんちょうだいね!!」 「「れいむはすこししずかにしてね!!」」 両親はしつこく催促してくる赤れいむにご飯を与えて黙らせる。 その間に巣の周辺の捜索していなくなった赤れいむの行方を追った。 しかしどうしても発見できなかった。赤れいむの移動速度なぞたかが知れている。 ご飯を探している時間がかなりあったとしてもそれほど遠くまでいけないのだ。 それでも見つからないというのは捕食種に食べられたと考えるのが妥当だった。 「ゆあーん、おちびちゃんがだべられだあああああ」 「れいむしっかりするんだぜ、のこったれいむたちをゆっくりそだてればいいんだぜ」 「ばでぃざ、ごめんね゛ええええええ」 「れいむがあやまることじゃないんだぜ。ゆっくりすにもどるんだぜ」 子供が一匹いなくなったことを後悔するれいむとそれを何とかなだめようとするまりさ。すでにいなくなったのが二匹目であることはわかっていないようだが。 そんな二匹が巣に戻ると今度は驚く事態が発生していた。 「もっとごはんちょうだいね!!」 「「ゆがーん!!」」 あれほど集めたご飯がもうすでに消えていた。朝与えた量の二倍はあったのに。 さらに巣の中にあったなけなしの蓄えもすっかり消えていた。 丸々とした赤れいむとほとんど成体サイズに近い赤れいむの対比も両親を驚かせる。 たった二日ばかりでもうすでに自分達と同じ大きさまで育ってしまった。 しかし心はまだ赤れいむのそれである。 「「しゅーりしゅーり」」 隣にいる普通の赤れいむとはまるで親子のようなご飯後の頬擦りをする。 力加減を誤れば赤れいむが潰されそうな勢いで頬擦りするので両親は内心ハラハラしてそれを見守っていた。 そのうち昼寝の時間なのか二匹は寄り添って寝息を立て始めた。 それを確認するとまりさとれいむは巣を飛び出した。 この時間を見計らって両親は再び大量のご飯を用意しなければならないのだ。 両親が巣から出たあとしばらくするとコンポストれいむは目を覚ました。 その空腹から満足な睡眠をとることはできずたびたび起きてしまうのだ。 そしてその寝ぼけ眼に入ってくるのは美味しそうなご飯だ。 とても丸々として美味しそうなご飯。 その餡子に刻まれた記憶では丸々としたゆっくりはご飯でしかないのだ。 もはやその体格差から小細工など必要ないから姉と呼んでいた赤れいむを豪快に一飲みにしてしまった。 こうしてこのれいむは三匹の姉妹を寝ているときに襲っては食料にしていた。 両親が気が付かぬよう別段に気をつけていたということはないがたまたま見つからなかった、それだけのことである。 しかしそれはどこか自分が生き延びていくために行ったという自然な光景にも見えた。 自分に親が集めてきたご飯を集中させることが目的であるようなそんな光景だ。 とある群れのリーダーであるゆっくりぱちゅりーは最近起こっていたご飯泥棒をついに捕獲することに成功した。 自分達の群れには属さないが群れの近くで住んでいる薄汚いまりさとれいむの番だった。 大量のご飯を盗んでいるはずなのに本人達は痩せ細っているのが不可解だが盗みの現場を目撃した限りやはり犯人なのだろう。 「むきゅー、いままでもっていったごはんをかえしてもらうわ!!」 「ゆっくりりかいしたよ……」 「まりさたちについてくるんだぜ……」 ぱちゅりーが泥棒ゆっくり達にご飯の返還を要求すると二匹はそれにすんなりと応じた。 自分達の非を認める潔さがあるのに盗みを働いたことがなおさらぱちゅりーの理解の範疇を超えていた。 森の中を二匹を先頭に多くのゆっくりがぞろぞろと這っている。 自分達のご飯を返してもらうため二匹の巣に向かっているのだ。 かなりの量が巣に溜め込まれているとみて群れから成体ゆっくりのほとんどが駆り出された。 二匹の巣の前に到着すると不思議な物が目に入ってくる。 巣の前にうずたかく積まれた土の山である。 これだけの量があれば、山を固めてそれをくり抜く事で地上の巣を作る事が出来そうだ。 群れのゆっくりがゆっくりできそうな土の山に見惚れている間に、先頭にいたまりさとれいむは巣の前に着くと中に向かって叫んだ。 「「ゆっくりできるごはんだよ!!」」 「むきゅ、そのなかなのね!! みんなゆっくりとりかえしてね!!」 「「「「ゆゆ~!!」」」」 まりさとれいむの様子から巣の中に持って行かれたご飯があるものとぱちゅりーは判断して、群れのゆっくりに号令を掛けた。 その声に反応のしてゆっくり達が列になってぞろぞろと巣の中に入っていった。 これだけの土を掘り返した巣だ。中はきっととてもゆっくりできる空間になっているだろう。ぱちゅりーは巣の外から中の様子を予想した。 どんどん群れのゆっくりが入っていくがまだその流れは止まりそうにない。 二十はいた大人のゆっくりが巣の中に入っていた。それだけの数が入っても窮屈そうな声が聞こえてこない辺り、中の広さは予想以上なのだろう。 ぱちゅりーは巣の住人と一緒に巣の外で群れのゆっくりが出てくるのを待っていた。 しかしいくら待っても中に入っていったゆっくりが出てくる様子はない。 いくら広いと言ってもご飯の匂いを嗅ぎつけて食物庫に入り、ご飯を口に入れて出てくるくらいならそれほど時間はかからないはずだ。 「おかしいわね。ゆっくりしてないででてきてね!!」 ぱちゅりーは痺れを切らして自らその巣の中へと入っていった。 それほど広くない入り口付近のトンネルをどんどん奧に入っていくと急に柔らかい地面の部屋が現れた。 その空洞は部屋と呼ぶにはそれほど広くなく大人三匹が入れば窮屈になる部屋だ。 不思議なのはその狭さなのに群れのゆっくりはどこにもいないのだ。 「むきゅー、みんなはどこかしら。むぎゃ!!」それがぱちゅりーの最期だった。 突然部屋の天井が下がってきてぱちゅりーを押しつぶした。 すると天井は再び上がり、また下がってくる。そのうちぱちゅりーだったものは部屋の奥へと消えていき、群れのゆっくりと合流した。 いずれも完全に潰された形ではあったが。 「れいむ、あのむれのこどもたちをここにゆっくりつれてきてね。まりさはすをひろげるよ……」 「ゆゆっ、わかったよ……」 肉体的にも精神的にも疲れ切った二匹のゆっくりは一秒の時間も惜しいとばかりにすぐに動き始める。 自分達の子供をゆっくりさせるためだけの親と成り果てたゆっくり達の姿である。 結局自分の子供の異変に疑問を持つのは最後まで無かった。 むしろ自分達の不甲斐なさを呪うほど子供に傾倒してしまった。 自分達がゆっくりであるためには大喰らいの子供をゆっくりさせてやらなければならない。 もし出来なければ自分達はゆっくりできないのだ。 やはりゆっくりという生物はゆっくりできないようにできているようだ。 どこかで子供を見捨てれば別のとてもゆっくりできたゆん生があったのかも知れない。 しかしもしの世界は実現しない限りあり得ない話であったのだ。 そんなゆん生はこの両親にはこれからもなく、忙しなくご飯やときにはゆっくりをかき集める日々が死ぬまで続くのだ。 加工場の男は不幸な二匹が死に絶えるのを見届け、野生に放したサンプルに挨拶をした。もちろん巣の中に向かってお互いの姿は見えないままでだ。 「れいむ、ゆっくりしていってね」 「ゆっくりしていってね!!」 巣の中からはれいむの重低音が響く声が聞こえてきた。この声はコンポストゆっくりが太りきったときの特徴でもある。 「そんなことよりもごはんちょうだいね!! まだしあわせーできないよ!!」 巣の中からご飯を求める声が聞こえてくる。 きっとこいつも最期までご飯を求め続けた事になるのだろうと思う。 幸せを知らぬまま死ねるのは不幸も知らないという意味で幸せなのかも知れない。 男は持参していたドスパークに用いられるキノコを巣の前に一山置き、中のコンポストれいむに話しかけた。 「巣の前にキノコを置いたから食べるといいよ」 「ゆっくりたべるよ!!」 その瞬間巣の中から大蛇のようなれいむの舌が伸びてきてキノコをかっさらっていった。 その様子を見届けると男はその巣を後にした。 男が森を後にした頃、木々を揺らす地響きと共に巣の中から黒い煙が吹き出した。 あとがき カッコウの托卵っぽいのをテーマに書いてみました。 自分より体の小さな親に育てられるカッコウの写真を思い浮かべて貰えると丁度そんな感じかも。 初期のありすが托卵で増えるという設定は今ならかなり面白そうな気がする。 コンポストれいむの成長と共に移動が困難になり、巣を拡張することで肥大による圧迫を防いだそうです。 巣の中にまりさ達が入るときは親であると叫びながら入っていったそうな。
https://w.atwiki.jp/hutaba_ranking/pages/148.html
※ある意味ゲス大勝利 ※おれ、希少種好きなんだな、これからもどんどん優遇するよ! 人里から離れた所にある森のゆっくりの群れ。 開けた場所にある群れの広場では、れいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん、み ょんと言ったゆっくりたちが思い思いにゆっくりしている。 朝から好きにゆっくりし続けていたが、やがて昼頃になると、子供たちが空腹を訴えて 騒ぎ出した。 「おきゃあしゃん、おにゃかすいちゃよ」 「ゆん! れいみゅも!」 「まりしゃも!」 「ゆん! それじゃ長のおうちに行こうね!」 ぞろぞろとゆっくりたちは長のおうちの洞窟へと向かう。天然の洞窟を利用している長 のおうちは、いざとなった時に避難する場所でもあり、多少窮屈なのに我慢すれば、群れ のもの全員を収容できる広大さであった。 「むきゅ、それじゃ持って行きなさい」 長のぱちゅりーは、洞窟の奥の貯蔵庫にあるごはんを分配した。 「わーい、おいちちょーだにぇ!」 「おうちにかえってむーしゃむーしゃしようね」 「むーちゃむーちゃしたらおひるねすりゅよ!」 「れいみゅたち、とってもゆっくちちてるね! 意気揚々と引き上げようとするゆっくりたちだったが…… 「ゆっ!」 一匹の子まりさが、何かを見つけて声を上げた。 「くじゅのれっとーちゅがいりゅよ!」 そう言った子まりさの視線の先には、一匹の子ゆっくりがいた。 「ゆ?」 なにが起きたのかよくわかっていないらしいその子ゆっくりは、 「ゆっくちちていっちぇね!」 とお決まりの挨拶をした。 「ゆ?」 「ゆゆ!」 子まりさの両側から子れいむと子ありすがやってきて、その子ゆっくりを見やる。 子まりさも含めて三匹とも、今の挨拶を聞いているはずなのに何も言わない。これだけ で異常事態である。普通ならば、この三匹も同じ挨拶を返すはずなのだ。 「ゆぅ? ゆっくちちていっちぇね!」 不思議そうにしたその子ゆっくりは、もう一度元気に挨拶した。 それに返って来たのは、汚いものを見るような子れいむと子ありすの目であり、同じ目 をした子まりさの体当たりであった。 「ゆぴ! い、いぢゃいぃぃぃぃ!」 「くじゅのれっとーちゅがあいしゃつしにゃいでにぇ!」 「むきゅ! やめなさい!」 騒ぎを聞きつけて長ぱちゅりーがやってくる。 「ゆぅ……おさ」 子まりさは、不満そうに後ろに下がった。 「れっとーちゅはきやすくあいさつしにゃいでにぇ!」 「いにゃきゃもののれっとーちゅめ!」 「れいみゅたちみたいなきちゅとはみぶんがちぎゃうんらよ!」 三匹は口々に罵倒しつつ帰っていく。 「ゆ……ゆぴぃ……お、おしゃぁ」 泣いていた子ゆっくりは、三匹が去り、そこにいるのが長ぱちゅりーだけと知るとそれ に縋り付いた。 「まったく、あの子たちは……よしよし、泣くのは止めなさい」 「ゆぅ……しゃなえは……れっとーちゅにゃんだにぇ」 子ゆっくりは、さなえ種であった。 子さなえは、どことなく諦観を面に表していた。 これまで教育されて頭では理解していたことを体に刻み込まれて嫌でも理解させられて いた。 「むきゅぅ……確かにそうよ……でも、だからと言って暴力を振るうことはぱちゅは許し ていないわ。さっきみたいにされたら言いなさい」 「ゆぅぅぅ、おしゃぁぁぁ!」 子さなえが長ぱちゅりーの言葉に感泣する。 「ゆぴゃあああん、おしゃあ!」 「ゆっ、ゆっ、おしゃ、ありがちょう」 「ゆぅぅぅ、ゆうきゃたちはれっとーちゅだけど、やさちいおしゃがいてよかっちゃわね」 そして、一連の出来事を物陰から見ていた子ゆっくりたちも同様であった。 かなこ種、すわこ種、ゆうか種――他にもらん種、すいか種、めーりん種の子供たちが いた。 皆、れっとーちゅ、すなわち劣等種であった。数は大人が十匹、子供が二十匹ほどだ。 この群れは、厳しい身分制があり、劣等種は、先ほどの子れいむが言っていた「きちゅ」 すなわち貴種の下に置かれている。 貴種はれいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん、みょん種である。こちらは大人 が百匹、子供が二百匹以上といったところか。 あらゆる点で貴種に劣ってゆっくりしていない劣等種は、毎日狩りをしてその成果を貴 種に献上することでなんとか群れにいることを許されていた。貴種の方が数が多いのだか ら、それは大変な労働であった。 今現在、大人の劣等種たちは狩りに出かけているところであり、その間、子供たちを長 が預かっているのである。 先ほど貴種たちが労せず持っていった食べ物も、全て劣等種が集めてきたものだ。 相当ゆっくりできていない劣等種たちだが、生まれた頃から自分たちは貴種よりも遙か に劣っていると叩き込まれているために反乱に踏み切ることなどできなかった。 そして、先のやり取りを見てもわかるように、長のぱちゅりーはかなり穏健な対処をと っており、どのようにゆっくりできなく劣等なものたちでも同じ群れの仲間であり、また 一生懸命劣った体で狩りをして食料を集めているのだからと、馬鹿するのはともかく物理 的な暴力の行使は許さなかった。 そのため、劣等種たちは重労働の狩りに耐え、貴種からの蔑みにさえ耐えれば、子供を 産むことも許されたし、夜の一時――むろん早朝から狩りに行くのだから早く眠るために 僅かな一時ではあったが、家族でゆっくりできぬこともなかった。 反抗できずとも、群れからの逃亡ならば可能であるのに、それをしないのもそのためだ。 ここから逃げ出しても、群れの外もまた劣等種である自分たちへの敵意に満ちているで あろうと、思い込んでいた。 自分たちが逆らっても勝てっこないという諦観――。 そして、我慢していれば殺されたりはしないという希望――。 その二つが天秤の両端に乗って、バランスをとっていた。 「ゆぅぅぅ、おしゃがじゃまちなければ、れっとーちゅをせいっしゃいしてやっちゃのに ぃ!」 「ゆゆん、にゃんでおしゃはあんなやちゅらにやちゃちくすりゅんだろうにぇ?」 先ほど、子さなえをいたぶろうとして長に止められた子まりさたちは不平たらたらであ った。 貴種は貴種で、自分たちがいかに優れていて、いかにゆっくりしているかを教えられて 育っているので劣等種のことは当たり前に見下している。 粗暴なものは、劣等種へ暴力を振るいたがるが、それを許さぬ長に対して不満を持って いた。 「ねえ、どうちちぇ?」 子まりさは、不満と疑問をストレートに親にぶつけた。 「ゆぅ、まりさたちも長はやさしすぎだと思ってるけど……この群れができたのは長のお かげだからね……」 親まりさはそう答えた。 大人のゆっくりたちも、長が劣等種を(貴種に言わせると)優遇しているのは疑問に思 っているのだが、そもそもこの群れを作った創成期のゆっくり唯一匹の生き残りがあの長 ぱちゅりーなのである。いわばその功績に対する尊敬というか気後れというかが大人たち が表立って長に不満を表明することを躊躇わせていた。 「むきゅ、安心しなさい」 そう声をかけてきたのはぱちゅりーだった。 このぱちゅりー、長ぱちゅりーの孫にあたる。 両親は既に死んでいて、長の唯一の身内であった。長と同じぱちゅりー種ということも あって頭がよく、次の長になるだろうと言われていた。 「ぱちゅが長になったら、全部よくなるわ」 と、言ったこの孫ぱちゅりー、もう自分は長になるのは決まっていると言わんばかりで あった。 「おばあちゃんは……あんまり言いたくないけどもう長くないわ。もう少しの辛抱よ。ぱ ちゅが長になったら、貴種は貴種らしく劣等種は劣等種らしくするわ」 と、あんまり言いたくないようには見えない顔で言った孫ぱちゅりーに、その場にいた 貴種ゆっくりたちの期待の眼差しが注がれる。 孫ぱちゅりーは、それを心地よさそうに受けていた。 ここ最近、孫ぱちゅりーはこうやって今の長が劣等種に対して肩入れし過ぎると不満を もらすものがいると、このように自分が長になったらよくなると言って回っていた。 いわば、次の長の座を確実にするための運動である。 これによって、不満を持っている貴種たちも、差し当たっては暴発せずに我慢していた。 ここにもまた微妙なバランスをたもつ天秤があった。 「ゆっゆっゆっ」 「きょうはたくさんとれたねえ」 「そうだねえ、みんなよくがんばったよ」 陽が落ちる前に、狩りに行っていた大人の劣等種が帰って来た。 その成果を長のおうちの貯蔵庫に運び込む。 「むきゅ、今日はまたがんばったわね、ごくろうさま」 長ぱちゅりーが声をかけると、劣等種たちはとてもゆっくりした笑顔になった。 この群れで、このように暖かい言葉をかけてくれるのは長と、もう一匹ぐらいであった。 その、もう一匹というのが、狩りに付き添っていた一匹のれいむである。 「ゆぅ、なんにもいじょーなしだったよ」 「むきゅ」 長にそう言ったれいむの役目は、劣等種たちの監視である。と、言っても、実際はただ 単に付き添っているだけである。 貯蔵庫に食べ物をおさめると、劣等種たちは長に預けていた子供たちを連れておうちに 帰る。 入り口までそれを送りに出たれいむは、それを見ている貴種たちを見た。ひーそひーそ と内緒話をしているが、聞こえずとも何を言っているかはわかる。 劣等種と、それに劣らぬ劣等ぶりなれいむを嘲笑っているのだろう。 れいむは、貴種たちにダメれいむと呼ばれていた。 はっきりいってそう言われるだけのことはあり、れいむは何をやってもダメだった。 かけっこ、おうた、けんか、何をやっても同世代のものたちの中で最低だった。 いつしか、あいつは姿形こそれいむだが中身は劣等種だと言われるようになった。その ことを特に苦々しく思っていたのが同じれいむ種たちで、自分たちの面汚しだとばかりに もうこいつの扱いを劣等種と同じにしろと言い出したものだ。 長が、れいむに身の回りの世話を頼んだのはそんな時だ。 貴種は、労働をしない。 長の世話を労働と呼ぶかどうかについては議論の余地はあろうが、少なくとも劣等種た ちに課された狩りに比べれば軽労働であろう。 それとともに、劣等種の監視という名目で狩りに同行させることにした。 とりあえずそれで、ダメれいむを完全に劣等種扱いせよとの声はおさまった。もちろん 劣等種同然のダメれいむという評価は定着してしまったが。 れいむは、長のその一連の処置を感謝していた。 今ではれいむは狩りに行くのが楽しみになっていた。 狩りに行けば、そこには自分をダメれいむと蔑む貴種はいない。 散々自分が蔑まれたれいむは劣等種たちにも優しく接していたために、彼らとも仲良く なっていた。 「ゆぅ……」 おうちの奥へとぽよんぽよんと跳ねるれいむの顔色は冴えない。 ここ最近、時々れいむは誰もおらぬところでこのような顔をすることがあった。 「どうしたの?」 突然いないと思っていた長に声をかけられて、れいむは驚いて跳ね上がった。 「ゆ! ゆ! ゆゆ! れ、れいむは別になやんでないよ! 長に聞きたいことなんかな いよ!」 「むきゅきゅ」 長はれいむの様子を見て微笑んでいた。 「む……き……」 だが、次の瞬間、その顔は歪んだ。 「げ……ごほ! ごほっ!」 「ゆゆ! 長!」 れいむが慌てて跳ねよって心配そうにする。 「むきゅ……大丈夫よ……でも、もうそろそろぱちゅも永遠にゆっくりするころね」 「ゆゆぅ、長、そんなこと言わないでね」 れいむは、純粋な悲しさもあったが、長という庇護者を失うことへの恐怖も同時に感じ て表情を暗くした。 次の長は、おそらく長の孫のぱちゅりーだろう。 しかし、こちらは劣等種にも自分にも相当辛くあたってくるであろうことは容易に推測 できた。 「れいむ……」 「ゆん?」 「なにか聞きたいことがあったら、ぱちゅが永遠にゆっくりするまえに聞くのよ。……今 までよくやってくれたれいむだからね、どんな質問にも答えるわよ。……孫にも教えてい ないようなことでも、ね」 「ゆ! ……ゆ、ゆぅ……も、もしどうしても聞きたいことができたら、そうするよ」 「むきゅきゅ」 長は笑顔になった。 先ほどの、慌てるれいむを見て浮かべた微笑が混じり物無しの純度の高いそれであった としたら、その笑顔には、多分に斜にかまえたような色があった。 「ゆっ! ゆっ! ゆゆゆゆっ!」 「ゆぐっ!」 かなこがごろりと地面に転がる。 「ゆん!」 転がしたのはすいかだ。 「さすがだねえ、すいか」 「ふふん、これでようやく勝ち越したよ」 何をやっているかと言えば、お互いに体を押し合って倒す遊びである。これをみんなは スモウと呼んでいた。 すいかは劣等種の中では一番の力持ちだ。 「よーし、それじゃ次は」 「かなこ、こないだのりたーんまっちだよ!」 と踊り出してきたのはすわこだ。 「よし、いっちょもんでやるか」 「まけないよー」 かなことすわこは、仲が良い一方でお互いへの対抗意識も強くことあるごとに張り合っ ている。 みんなが囃し立てる中、二匹は真っ向から激突した。 「ゆぅ……」 れいむも、それを見ていた。 今は、狩りの最中である。と言っても、もうだいぶ成果を上げたので、こうして遊んで いるのである。 監視役という本来の役割からすれば、れいむはこのことを咎めるべきであった。遊んで いる暇があったらもっと狩りを続けろと。 しかし、貴種よりも劣等種に親近感を感じているれいむは、そのようなことは言わなか った。 長は、どうも感付いているらしいのだが、 「……まあ、息抜きのゆっくりは必要ね」 と言って黙認している。 「ゆぅ……」 れいむは、複雑な表情であった。 かなことすわこのスモウは白熱している。 それを見て、れいむの中でどんどんある一つの疑問が大きくなっていくのを止められな い。 なんでもどんな質問にも答える、という長の言葉が何度も何度も思い浮かぶ。 明敏な長のことだ。れいむがどんな疑問を抱いているのかすら知っているのかもしれな い。 「……れいむ」 そんなれいむに声をかけてきたのはらんだ。 このらんは、とあることがあってからそれまで快活だった性格が暗く沈んだものになり、 あまり他のものとも話さなくなった。 そのらんが自ら声をかけてくるのは珍しい。 「かなこもすわこも強いな」 「ゆ?」 「わたしも、まけてないぞ。最近はやってないが、前はよくスモウをした。すいかにも勝 ったことがあるんだぞ」 「ゆ……それは……れいむも見てたよ」 まだ、らんの性格がこうではなかった頃、らんもみんなと一緒になって遊んでいたもの だ。何度かすいかのパワーをいなすようにらんが勝ったのをれいむも見たことがある。 「れいむは、どうかな」 「ゆ?」 「れいむは、わたしや、すいかやかなこやすわことスモウしたら、勝てるかな」 「ゆゆゆゆ!?」 れいむは改めてらんをじっと見る。冷徹な無表情であった。 そこからは蔑みとか挑発しようとかそういった感情は読み取れなかった。 「……勝てないよ……れいむは弱いから」 他の貴種ならば、口が裂けても言わぬことだが、ダメれいむと蔑まれ続けてきたれいむ にとっては、あまり抵抗のある言葉ではなかった。 なにより実際、とてもではないが勝てるとは思えなかった。 すいかやかなこだけではなく、ゆうかやさなえ、めーりん、この場にいる劣等種の誰に も勝てる気がしない。 「貴種で、一番強いのって誰だろうな」 「ゆ? ……それは……たぶん、まりさだよ」 まりさは、腕自慢のものを全て叩きのめした群れ一番の喧嘩自慢だった。れいむも長の 庇護を受ける前はよくいじめられたものだ。 「まりさ……ああ、あいつか」 「ゆぅ」 れいむはドキドキしていた。 らんが、ダメなれいむにならともかく、それ以外の貴種にも平気でぞんざいな口をきい ているからだ。 今のも、あいつ呼ばわりされたことを知られただけでまりさにせいっさいっされるだろ う。 「あのまりさとならどうだろう。どっちが強いと思う?」 「ゆ?」 れいむは卑屈な探るような視線でらんを見る。 まさか、まさか、まさか――。 「れ、れいむにはわからないよ。れいむダメだから、ばかだから」 困った時にいつもやっていたことをれいむはした。 れいむはダメだから、ばかだから、だから、わからない、だから、できない。 そう言えば、みんな納得してくれた。 「もちろんまりさのほうが強いよ、とは言わないんだな」 「ゆゆっ!」 れいむは哀れなぐらいに困惑していた。あの疑問がなければ、そう答えていたはずなの だ。れいむとて、貴種が優れており劣等種は劣っていると教え込まれて育ったのだ。 「れいむを困らせようとしたわけじゃないんだ。すまないな」 らんは、涙目になっているれいむにそう言って離れて行った。 らんも、れいむと同じ疑問を持っているに違いない。 そして、その疑問が確信に変わった時どうなるのか――。 長ぱちゅりーは数日後に生クリームを吐いて昏睡状態になった。 そこからなんとか意識を取り戻したが、もはや死を確信した長は皆を集めてその前で次 の長を誰にすべきかを問うた。 一瞬の間があってから、孫ぱちゅりーを長に推す声が上がり、やがてそれは大きな声と なった。 ちなみに、当然のことながら群れの行く末を決めるこの場に劣等種はいない。 「むきゅ……そう、それじゃあそのようにしましょう」 長ぱちゅりーはそう言って皆を解散させ、孫ぱちゅりーを自室に招いて話をした。 待ちに待った時が来たと孫ぱちゅりーは興奮しつつ帰っていった。 「長……」 れいむは長ぱちゅりーの死を間近にして、決意していた。 そして、それを長も察していた。 「れいむ、なにか聞きたいことがあるんでしょう?」 「……ゆん」 「むきゅ! 劣等種の子供なんか預かるのは嫌よ」 長の死後、新たな長になった孫ぱちゅりーは、とりあえず大人が狩りに行っている間に 劣等種の子供を長のおうちに預かるのを止めた。 今や我が城となった長の住居に劣等種など入れたくなかったのだ。 それに合わせて狩りのノルマも増やされた。 当初、子供たちだけを残していくのに不安を覚えた大人たちは何匹か残ろうとしたのだ が、増大したノルマに対応するためにはそれは無理であった。 そして、数日もしないうちに、留守に残っていた劣等種の子ゆっくりが、貴種の子ゆっ くりに暴行される事態が起きた。 もちろん、親たちは長に対して訴え出たが、劣等種といえども暴力を振るってはいけな いというのは前の長の時代の掟であって、自分が長になったからにはそのような馬鹿げた 掟は廃止だと告げられた。 仕方なく、大人が何匹か残ったが、貴種の子ゆっくりたちは制止する大人たちを嘲笑い ながら劣等種の子たちをいたぶった。制止と言っても少しでも触れたら劣等種の大人が貴 種の子供をいじめた、などと言われるのはわかっていたために懇願するしかなかったのだ。 それまでは満腹とは言わぬものの、それなりの量が支給されていた食料についても新長 は大幅に削減したために、空腹で傷付いた子供たちを前に劣等種たちは途方にくれた。 一度、れいむが改善を掛け合ったが当然のことながら無視された。 そればかりか、その話が群れに伝わるや、とうとうれいむはダメれいむから劣等れいむ と呼ばれることになった。 前の長の頃はこんなことはなかったのに、と嘆く劣等種たちにれいむはかける言葉も無 いといった顔をしていた。 「れいむ」 そのれいむへ声をかけたのは、らんであった。 「長に掛け合ったらしいな……馬鹿なことをする」 「……ゆぅ、でも、あまりにもひどいからね……」 「れいむは、ちぇんが死んだ時に、わたしをなぐさめてくれたな」 「ゆ、そんなこともあったね……」 「わたしは……いやわたしたちは、れいむのことを仲間だと思っているよ。……劣等種に そう思われるのは嫌かな?」 「……そんなことはないよ。れいむも、そう思っているよ」 「そうか」 らんは久しぶりに微かに笑って言った。 「ゆああああああ、おねえざん! おねえざぁぁぁん!」 一匹のさなえが泣いていた。 その前には黒ずんでいるさなえ種の死体がある。 頭から何本もの茎が生えていることから、すっきりのしすぎで死んだのは明らかだ。 泣いているさなえの姉のさなえで、今日は狩りの間に留守番をしていた。 お決まりの貴種の子ゆっくりの襲撃があり、それにやめてやめてと懇願し無視され、そ れでその日は終わらなかった。 子ゆっくりたちが引き上げた後、大人のゆっくりが何匹もやってきて代わる代わる、さ なえが死ぬまで犯したのだ。 その光景を見せ付けられた劣等種の子供たちはむろん見たままを証言したのだが、長と 幹部たちにより「劣等種の証言は信用できない」と断定されて無視された。 姉さなえを犯し殺した貴種たちの、 「さなえから誘ってきた。ほんとうなら劣等種なんかとすっきりしたくないんだけどあま りにもひっしに頼むからかわいそうになってすっきりしてやった。なんどやってももっと もっととせがむのでかわいそうに思って相手してやっていたら死んでしまった。まったく とんだいんらんめすぶただった」 という証言が全面的に採用され、姉さなえの死は事故、それも自ら望んだ自業自得のも のとされてしまった。 長も他の貴種たちも、それでその件は解決したとしてすぐに忘れてしまった。 劣等種をとことん見下していた貴種たちは、その細かな感情の動きなどに気を配ったり はしなかったし、そんな必要もないと思っていた。 奴らは劣等であり、自分たちの方が強い上に数も多いのだ。何かの間違いで反抗してき てもすぐに叩き潰せる。 そして、劣等で根性無しの連中は、見せしめに子供たちを痛めつけてやれば言うことを 聞くはずだ。 その程度の認識であった。 だから、劣等種たちの顔色から何から何までが以前のようではないことに気付いたのは れいむぐらいであった。 さなえは、死んだのだ。 前の長の頃には死ゆっくりなど出なかった。 それが超えてはならない一線であるというような認識は、当然ながら貴種たちには無か った。 今まで、前の長に遠慮していただけで、内心では劣等種など貴種に殺されても当然の存 在なのだと思っていた。 それが、一連の事件とそれに対する貴種の態度で、劣等種たちに刻み込まれた。 「れいむ、頼みがあるんだ」 らんがやってきた。 「ゆ? なに?」 「ほら、あのまりさ、群れで一番強いまりさ」 「ゆ……ああ、あのまりさ」 「まりさを呼び出してくれないか」 「ゆ?」 「実は……」 れいむはらんの話を聞いてまりさの所へ行った。 今や劣等種扱いのれいむであるから、ゴミでも見るかのような目をされたがそれでも一 応はれいむ種なのでなんとか話を聞いてもらえた。これが生粋の劣等種ならば話にもなら なかっただろう。らんも、それを見越してれいむに頼んだのだ。 そして、れいむの話を聞くや、まりさは身を乗り出してれいむに促されるまま、らんが 待っているという群れから少し離れたところへと着いてきた。 「ゆっ、ゆっ、ゆ~っ」 れいむの後ろで上機嫌にまりさは口ずさんでいる。 「ゆっへっへ、劣等種のくせになかなかわかってる奴なのぜ、あのらんのことはそれなり ーにあつかってやってもいいんだぜ」 まりさは、群れでけんかが一番強いことで貴種の中でも威張り散らしており、普通なら ば劣等種の呼び出しになど応じるわけがない。 それに応じたのだから、もちろんまりさがそうせざるを得ないほどの旨味があるのだ。 らんからの申し出は、狩りで得た食べ物の一部を他のものには内緒でまりさに渡すので 劣等種への便宜をはかって欲しい、というものであった。 最初それを聞いた時、まりさは疑わしい目つきでなぜ長に言わないのか、と聞いた。 「正直、長はあてにならないって……みんな、まりさの言うことの方を聞きそうだって」 と、れいむは答えた。らんに絶対にそう言っておいてくれと頼まれていた言葉だった。 それを聞くと、まりさはあからさまに喜んでれいむに着いてきた。 まりさは、その強さで新体制において群れの幹部におさまっているが、実のところ不満 であった。 自分こそ、長に相応しいと思っていた。 しかし、今の長は支持されている。前の長と同じぱちゅりー種で、その孫だからみんな 盲目的に支持しているのだ、とまりさは固く信じていた。 幹部であるまりさは、他のものより多くの食料支給を受けていたが、自分以外のものへ 分け与えられるほどではない。劣等種どもから別途食料が得られれば、それを与えて自分 のシンパを作ることができる。 それがある程度増えたところでクーデターを起こして長に取って代われば、みんななん となく支持しているだけなので、すんなりまりさを新しい長と認めるに違いない。 「ゆふふふ」 ほくそ笑むまりさの目の前のれいむが停止した。 「ゆ? ついたのかぜ?」 「ゆん」 れいむは一瞬、まりさを哀れみを込めた視線で見た。 しかし、劣等れいむごときにそんな目で見られるわけはないと思っているまりさは、そ れには気付かなかった。 れいむは、らんの申し出をそのまま受け取ってはいなかった。 これが他のもの、かなこ辺りからの申し出ならば、そうしただろうが、らんはどう見て もれいむと同じ疑問を持っていた節がある。 今回のまりさの呼び出しもおそらくは…… 「ゆん」 現れたらんに、まりさは倣岸にそっくり返る。 「わざわざまりささまが劣等種のために来てやったのぜ。話は本当なのかぜ?」 「ああ、嘘だ」 あっさりと、あまりにもあっさりとらんは言い切った。 「ゆあ? はあ? ゆゆゆゆ? な、なに言ってるのぜえええええ!?」 まりさは何を言っているのかしばらく理解できなかったようだが、ようやく理解すると 当然のことながら激怒した。 「まりささまは貴種でも一番けんかが強いのぜ! そのまりささまを劣等種ごときがから かったらどーなるかわかってるのぜ? 同じ貴種でも、まりささまをからかう奴はせいっ さいっするのぜ? それを、それを、劣等種ごときがあ!」 「せいっさいっ、か……」 らんは、少し考えるような素振りを見せたが…… 「じゃ、せいっさいっしてもらおうか」 「ゆっぎいいいいいいい!」 まりさはもう怒り過ぎて全く感情を制御できていない。 ただでさえ喧嘩っ早いまりさである。 「ゆっくりじねええええ!」 すぐさま跳ねてらんに飛びかかった。 「……!」 らんは、一瞬緊張した表情を見せたが、素早く後ろに飛んでまりさの体当たりを回避し た。 「ゆっ? よ、よくかわしたのぜ」 渾身の体当たりがかわされて、まりさは一瞬戸惑った。劣等種など、自分の体当たりを かわせもしないと思っていたのだ。 「ゆひゃあああ! いつまでかわせるのぜえええ!?」 気を取り直して飛び掛る。 「ゆ、ゆひぃ……ゆひぃ……なんで……どぼじで……」 そして、何十回も攻撃を繰り出し、そのことごとくがかわされ、とうとうまりさは疲労 で動けなくなった。 一方、らんは涼しい顔でそれを侮蔑をあらわに見ている。 「ゆ、ゆぎ、ゆぎぎぎぎ」 劣等種などにそんなふうに見られることは、貴種の中でも特に気位の高いまりさには耐 えられないことであった。 しかし、いかなまりさとて、実際ここまで攻撃がかわされ続ければ、らんの素早さは認 めざるを得ない。 ――ゆぎぃ、あたれば……いっぱつあたればあんな奴ぅぅぅ。 歯軋りするまりさに、らんは言った。 「終わりか、それじゃこっちから攻撃するぞ」 「ゆぅ……ゆへ」 まりさがにやっと笑う。 調子に乗って劣等種ごときが攻撃と来た。 これはチャンスだ。これを逃してはいけない。 「ゆ、ゆへえ、お、面白いのぜ、劣等種のごみのこーげきがまりささまに効くかためして みるのぜ、お、おばえみたいにコソコソ逃げないで、受け止めてやるのぜ」 そう言ってまりさはべたりと地面にあんよを密着させ、歯を食いしばった。 「よし、いくぞ」 らんは、跳躍した。 「ゆっはああああ! かうんたーなのぜ!」 まりさも同時に飛んで、真っ向から迎え撃った。 両者が激突し、らんがよろめきながらも着地する。 「ゆべえええ!」 一方のまりさは、跳ね飛ばされて着地もままならず顔面から地面に落ちた。 「ゆびぃぃぃぃ、い、いだいのぜええええ」 地面でこすった顔に小さな擦過傷が無数についている。 「ゆ、ゆびぃ、お、おがじい、おがじい、のぜ」 「おい」 「ゆ、ゆひぃぃぃ、く、くるなああああ! れ、劣等種は近付くんじゃないのぜえええ!」 「ふんっ!」 らんはまりさの前でくるりと回転した。 「ゆばああああ!」 尻尾に叩かれたまりさがふっ飛んで木の幹に激突する。 「ゆ、ゆびぃ、い、いだいのぜえ」 「おい、みんな、出て来い」 らんが言うと、そこかしこから劣等種たちが出てきた。 「ゆ、ゆひぃ」 プライドの高いまりさにとっては、こんな哀れな姿を劣等種に見られるのは辛いことで あった。 しかし、逃げ出そうにも体が動かない。 「「「ゆぅぅぅ……まさか、そんな……」」」 みな、愕然としている。 らんには、今から自分がやることを隠れて見ていてくれと言われていた。 群れで一番強いまりさがやってきて、らんがそれにあからさまに喧嘩を売るようなこと を言い出した時には皆恐怖に震えた。 らんがせいっさいっされて永遠にゆっくりしてしまう、と。 だが、そうはならなかったのは見ての通りである。 「みんな、わかっただろう。……こいつは……いや、こいつらは、貴種は……弱い!」 「「「ゆぅぅぅぅぅぅぅ……」」」 さすがにショックからすぐには立ち直れずに、劣等種たちは唸るばかりである。 らんの強さは幾度となくスモウで対戦してわかっている。劣等種の中でもそんなに群を 抜いて強いわけではない。 らんが、あそこまで余裕を持って勝てるのなら、他のものも、劣等種の中ではそんなに 強くないさなえでも十分に勝てるだろう。 「れいむ、すまなかったな」 「ゆん」 「……あまり、驚いていないな……やっぱり、お前もわかっていたのか?」 「ゆぅぅぅ、もしかしたら、とは思ってたよ……らんたちが狩りをしているのを見てたら ……どう見ても、れいむはもちろん、他のまりさとかれいむよりも……」 どう見ても、劣等種の方が身体能力が高い。 何度も何度も狩りに同行し、それを見ているとそう思わざるを得なかった。 それをそんなわけはない、そんなわけはない、と押さえ込んでいたのだ。 しかし、そんなれいむの前で劣等種たちは、群れで一番のジャンプ力が自慢のちぇんよ りも高く飛び、群れで一番の「剣」の達人であるみょんよりも巧みに口で棒を使っていた。 木の実を落とそうと幹に何度も体当たりするめーりんはどう見ても貴種の誰よりも頑丈 な体だったし、すいかよりも多くの荷物を持てるものなど貴種にいるとは思えなかった。 それが、れいむの抱いていた疑問であった。 れいむの餡子脳裏に、あの時の情景が蘇る。 あの時――そう、先代の長ぱちゅりーが死ぬ前のあの時だ。 「れいむ、なにか聞きたいことがあるんでしょう?」 「……ゆん」 れいむは疑問をぶつけた。 劣等種は弱く劣っていて、貴種は強く優れている。 そう教えられてきたし、この群れのものはみんなそう思っている。 だが、劣等種たちの狩りを見ていると、どうしてもそうは思えないのだ。みんな、貴種 の中でも優れたものたちよりも上に見える。 「むきゅきゅきゅ」 長は、笑った。 「……れいむ」 「ゆ、ゆぅ」 「その通りよ……劣等種は、貴種なんかよりも遙かに優れているわ」 「ゆ!? ゆゆ!?」 疑問は解決した。 しかし、戸惑う。長年の先入観は強く、れいむは実は、長にその疑問を馬鹿げた疑問と して否定されたがっていたのかもしれない。 「で、でも、どぼじで……」 「少し長くなるけど、話しておきましょう……あの馬鹿孫は話す価値がなかったからね」 長は、吐き捨てるように言った。 この群れが出来てしばらく経った頃、そばに住んでいた現在の劣等種たちの祖父母の代 のゆっくりたちと接触した。 友好的に付き合っていたのだが、こちらの群れから、油断しているうちにやってしまお うという意見が出た。 そんな物騒な意見が出たのは、奴らがその気になって侵略してきたらおしまいだからだ。 群れの創成期のものたちは、劣等種――人間たちは希少種と呼んでいるようだ――は自 分たちなど問題にしないような強さを持っていると認識していたし、それは間違ってはい なかった。 ゆっくりの天敵といえば捕食種のれみりゃ、ふらんだが、通常種(貴種)がこれらには なす術が無いのに対して、希少種はやりようによっては互角に渡り合える強さを持ってい る。 そこで、寝込みを襲って皆殺しにした。 むろん、罪悪感なくやってのけたわけではなくやらねばやられると思い込んでのことだ った。しかも、完全に奇襲したのに反撃にあってこちらも相当殺された。 目を覚まして騒いだ子供たちも殺したが、眠っていた子供たちをどうするかで意見が割 れた。 結局、とりあえず殺さずに、両親は突然襲ってきたふらんたちから自分たちを守るため に死んでしまったと言って、育てることにした。 子供の頃から洗脳して育てていけば、従順になるのではないかという打算があった。 奇襲成功にも関わらず手痛い反撃を受けて希少種の恐ろしさを痛感していたぱちゅりー たちは、こんな恐ろしいものは殺してしまわないと、と思うと同時にこの力を使えるよう になったら……という思いもあったのだ。 そして、希少種は劣等であると教え込まれ、貴種とされた通常種に逆らうような気にな らぬように育てられた。 創成期のゆっくりたちは次々に死んでいき、生き残ったぱちゅりーがそのシステムを完 成させた。 今や、群れでそのことを知るのはぱちゅりーだけだ。 「ゆぅぅぅ……」 話を聞いて、れいむは唸るしかなかった。れいむの中の長ぱちゅりーはひたすら慈悲深 い存在だった。 「むきゃきゃ……つまり、ぱちゅはとんでもないゲスなのよ」 長がそう言ってにたりと笑った時、れいむは中枢餡がゾッとする思いだった。 「で、でも長は優しいよ。劣等種にも優しくしてたよ」 「むきゅ」 長はおかしそうに笑った。 「れいむは優しいわね。だから、そういうあまあまなふうに考えるのよ」 「ゆ、ゆぅ……」 「ぱちゅが優しくしていたのには、全部理由があるのよ」 子供たちを預かるのは、ゆん質である。 暴行を禁止していたのは、何度もやられているうちに劣等種が死を覚悟で反撃して、そ れであっさり貴種が殺されてしまい、劣等種が真相に気付いてしまうのを防ぐため。 その他、あらゆる「優しい」処置は、全て劣等種を追い詰めてダメで元々と覚悟を決め て反乱に立ち上がらせたり、群れから逃亡させないためである。 「ゆ……ゆ……ゆ、で、でも」 れいむは、震えながら言った。 「でも、劣等種のみんな、長のことを好きだよ。長に感謝してたよ」 「むきゃきゃきゃきゃ! それもこれもぱちゅたち貴種が狩りもしないでむーしゃむーし ゃしてゆっくりするためよ」 「ゆぅぅぅ……」 「もう一度言っておくけど……ぱちゅは、ゲスよ、むきゃっ」 「ゆぅ……ゆ? ゆ、ゆ、長、長」 「なにかしら」 「そ、それじゃあ、これから……長が永遠にゆっくりしちゃったら、どうなるの?」 「むきゅきゅ」 「さ、さっき長、言ってたよね、次の長のぱちゅりーにはこのこと話してない、って」 「むきゅ、そうね」 「ど、どぼじて? は、話しておかないと、いけないんじゃ、ないの?」 「むきゃきゃきゃきゃ! だから、ぱちゅはゲスなのよ!」 「ゆゆぅ……」 「ぱちゅはね……あの馬鹿にはもうあいそがつきてるのよ」 「ば、馬鹿って……でも、ぱちゅりーは頭がいいってみんなが」 「あんなのはただの馬鹿よ、口だけ達者なだけ」 長ぱちゅりーは、次の長になる孫ぱちゅりーのことを話す時は声から表情から嫌悪感が ありありと出ていた。 「馬鹿のくせに、こともあろうに、このぱちゅを……」 「ゆゆ!?」 先ほど、孫ぱちゅりーと二人きりで話した時、その時に劣等種のシステムを全て打ち明 けるかどうかは長も迷っていたらしい。 しかし、孫ぱちゅりーは長ぱちゅりーの言うことを一切聞こうとはせず、あからさまに どうせもうすぐ死ぬのだからと軽んじていた。 そのことに、長ぱちゅりーは激怒した。 そうなると、日頃から自分が長になったらこんな間違った状態は正してやると言って回 っていたことも思い出された。 しかし、その場で罵ったりはしなかった。そんなことは馬鹿のやることだと思っていた。 だから、長ぱちゅりーは、何も教えてやらずに孫ぱちゅりーを帰したのだ。 「むきゅきゅ、ゲスなぱちゅは、もうあの馬鹿も群れの連中もどうでもいいのよ。むしろ あの貴種だと威張っている馬鹿どもは、劣等種に皆殺しにされてしまえばいいのよ」 「そ、そんな……」 これまでの経緯から、れいむの気持ちはとうに貴種などよりは劣等種寄りになっている。 しかし、それにしても、慈悲深いと思っていた長ぱちゅりーがこのようなことを考えて いるということがショックであった。 「れいむ……ぱちゅは、劣等種を道具だと思っていたわ」 自分たち、貴種が狩りもせずにゆっくり暮らすための道具。 そのために、長ぱちゅりーは長ぱちゅりーなりにあれこれ考えてやってきたのだ。 「なんとか……ぱちゅの生きてる間は上手くいったけど……これだって綱渡りよ。運がよ かっただけよ」 些細なきっかけで、天秤のバランスは崩れ、真実に気付いた劣等種たちが怒り狂って貴 種を殲滅する可能性はこれまでいくらでもありえた。 「それでも、ぱちゅだからできた、とは思っているわ。ぱちゅが死んだらほんの少しの遅 い早いの違いはあっても……すぐに駄目になると思うわ。それに……」 「ゆ……」 「れいむ、貴種を見てどう思う」 「ゆ、ゆゆ?」 「あいつら、ゆっくりしてるように見えるけど、どうかしら」 「ゆ……ゆっくり、してるよ、でも、なんか劣等種たちを馬鹿にしてる時とかは、ゆっく りしてないよ」 「むきゃきゃ、それはね、あいつらが働かないでもゆっくりできるからよ」 「ゆ!?」 「ぱちゅは、まさにそのために色々苦労してきたんだけど……生まれた時からそういう環 境にいると腐るのよ」 長ぱちゅりーの目から見て、とてもではないが奴らは貴種などという呼び名に値しない 存在だ。それどころか、奴らこそ劣等種と言うに相応しい。 「それに比べて、あの子たちは違うわ」 ずっと何かにがにがなものを噛んでいるようだった長ぱちゅりーの顔が、ふっと綻んだ。 あの子たち、というのはゆん質として預かっている劣等種の子たちのことだ。 子供たちは、先ほどれいむの言った通りに、長に感謝し、これを慕っていた。 知っていることを教えてやると、どんどん吸収する賢さもある。 長のやることは甘いよ、などと文句を言う連中や、自分が長になったら今のやり方は全 部変えてやる、などと言い回っている孫ぱちゅりーに比べれば、こちらの方が幾倍も可愛 い。 いわば、預かっていた子たちに情が移ってしまったのだ。 「ゆ! や、やっぱり、やっぱり長は優しいんだよ!」 れいむは勢い込んで言ったが、それに返って来たのは長ぱちゅりーの嘲りだった。 「優しいものですか! ぱちゅは、自分でそうしたというのに、そのせいで群れの奴らが 駄目になったからと、それに比べて可愛くて賢い劣等種の子たちに情を移してそのために 貴種の奴らなど殺されてしまえと思っているのよ」 「ゆ!?」 「無責任でひどいゲスなのよ、ぱちゅは」 「ゆ、ゆぅ……」 「むきゅぅ……大きな声を出して疲れたわ。そろそろ永遠にゆっくりさせてもらおうかし ら」 「お、長ぁ……」 「こんなゲスの死に泣くあまあまで馬鹿なれいむに言っておくわ」 「ゆ?」 「今でも、あなたは劣等種たちには好かれているわ。次の長が劣等種たちへひどいことを したら、それを止めるように言いなさい」 「ゆ、で、でも、れいむの言うことなんか」 「いいのよ、それで、あなたは劣等種たちの大きな好意を得られるわ……そうすれば、あ なたは生き残れるはず」 「長ぁ、なんで、なんでれいむにそこまで……」 長ぱちゅりーはそれには何も言わなかった。 劣等種の子たちのように賢いとは言えないものの、れいむもまた長を慕っていた。そし て、足りないながらも懸命に長の世話をしていた。 そんなれいむもまた、長にとっては可愛い子だったのだ。 しかし、それは言わぬままに長ぱちゅりーは永遠にゆっくりした。 ゲスが最後に言う言葉ではない、と思っていたのだろう。 「れいむ、れいむ、れいむ!」 「ゆっ! あ、ご、ごめん、ちょっとぼーっとしてたよ」 らんが自分の名前を連呼しているのに気付いて、れいむの意識は過去のあの時から、現 在へと戻ってきた。 れいむが回想をしていた間に、らん以外のものたちも現実を受け止めたらしい。 ていうか、いつのまにかまりさが破裂して死んでいた。 なんでも、すいかがまりさに思い切り押してみろと言い、まりさが必死に押したのだが すいかがその弱々しさに怒り出して、もっと強く押せと激昂し、これでせいいっばいなん でず、もうゆるじでぐだざい、とまりさが言ったらすいかがキレて体当たりしてそのよう なことになったらしい。 すいかがキレたのは、目の前のまりさにだけではなく、今までこんな弱っちい連中の言 うことを聞いていいようにされていたのかということへの怒りであろう。 そのすいかをはじめとして、かなこたちも明らかに先ほどまでと顔つきが違っていた。 その顔に、劣等種をごみと見下す貴種たちに通じるものを感じたれいむは寒気を感じた。 「れいむ、前にも言ったが、れいむは今の長がわたしたちにひどいことをした時に、それ を止めてくれた。ちぇんの時のこともあるし……れいむのことは、仲間だと思っている」 れいむは薄々と劣等種たちの本当の強さをわかっていたようだが、それとても確信があ ったわけではなく、さらにはあの時点でそのような行動に出るには十分に勇気が必要だっ たことをらんは認めていた。 「おう、そうさ! れいむは仲間さ!」 すいかが同調すると、それに賛同する声が上がる。 れいむは、とりあえずはほっとしたが、すぐに恐ろしくなった。 ――長、長! 長の言った通りになったよ! 長! 長はすごいよ、怖いぐらいに、す ごいよ…… 「よーし、それじゃ早速、あいつらぶっ飛ばしてやるか!」 すいかが頭を振って角をぶんぶんさせながら言うと、らんがそれに反対し、かなこも同 意した。 「なんといっても、数があまりにも違う、正面からやるのは少し減らしてからにしよう」 「そうだな」 「うーん、二人がそう言うなら、あたしはそれに従うよ」 「あいつらは、わたしたちを弱いと思っている……それにつけこむんだ」 活き活きとした表情で相談しているらんたちを見て、れいむはぶるりと震えた。自分は 外れているからいいものの、標的になっている群れの貴種たちのことを思うと、やはりそ こはれいむ種である、一抹の哀れさを感じていた。 後編に続く
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/1303.html
前 「れいむ、ちょっといいかしら?」 毎晩恒例の会議が終わり、それぞれ自分たちの部屋に帰ろうとする中、側近ぱちゅりーがれいむを呼び止めた。 「ゆ? どうしたのぱちゅりー?」 「むきゅ……ちょっと、お話があるの……まりさとありすは先に寝ててね」 「ゆっくりわかったんだぜ! おやすみみんな!」 「ふたりとも! ねぶそくはびようによくないからむりしないではやくねるのよ!」 そういって部屋に戻っていく二匹を見送ると、二匹はゆっくりと洞窟の外へ向かった。 「ゆぅ~、ぱちゅりーったらふたりがいるのにだいたんすぎるよ~」 洞窟の外に出て早々に、れいむの態度が豹変した。 猫なで声……とでもいうのだろうか、実に気持ち悪い声でぱちゅりーに甘えだした。 実はこの二匹、こっそりと付き合っていたのである。 番いにならずに付き合うという形をとっていたのはれいむに前夫のまりさの子供たちがいるためだったが、二十匹の子供たちと当のれいむは浮気をした挙 句すっきりのしすぎで死んでしまった父まりさなど等に見限り、すっかりぱちゅりーを慕っている。 すでにこっそりと言いながらも、群れ一番賢いぱちゅりーと群れ一番子だくさんでやさしいれいむの関係にドスを除くほとんどのゆっくりが気が付いてい た。 「むきゅ~、実はれいむに話しておきたいことがあるのよ……」 「ゆ? どうしたの?」 「実はにんっしんしてるまりさ達なんだけど……」 「ゆ! あのあかちゃんがすごくゆっくりしてるまりさたちだね! きょうもみにいったらまたおおきくなってたよ!」 ぱちゅりーとれいむが言っているのは、あのお兄さんが改造したゆっくり達と同じ出産室にいた動物型妊娠のゆっくり達のことである。 あのゆっくり達はぱちゅりーの見たところ植物型出産のゆっくり達と同じ日に出産を迎える見立てだったのだが、あの地獄の出産劇の後もそういった気配 はなく、むしろ今まで以上にゆっくりとし、今まで以上の食糧をむさぼり、わずか二日で二倍近くまで肥大化していたのだ。 「ぱちゅりーの経験からすると、あのまりさ達の赤ちゃんはもう生まれてなくちゃいけないはずなのよ! それがまだ生まれていない上にあんなにふとっ ちゃってるのは……」 「ふとっちゃってるのは?」 「想像にんっしんに違いないわ!」 「な、なにそれえええええええ!?」 「むきゅ! 前の群れにもいたんだけれど、赤ちゃんが本当はできていないのに出来てるって言って、ぶくぶくと太っちゃうことなのよ!」 ぱちゅりーの言っていることは本来の想像妊娠とは違っているが、ゆっくりが想像妊娠した場合の餌の大量摂取と肥満はセットのようなものなので、ゆっ くりにとってはあながち間違いではない。 「ゆ! それはほんとうなの!」 「むきゅう…にんっしんしてからもうお日さまが二十回以上昇ったわ。あのまりさ達には赤ちゃんは生まれないのよ」 「ゆー! それじゃあみんながっかりするよ! あかちゃんがうまれるのたのしみにしてたのに!」 れいむの言うとおり、二日前の惨劇以来この群れのゆっくり達は動物型で妊娠している十匹のゆっくり達が赤ちゃんを産むのを楽しみにしていた。 ゆっくりするという行為に赤ん坊を眺めることを含めるゆっくり達にとっては、やはり普通に生まれた赤ちゃんを見たいという思いが強いのだろう。 「むきゅ! だからね……れいむ……ぱ、ぱちゅりーとれいむで赤ちゃんを作ってみんなを喜ばせましょうよ!」 この言葉にはれいむも驚いたようで、はっと目を見開いた。 いきなり子作りをしようと言われたのだから無理もないが。 「も、もちろんだいさんせいだよぱちゅりー! ゆっくりあかちゃんがうまれればみんなげんきになるよ!」 だがぱちゅりーの言葉と同じくらい素早くれいむは返事をしていた。 どうやらぱちゅりーがこういうのをずっと待っていたらしい。 「む……むきゅー! れ、れいむー!」 先ほどお兄さんと妖怪兎が賢い賢いとほめちぎっていた二匹とは思えない様子で交尾を始める二匹。 もともと自分たちが敷いたすっきり制限でいろいろと溜まっていたのだろう。 ぺにぺにのない二匹はお互いのモチモチとやわらかい頬をやわらかく、それでいて激しくすり合わせる。 「すーり! すーり! ぱ、ぱちゅりーのほっぺたすごくふわふわでゆっくりできるよー♪」 「むきゅぅ♪ れいむのほっぺたももちもちであったかいよぉ♪ すーりすーり♪」 ヌメヌメとした液体を体から染み出し、洞窟の前で交尾にいそしむ二匹のゆっくり。 今まで群れの体面や何やらですっきりできなかったのだから無理もないが、群れの仲間の出産状況を理由にすっきりするとは、この二匹ゲスの一面があっ たのかもしれない。 「ぱぱぱぱ、ぱちゅりー! もうがまんできないよー!」 「むむむむむむきゅー! ぱちゅりーもだよおおおおお!」 だからなのか、群れでトップクラスに賢く、群れでいちばん狩りのうまい二匹は交尾に夢中でついに気がつかなかった。 「「すっきりー!!!」」 自分たちの背後にいる…… 「むきゅう♪ れいむううううううう、ゆっくりした赤ちゃんよぉ!♪」 「ふとくてしっかりしたくきだね! これならゆっくりしたこがうまれるよぉ♪」 「むきゅぅ♪ おちびちゃんたちにも妹ができるね!」 「れいむはすごくうれしいよ! ゆっくりしたこにそだっ」 ぶちい!!!! 「むぎゅ!」 「あ、ああああああああああ! あがぢゃんがああああああああああ!」 一人の鬼意惨に。 「い~~~~~~い実ゆっくりだなあああああ! ちょっと貰うぞ!」 「むびゅうううううううううううううううう! ぱちゅりーのあがぢゃんがああああああああああああ!」 「ゆっぐぢでぎばいにぶげんはじねええええええええええええええ!!!」 久しぶりのすっきり。愛おしい相手との初めてのすっきり。その末に授かった赤ちゃん。 その茎を勢いよく引きちぎ李、恍惚の表情を浮かべるお兄さん。 光学迷彩を解いたその姿は、久しぶりの直接的な虐待にヘブン状態なのか全裸だった。 「その叫び声最高だよ! さすがお兄さんの大好きなド饅頭!」 そう叫ぶが否や、二匹のゆっくりの口に手を突っ込んで舌をつかんで持ち上げる。 「「んんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!」」 「兎からお前らを始末する許可はもらっている! すでにお前らの餓鬼どもも確保済みだあああああああああああああああああ!」 『私を”鬼意惨”と見込んで依頼を下さったのならば、信頼していただきたい』 『わかったウサ。幹部たちを殺して直接群れに介入するあなたの計画、了承するウサ』 そう、お兄さんが妖怪兎に許可を求めたのはぱちゅりー達を殺し、飾りを用いてゆっくりになりすまして介入するという、群れ虐待における非常にオーソ ドックスかつ危険なものだったのだ。 通常飾りで個体を識別し、飾りさえついていれば人間でさえ仲間と認識してしまうゆっくりだが、ドスまりさなどの比較的頭のいい個体には見分けられて しまう。 だが、一週間以上この群れを監視したお兄さんは気が付いていた。 この群れのぱちゅりーに対する過剰ともいえる期待と信頼に。そしてドスまりさの馬鹿さに。 だからこそ、ドスと幹部ゆっくりによる軋轢が生まれる前に群れをコントロール出来るこの手法を提言したのだ。 そして直接的な虐待のお墨付きをもらったお兄さんはヘブン状態になり、全裸に光学迷彩スーツを着込むとぱちゅりーとその恋人である幹部れいむを虐待 するために洞窟に向かったのだ。 そして鬼意惨と化したお兄さんの頭の中にあるのは、一週間以上にわたる幸せなゆっくり達を見続けたことにより溜まりに溜まったフラストレーション、 それだけである。 「なーにが依頼じゃ! なーにがじっくりじゃ! あの兎が勝手なこと言いやがって! 俺はもっとシンプルな虐待がしたいんだよ!」 「ばべでえええええええええええええ!」 「じだがいだいいいいいいいいいいいいいいいい!」 「今夜に限っては依頼は関係ねええええええええええええ! ひゃああああああああああ! 虐待だあああああああああああああああ!」 深夜二時。 ゆっくりの群れを虐めるために作られた森の中に、お兄さんの奇声が響き渡った。 そしてこの夜、森の賢者(笑)と称えられたぱちゅりーとれいむの地獄が始まった。 「ほらよ、ついたぜ!」 「ぶぎゅべ! むぎゅうううううううう!」 「いだいよおおおおお! ゆゆゆ!! ばがな”じじいばれいぶだじをおうじにがえじでね”! ……ゆ!?」 全裸のお兄さんに捕まれ小屋についた二匹が最初に見たのは、床にある真っ黒な塊とそれに生い茂る緑色の茎だった。 普通のゆっくりなら気がつかなかったかもしれないが、頭のいい二匹はすぐに気がついたようだ。 「おじびじゃんだじがあああああああああああああああ!」 「どぼじでごんなごどにいいいいいいいいいいいいいいい!」 「そのとおおおおり!!! てめえらが気持ちわりい逢引ごっこで交尾してたんでなあ! 親切なお兄さんが餓鬼どももすっきりさせてやったんだよ!」 相変わらずのハイテンションで叫んだお兄さんは、れいむの子供たちのなれの果てから赤ゆっくりのなり始めがついたままの茎をブチブチと引きちぎると 、まな板の上に乗せた。 「む、むきゅう! ちびちゃん達の赤ちゃんがついた茎を千切らないでね! まだ茎を餡子にさせば大丈夫だからやめてね!」 ぱちゅりーはお兄さんの行為に即座に反応したが、れいむの方は「ちびちゃんちびちゃん」と呟きながら餡子の塊にくっついている。 強すぎる母性のせいで合理的判断が取れなくなるれいむ種の典型的行動だった。 「はーっはっはっは! だーれがやめるかゲスぱちゅりーが!」 「むきゅ! ぱちゅりーはゲスじゃないよ! ゆっくり訂正してね!」 「いーやゲスだね! 自分ですっきりを制限しておきながら仲間が出産しないのをいいことに自分達はすっきりしちまうような奴はゲスなんだよ!」 「むぎゅ!」 うろたえるぱちゅりー。どうやら自覚はあったようだ。 「で、でもそれはしょうがないのよ! 群れのみんなを励ますためにも赤ちゃんは必要だったのよ!」 「ぞうだよ”! ぞでなのにぱじゅりーをげずよばばりするじじいはじねえええええええ!」 立ち直ったのか一緒になってお兄さんに罵声を浴びせるれいむ。 群れのゆっくりと同様に、いやそれ以上に信頼し、尊敬しているぱちゅりーを馬鹿にされたのが許せないのだろう。 「うるせえ!」 だがお兄さんにはそんなことは関係ない。 素早くスプーンをつかむと、それでれいむの両目をくり抜いた。 「ぎゃああああああああああああああ! でいぶのがばいいいおべべがあああああああああああああ!!」 「む、むぎゅううううう! ぷぺ!」 愛しいれいむに起きた惨状に思わずクリームを吐き出そうとするぱちゅりー。 しかしお兄さんの素早い腕がぱちゅりーの口をホチキスでふさぎ、それを許さない。 「落ち着けぱちゅりーさんよお。群れのやつらなら明日生まれる赤ゆっくりのおかげでしっかりとゆっくりできるさ!」 「…!!!」 「どぼいうごどなのおおおおおお! そうぞうにんっしんじゃだいのおおおおお!」 「想像妊娠? んなわけあるか! あいつらの出産が遅いのは俺が出産を遅らせる薬をあいつらの餌に混ぜ込んだからだよ」 お兄さんの言葉に絶句する二匹。 「それだけじゃない! 二日前に生まれた赤ん坊どもをああいう風にしたのも俺だよ」 「!!!んー!!!! んんんー!」 「どぼじでぞんだごどずるのおおおおおおおお!」 「それはなあ……お前らを虐待するためだあああああああああああああ!」 「ぎゅべえええええええええええええええ!」 ネタばらしで二匹のリアクションをたっぷり楽しんだお兄さんは、本日のメイン虐待を始めた。 「さあ! ゆっくりクッキングの始まりだぜ!」 「やべでええええええ! だずげでぱちゅりいいいいいいい!」 「んんーーーーー!!!!」 「まずはゆっくりの皮を剥きまーす!」 「ぶぎゃあああああああ! でいぶのもじもじのおばだがああああああああ!」 れいむの体の表面を包丁で器用に向いていくお兄さん。 肌色だった表面みるみるうちに白い饅頭になっていく。 「そして虫なんかをさんざん食べて汚い口をえぐりとりまーす! リアクションがほしいので喉は残しまーす!」 「むがーーーーーーー!!!! がーーーーーーー!」 「そしてさっき子ゆっくり達を交尾させて作った実ゆっくり付きの茎を強火で炒めまーす!」 「はへへーーー! ははひふへはひほーーーーー!(やめてーーー! まだしんでないよーーーーー!)」 喉だけで器用に叫ぶれいむ。 薄情なことにぱちゅりーは目と口の部分に穴のあいただけの饅頭になったれいむを見て、気絶してしまっている。 「塩こしょうで味を調えて完成! ゆっくりの実ゆっくり付き茎炒め!」 「んはーーーーーーーーーーーーーーーー!」 「そしてリアクションに飽きたれいむは温い油に入れて二時間かけて揚げ殺しまーす♪」 「ひひゃああああああああああああああああああ!」 油の入った鍋に突っ込まれ、ふるえながらゆっくりと油鍋の下から伝わってくる熱に怯えるれいむ。 お兄さんの言うとおり、すべてを失った悲しみを抱えながらすさまじい恐怖と狂うに苛まれあげ饅頭になるのだろう。 「さあて……やっぱりただ直接やるだけだとすっきりはするけどあんまり達成感はないなあ……」 すっかり溜まっていたフラストレーションを吐き出して通常に戻ったお兄さん。 イライラ解消のためだけに計画変更を認めさせられた妖怪兎はとんだ迷惑だろう。 「なんだかんだ兎には文句言ったけど……やっぱりじっくり虐待っていいよなあ……」 呟きながら静かに気絶したぱちゅりーを手に取るお兄さん。 「というわけで安心してくれぱちゅりー。あの群れは俺がしっかりとゆっくりさせてやるよ」 ひどくやさしい声で囁きながら、ぱちゅりーの帽子を取り上げるお兄さん。 そんなお兄さんの言葉にも、命より大切な帽子を取られたことにも、濁りきったぱちゅりーの眼は何の反応も示さなかった。 (むきゅう……ここは?) 体中に感じるズキズキとした痛みでぱちゅりーは目を覚ました。 愛しいれいむがひどい目にあわされているのを見て、思わず気絶してしまったところまでは覚えているのだが、その後は…… (むきゅ! そ、そうだ! れいむ! れいむは!) れいむを探そうと慌てて辺りを見渡そうとするぱちゅりーだが、なぜだかあたりは真っ暗で、そのうえ声も出すことができない。 (ど、どういうことなのおおおおおお! れいむううううう! ドスうううううううう! みんなああああああああ!) 必死に声を張り上げ、飛び跳ねようとするが、体に全く力が入らず、それはおろか自分の体が物に触れている感覚すら感じることが出来ない。 (むきゅうううううう! どういうことなの!) 慌て、混乱するぱちゅりー。するとその時、懐かしい、そして今のパチュリーにとって救世主ともいえる声が聞こえてきた。 「ぱちゅりー! ゆっくりおはよう!」 ドスまりさの大らかでとてもゆっくりとした声だ。 ぱちゅりーはようやくこのゆっくり出来ない状態から解放されると思い、ドスに挨拶を返した。 (ゆっくりおは)「ゆっくりおはよう! ドスまりさ!」 だが、その耳に聞こえたのは自分の声ではなく、昨日れいむとちび達を殺した憎むべき人間の声だった。 (む、むきゅうううう! ど、どうしてあの人間がいるのおおおおお!) 「ゆ! ぱちゅりーどうしたの? なんかおおきくなったみたい!」 そのドスまりさの声でぱちゅりーは気がついた。 あの人間は帽子を取り上げて自分になり変っているのに違いないのだ。 (むきゅう! 騙されちゃだめよドス! あの人間が群れに行ったらみんなゆっくり出来なくなるわ!) 帽子でのごまかしが聞くのは概ね普通のゆっくりまで。 ドスともなれば大きさなどに違和感を感じてそれに気がつくことが出来るはずだ。 ぱちゅりーはドスまりさに一縷の希望を託したが……。 「実は夜の内にぱちゅりーには体が生えてきたんだよ。これでもっとみんなをゆっくりさせてあげられるよ!」 (ああああああ! だめよドス! だめよおおおおおおお!) だが、ぱちゅりーの願いは、 「すごいねぱちゅりー! どすはぱちゅりーみたいなゆっくりがそっきんでとってもうれしいよ!」 愚かなドスまりさには届かなかった。 (どすううううううううううううう!) 「ありがとうドスまりさ! これもドスまりさのおかげだよ! これはそのお礼だよ!」 「ゆ! なにそれ! しろくてまんまるでとってもゆっくりしてるよおお!」 (むきゅ!) しろくてまんまる。 ドスのその言葉にぱちゅりーはあることに気がついた。 自分がドスと自分になりすました人間の近くにいるのに、なぜドスは帽子がないとはいえ自分に全く反応しないのだろうか。 その時、最後に見たれいむの状態を思い出す。 目を抉られ、体中の皮を削られてまるでお饅頭のようになったれいむの姿を……。 (むきゅううう! まさか! まさかあああああああ!) 「これは森で見つけたお饅頭だよ。れいむ達が見つけてくれたんだ、ドスまりさにあげるよ。」 「ゆうううう! ぱちゅりーありがとうねええええ! 本当にぱちゅりーはゆっくりしたそっきんだよおおお!」 そう言って舌でお兄さんが抱える饅頭をからめ捕るドスまりさ。 その表情は甘い物が食べられる喜びでとてもゆっくりとしていた。 (むきゅううううううううう! ドス!やめてえええええええ! ドスうううううううううううう!) 「ゆーっくりいただきまーす! むーしゃ♪ むーしゃ♪」 (いぎゃああああああああああああああ! ぶぎゅううううううううううううううう!) 少し間の抜けた、けれどもゆっくり達のことを第一に考えているドスまりさ。 前の群れでも、そして今の群れでも頑張っている、尊敬すべきドスまりさ。 (いぢゃいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! どすうぅぅうううううぅううううう……………) そのドスまりさに咀嚼されて、目と口と皮を失ったぱちゅりーは苦しみながら死んでいった。 「美味しかったドスまりさ?」 「とってもゆっくりできたよぱちゅりー!」 「それはよかった。さあ、朝礼を始めようドスまりさ」 「ゆっくりわかったよ! あれ、そういえばれいむとおちびちゃんたちはどうしたの?」 「ああ、れいむ達には新しい餌場を探しに行ってもらったんだよ。少し群れを留守にするから待っててあげようね」 「ちびちゃんたちとおとまりだね! ゆっくりわかったよ! さあ、みんなをおこすよお!」 成長したそっきんと働き者の幹部たち。 そしておいしいプレゼントにとてもゆっくりした気持ちで、ドスまりさは声を張り上げた。 「ゆっくりしていってね!!!」 ※どうも、えらい間のあいた割には虐待模写が少なくてすいません。 一応話の筋は考えてあるので、暇を見つけてじっくりと描き上げますので、もうしばらくお待ちください。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/310.html
「ふたば系ゆっくりいじめ 111 効率化の道/コメントログ」 何で?ぱちゅりーは大丈夫なんだ? 言ったらどのゆっくりも死ぬんじゃないのか? 微妙にイントネーションを変えることや叫ばないから大丈夫なのか? -- 2010-08-09 17 28 35 「さぁお食べなさい」を教える時の事だな? 思うんだが、言うだけじゃ駄目なんじゃないかな 「成体で、かつ、実行する意思を持ちながら同時にキーワード発言しないと発動しない」とか そもそも「さぁ(ry」の手順やキーワードは、他SS見てもゆっくりが生来知ってるモノっぽい気がする 少なくとも成長につれて「ソレ」が自分にできるって事を、教わるでもなく内から自覚していくように見える だからぱちゅりー達が教えているのはその手順自体と言うよりも 「さぁ(ryは素晴らしくゆっくりできることだ」ってのを刷り込んでるだけなんじゃないかな しかしこのシステム素晴らしいな。れいむにも仕事をさせるだけでなく充足感まで与えてやるとは…! -- 2010-09-07 03 12 05 ↓↓設定次第だから -- 2010-09-27 17 42 51 どっかのSSで食べさせたいと思う相手が居て始めて成立ってのがあったな 逆に言わせただけでパカッと割れる漫画もあったがw -- 2010-10-03 06 29 18 なんとも興味深い -- 2011-08-11 22 27 30 確かにこれは効率がいい、餡子脳で良く思いついたな、饅頭たちwww しかし教育って恐ろしいなと、これを読んで改めて思った -- 2012-06-08 15 59 53 これって本当に誰かに食べてもらいたいと思わないと おたべなさいって発動しないから大丈夫という 親切設定があるから大丈夫 なんだっけ。たしか。 -- 2012-08-29 16 24 12 刷り込みか、日本国民にも行われているよな・・・ それはおいといてこれは良いな、れいむ種は基本的に害悪でしかないからな人にもゆっくりにも 設定次第だが、このように使えない奴でも使いようという物を社会にも生かせないだろうか・・・ -- 2012-12-13 17 36 52 元飼いゆとはいえ餡子脳と思えない程の発想力だわ -- 2013-06-04 21 24 52 確かにれいむ種は役に立たない饅頭であったから、こんなに役に立てて幸せだろうなー(笑) -- 2013-07-28 13 14 26 一番下のコメントについて 本当にやる気があって、かつ間違わず発音しないとおたべなさいはできないそうです。 -- 2013-10-10 11 56 12 ・重大な疑問があるんだが。ゆっくりというあまあまを沢山食ってたら、それ以外の食料がまずくて食えなくなるんじゃねえの?それじゃまずいだろう。 -- 2013-11-03 12 17 29 れいむは無能ー -- 2014-02-08 19 37 36 ↓れいむは無能と言ってる奴は、れいむよりも頭が弱い -- 2014-09-26 01 14 44 まりさも同じくらい無能だろと常々思う -- 2015-01-27 19 09 52 やっぱこの人の作品全部面白いね! -- 2015-02-14 00 25 36 最近すきになった -- 2015-06-03 21 35 46 (続きを書いてみた) 数日後あるゆっくりが現れた それはゆっくりびゃくれんだった びゃくれんは今の群れに不満があった そしてびゃくれんは長に相談したが、 Гれいむはむのうだからむりなそうだんね」 と、流された。 だがびゃくれんは諦めず、道具としてあつかわれているれいむをあつめ、 反乱を始めた。 そしてびゃくれんはついに勝利をつかみ取った。 この反乱によって長はびゃくれんになり 前の長は、道具としてあつかわれていたれいむと同じ扱いをうけ そして前の長に協力したゆっくりも前の長と同じ扱いをうけた。 これによって今の群れはとてもゆっくりした群れになりました -- 2015-09-16 17 32 43 ↓クソつまらんかってに原作かえんな面白いならまだしも -- 2016-01-18 21 32 51 どうせここには負け組しかいないんですからwwwクズ同士争わないでクズらしく 仲良くしましょうよwwwwww -- 2016-01-19 18 14 10 ぱちぇはお食べなさい出来ないのかww -- 2016-04-15 22 31 15 これ読んだ感じ群れが悪く見えますが、私はれいむ種にも問題…いやれいむ種の方が問題あると思います。 だって、狩りが出来ない、馬鹿で、歌ってばかりで、冬ごもりという最も厳しい時期に何の考えも無くただすっきりー!したいからして、そして仕舞には出来た子供を「赤ゆっくりはかわいい」とただひたすら言うだけでまったく反省しない、ただ毎日自分だけゆっくりするだけの無能で自分最優先のクズのれいむ種達を群れの一員として認めていた群れの方がまだ善良だと私は思いました。 「これが何もできない無能なれいむ種を群れに貢献できるようにする、最適のシステムなのだ。」本当にその通りだ。れいむ種を効率よく使っている……。 「親れいむがまりさ種の赤ゆっくりを産み落とした。」で質問なんですが、「まれではあるが先祖がえりで別種を産んだり、また群れの中ですっきりー!したいゆっくりが親れいむをれいぷすることがあるためである。」が理由で産まれましたよね? 例えば、父まりさ種で母ありす種のまりさと父れいむ種で母ぱちゅりー種のれいむがすっきりー!するとありすやぱちゅりーが産まれるのですか? 元ネタ絵の画像を一瞬しか見てなかったので、「まりさやありすが死ぬと悲しむ人が多少出るが、 れいむが死ぬと みんな喜ぶ」作品かなと思ったら違った意味での作品でした。 そう言えば、群れが滅びる原因って90%れいむ種のせいって聞いたことあるような……。 -- 2016-10-09 22 05 11 私はれいむ種が悪いと思います。 だって、狩りが出来ない、馬鹿で、歌ってばかりで、何の考えずにすっきりー!して、まったく反省しないれいむ種達を群れの一員として認めていた群れの方がまだ善良だと私は思いました。 これ読みましたが、完全に「働かざる者食うべからず」じゃないですか。 毎日歌ってゆっくりしたツケが回ったのが赤ゆっくり食料システムか……。完全に自業自得だから、憐みを感じません……。むしろ、ざまぁと思ってます。 私もこんな目に遭わないように気を付けないと……。 -- 2016-12-30 11 05 20 虐待読んで何言ってんの? 議論とか馬鹿なの? -- 2018-07-03 04 46 31 れいむ種とかいう無能なゴミも使い道はあるってね。✴ -- 2018-11-07 07 12 23 ゆん森でフル漫画でてほしい -- 2021-10-31 18 29 44 なんかピクミンのクイーンチャッピーを思い出した -- 2023-08-20 23 51 28
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/1655.html
ゆめみるれいむときゃっしゅさん 39KB 自業自得 差別・格差 野良ゆ 赤子・子供 現代 内容の割に長いです 深夜。住宅街から外れた、とある道路脇。 「あ~、ヤバイ。これはヤバイわ・・・」 ブツブツの何かを呟きながらおぼつかない足取りで歩く男が一人。 どう見ても酔っ払いだ。 「う・・・う・・・お゛ええ゛ぇぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」 そのうち、電柱に寄りかかって吐き出した。最悪だ。 しかし男は少しスッキリした様子で、足取りも気持ち軽く歩き出した。 そんな男の前に――― 「にんげんさん、どう?すこしよっていかな~い?」 「「ゆっくちきゃくひきしゅるよ!!!」」 妙な口調のれいむと、夜中にあるまじき大音声の赤れいむ二匹が、話しかけてきた。 「あ、ゆっくり?・・・そこのやつならくれてやってもいいぞ」 電柱の根元にある、己の吐瀉物を指差す男。何処までも最低だ。 「ゆ!!?いらないよ!なにかんがえてるの!? れいむたちは“しょーばい”しにきたんだよ!!」 「なんだ、物乞いじゃないのか…で、なんだ、商売か・・・何売んの?」 男は律儀に、親れいむの話に耳を傾ける。 最も話をちゃんと聞いているのかは怪しい物だが。 しかしそんなことはゆっくりには関係がない。かまわず話を続ける。 「れいむたちがうりたいのは・・・これだよ!!」 れいむが得意げに目線を寄越した先にあったのは 「はやきゅきちぇにぇ!ぐじゅはきりゃいだよ!!」 「あんまちしちゅこいちょしぇーしゃいしゅるよ!!」 「ゆ…ゆ……やめちぇ、ゆっくちあるきましゅから…」 「「ゆっくちちないでにぇ!!このぐじゅ!!!」」 「はい……」 二匹の赤れいむに、ぶつかられるように押されて出てきた一匹の赤ありすだった。 赤れいむと比べて身体は小さく、どう見ても元気がない。 そんなありすをゴミを見るような目で一瞥して、親れいむはこちらに向き直った。 「さあ、このやくたたずをすきなようにしてもいいよ! おれいはきゃっしゅさんでいいからね!!」 「「ちょーらいにぇ!!」」 「うぅ・・・おねがいしましゅ・・・」 そう言われても『はいそうですか』と言えるわけがない。 男は戸惑いながら、親れいむに聞く。 「なんで急に…?しかもそのありすは誰だ? 役立たずを好きなようにしていいって……」 「ゆふん!まぬけなにんげんさんにもわかるようにせつめいしてあげるよ!!それは(割愛します)」 例によってゆっくりの説明は長ったらしくて解りにくいので、訳した物で説明しよう。 「れいむはレイパーに襲われたシングルマザーだよ! れいむに似たおちびちゃんは可愛いけど、レイパー似のチビはいらないよ!! でもゆっくり殺しはできないから、せめて何とかして役に立ってもらうよ!れいむは頭が良いね!!」 以上である。 「そーですかー。・・・でもなんで俺なんだよ。ゆ虐趣味とか無いんだけど」 「にんげんさんのなかには、ちいさいこがすきなにんげんもいるってきいたよ! だからそういうにんげんだったらきっとうれるとおもったよ! にんげんさんはなんだかゆっくりしてそうだったからこえをかけただけだよ!!りかいできた?」 どうやら、酔っ払っていたので気分が良さそうに見えたから、というだけらしい。 「さあ、どうするの?ゆっくりできるちゃんすだよ!すきにしてね! ぼこぼこにしてもいいし、すっきりのどうぐにしてもいいよ!!」 「「しゃっしゃちょこのぐじゅでしゅっきりしちぇにぇ!!!」」 なお自慢げに聞いてくるれいむたち。 勿論答えは――― 「いや、いらんわ」 NOである。 「ど、ど、どぼじでぇぇぇ!!?」 「おかーしゃんにょかんぺきにゃしゃくしぇんにゃにょにぃぃぃ!!」 「ゆっくちしゃしぇちぇぇぇぇ!!」 「・・・ありしゅひどいこちょしゃれないにょ?」 騒ぐ饅頭三匹に、安堵する者が一。 男はかまわず疑問に答える。 「だから俺にゆ虐趣味は無いっての。 しかも小さい子が好きって・・・まあ否定はしないけど。 それでも赤ゆっくりはねーよ。第一俺は紳士だし。HENTAIな真似とかしないし」 「そんなぁ・・・じゃあどうすればいいの?」 「そう言われてもな。第一、そのありすを売るってのが駄目なんじゃないのか? しかも売る側のお前らがいらない役立たずって言ってたら感じ悪いだろ。もう少し考えろよ」 「じゃあほかには、かわいいれいむのおちびちゃんはだめだし・・・そうだ!」 親れいむが何かに気付いたように、急に俯いていた頭を上げた。 「そういうことだったんだね、にんげんさん・・・しかたないね。れいむがひとはだぬぐよ!!」 「はあ?」 話の流れがつかめない。男は首を傾げるばかりだ。 「ちびちゃん、おかーさんの“ゆうし”をちゃんとみておいてね!!」 「がんばっちぇ!おかーしゃん!!」 「にゃにしゅるかわかんにゃいけど、きっちょしゅごいこちょだよ!!」 「お、おかーしゃん。がんばっちぇ「おまえにはいってないよ!!」ゆん・・・」 「で、どうするんだ。一肌脱ぐってどうやって?」 「ゆっふっふっふ・・・あんなぐずよりもかわいいれいむのほうがいいにきまってるよね。わかるよー」 全く聞いてない。完全に自分の世界に陶酔している。 そろそろ放っておいて帰ろうかと思った頃に、れいむはやっとこちらに戻ってきたようだ。 そして気合を入れると、後ろを向いて体を前に倒して、こう叫んだ。 「ゆっくりれいむをみていってね!!!」 「・・・は?」 親れいむはこちらに汚い尻(?)を向けて、フリフリ振っている。 ハッキリ言って気持ち悪い。生理的に受け付けない。 男は、気味悪い、苛つく、ワケが分からない、といった具合で混乱気味だ。 そんな男に、れいむは子馬鹿にしたような目つきで言う。 「れいむがにんげんさんのすっきりーっをてつだってあげるっていってるんだよ!!」 「スッキリって…ああ、そういうことか。 ・・・って何で俺がやらなきゃいけねーんだよ!!しかもお前なんかで!!」 「さいしょかられいむがめあてだったんでしょ? それならあのくずありすにきょうみがないっていうのもなっとくだよ!」 どうやったらそこまで飛躍した発想になるのか教えて欲しいものだ。 「でもざんねんだけどれいむはにんげんさんとのすっきりはしたくないよ! だからかわりにかわいいれいむのまむまむをみせてあげるからそれでゆるしてね!! これでもかんがえられないほどのさーびすをしてるんだよ!!ありがたくおもってね!!」 好き勝手にのたまうれいむに、男はだんだん腹が立ってきた。 当たり前だろう。自分は何も言ってないのに、最初はロリコンのHENTAI。 次はゴミ袋に欲情して、一人でナニするろくでなしに勝手に仕立て上げられているのだから。 (さっきまでいい気分だったのに・・・俺がなにか悪いことをしたか?) 怒りは膨れ上がり、やがてやり場のないものに変わり――― 「さあ!しこってもいいのよ!!!」 ―――プツン れいむが得意げに尻についた妙な汚い穴を見せたとき、とうとう男の中で何かが切れた。 「うるせえぇぇぇぇぇ!!!死ねえぇぇぇぇぇぇ!!!!」 「ゆっ、う゛ぎゅぼっ!!!?」 「「おきゃーしゃーーーん!!」」 「お・・・おかーしゃん!?」 男は怒りの全てを足に乗せ、れいむの汚い穴目掛けて思いっきり蹴飛ばした。 男の蹴りは巨大な重い饅頭であるれいむを浮かすほどのものであった。 れいむは数メートルほど転がり、無様に地に這いつくばる。 「ゆ゛ぅぅ゛ぅ゛・・・で、でいぶのめいきなまむまむさんがぁぁぁぁ!!!」 自慢の汚いまむまむがあった場所には、男の蹴りによって無残に大穴が開いていた。 「これじゃもうびゆっくりとすっきりできないよぉ・・・」 体中砂糖汁に塗れながらブツブツ呟くれいむ。 「・・・あ~、スッキリした~!!」 対して男はとても晴れやかな顔をしている。 先ほどの怒りと一緒に、日ごろのストレスも吐き出したらしい。 「おかーしゃんをいじめにゃいで・・・」 「うん?」 気分を良くした男に語りかけてきたのは、一匹だけの赤ありすだ。 他の二匹の赤れいむはというと、母親に寄りかかるでもなく黙って電柱の裏で震えている。薄情なものだ。 「いじめないでって・・・お前だって散々あいつらにひどい事されてきたんだろうに」 「ゆ~ん・・・しょれでもありしゅのかぞくだきゃら、ありしゅにとっちぇだいじにゃんだよ・・・」 なんともいじらしいではないか。あれだけの不遇に遭いながら、それでもかばおうとするとは。 隅で我関せずと目を逸らしながら震えている赤れいむたちとは大違いだ。 ゆっくりは徹底的な利己主義者ばかりだと思っていた男は、赤ありすの姿に心をうたれた様だ。 そして、思いつく。 「・・・なあれいむ。俺がこのありす貰っていいか?」 「いだいよぉ・・・ゆっ?どういうことなの・・・?」 「だからこのありすを、俺が引き取るのさ。いわゆる身請けってやつだ」 「ゆぅ゛・・・それは・・・」 確かに忌々しいレイパーの子が居なくなるのは、れいむにとって喜ばしいことだ。 しかしあいつは貴重な商売道具である。そう簡単に手放していいものか・・・ 「勿論タダとは言わない。これが代金だ」 男が財布から取り出して、れいむの前にハラリと差し出したのは・・・千円札だ。 「きゃ、きゃっしゅさん!!!」 「これはありすの身請け金と・・・まあお前を蹴ってスッキリした分だとでも思ってくれ」 「あ、ありがとうにんげんざん!!そんなくずさっさとつれていってね!!」 「言われなくてもそうするさ。じゃあ行こうか、ありす」 「ゆっ!?」 話から取り残された赤ありすは、何がなんだかといった様子だ。 「これからお前は俺の家で暮らすことになったんだ」 「ど、どうちて?ありしゅおかーしゃんたちといっちょにいちゃいよ・・・」 「お前がいると、あいつらはゆっくりできないんだと。 あいつらとお前が両方ゆっくりするには、これが一番いい方法なんだ」 「・・・しょうにゃにょ、おかーしゃん?」 ありすが問い質そうと振り向いた先には――― 「ゆわーい!!きゃっしゅしゃんだよ!! きゃっしゅしゃんがあればにゃんでもできりゅよ!!」 「きょれであみゃあみゃいっぴゃいにんげんかりゃもりゃえりゅにぇ!」 「そうだねおちびちゃんたち!これでにんげんをどれいにしてやろうね!!」 「あにょありしゅでもやきゅにたちゅんだにぇ!!」 「「「ゆっゆっゆっゆっゆ!!!」」」 集まって下卑たことを言いながら汚い身体を揺らすれいむたちがいた。 もう赤ありすのことなど殆ど頭には残ってないようだ。もちろん心配する素振りなど見せない。 「お、おかーしゃん・・・れーみゅ・・・」 「わかっただろ?お前はあいつらの幸せと引き換えにウチに来たんだ。 な?そういうことにしておこう。なに、ウチでの生活だってそう捨てたもんじゃないさ。 少なくとも今よりは数段豊かになるはずだ。不便な思いもさせないつもりだし」 「ゆぅ・・・じゃあにんげんしゃん。これきゃらゆっきゅりしゃしぇちぇもらいましゅ・・・」 結局赤ありすは折れたようだ。子供ながら、もうどうしようもないことを悟ったのだろう。 「きょうはおうちにかえってえんかいするよ!!」 「おいちいもにょたくしゃんたべれりゅにょ?」 「そうだよ!おうちにあるものぜんぶたべたらきゃっしゅさんであまあまもらいにいこうね!!」 「きゃっしゅしゃんにはにんげんもかにゃわにゃいんだよにぇ!!ゆっきゅりできりゅよ~♪」 能天気に騒ぐれいむたちとは逆の方向に、ありすを抱えて男は去って行った。 だが、もうれいむたちにはそんなことは関係ない。 この世の全てを手に入れたかのように、舞い上がっていたのだから。 ―――――――――― 『『『いらっしゃいませ!』』』 「いらっしゃいませ。ようこそ、ONNY・SUNへ。本日は季節のタルトが―――」 ここは、町内でも評判のお菓子屋『Patisserie ONNY・SUN』である。 全体的に白を基調とした店構えと、控えめの内装が静かで清潔感のある雰囲気を出している。 肝心の販売している洋菓子や飲み物の味も申し分なく、 値段も手頃なことから常に訪れる客が絶えない話題の店だ。 今日も多くの女性が、男性が、入れ替わるように店に押しかけている。 そんな中――― 「ついたよおちびちゃん!ここであまあまさんがもらえるんだよ!!」 「にんげんがいっぴゃいだにぇ!!」 「れーみゅたちはたくしゃんきゃっしゅしゃんをもっちぇりゅんだよ!! しゃっしゃちょどれいになっちぇあみゃあみゃよこしぇ!!」 店内の雰囲気に全くもってそぐわない、汚い饅頭が三匹やってきた。 ちなみに親と思われる一番大きいやつの口の下には大穴が開いていて、それが一層気味悪さを引き立たせている。 やつらは場の空気も読まずに大声で話している。周りの迷惑などお構い無しだ。 『やだ、あれ・・・』 『野良だろ?汚いな・・・』 『お店が汚れちゃうわ・・・』 『折角の良い気分が台無しよ・・・』 『うわっ、近寄るなよ。気持ち悪い!』 やがて店内の客も、大声で話す野良ゆっくりに気付いてそれぞれヒソヒソと話し出す。 出てくる話に好意的な内容のものなど一つも無いのだが、肝心の饅頭たちは当然そんな事には気付かない。 「ゆっ!?なんだかさわがしいね!」 「きっちょれーみゅたちがきゃっしゅしゃんもっちぇるかりゃおどろいちぇるんだよ!!」 「しゃしゅがきゃっしゅしゃんだにぇ!はやきゅあみゃあみゃもっちぇきょい!!」 周りの空気も意に介さず大声で鳴き続ける野良たちの前に、 黒と白の制服を着た店員らしき若い青年が立ち塞がった。どうやらこの店の制服みたいだ。 青年は表情を崩さず、あくまでも穏やかな顔でゴム手袋を嵌めた手を軽く構えている。 「なにぼーっとつったてるの?これがみえないの?」 そう言った親れいむが身体を震わせると、 リボンの辺りからクシャクシャになった千円札がころりと落ちた。 ついでに身体に付いたゴミや虫の死骸なんかまで床に落ちて、れいむの周辺を汚した。 それを見た客はまた一斉に眉をしかめ、目の前にいる店員の青年も一瞬ピクリと顔を歪ませる。 しかし全く気に留めない野良れいむたちはかまわず騒ぎ続ける。 「いくらばかなじじいでもわかるでしょ?これはきゃっしゅさんだよ!! わかったらはやくどれいになってね!!それであまあまちょうだいね!!」 「しゃっしゃちょあみゃあみゃもっちぇこい!!ぷきゅー!」 「きょにょきゃっしゅしゃんがみえにゃいにょ? きょれだきゃらばきゃにゃじじいはきょまりゅにぇ! あみゃあみゃももっちぇこれにゃいにゃんちぇばかにゃにょ?ちにゅにょ?やくたたじゅにゃにょ?」 「・・・お客様方、大変失礼致しました! 非情にご不快な思いをさせたことを心よりお詫び申し上げます! この野良ゆっくり達はこちらできちんと処理しますので、ご安心ください!」 「うる・・・いだい゛!ひっぱらないでぇ!!でいぶのがみぢぎれぢゃう!!」 「ゆんやぁぁ゛ぁ゛!!れーみゅにょきゅーちくりゅにゃかみしゃんがぁぁ!!」 「いちゃいよ!やめちぇにぇ!!きちゃにゃいちぇでれーみゅにしゃわりゃにゃいでにぇ!!」 「誠に申し訳御座いませんでした。それでは引き続き、ごゆっくり―――」 良く通る声で店内全体に告げた後、青年はれいむ達の髪やもみあげを掴んで店の奥へと引っ込む。 そしてその声を聞いた人々は多少訝しげにしながらも、それだけで店内は元の平穏な空気に戻った。 「「「ゆげんっ!!!」」」ブチッ 野良一家が放り出されたのは店の裏口。 駐車場からも離れていて人通りが少なく、多少の大声なら迷惑にならない。 そんな場所だ。 「ゆぴぃぃぃぃ!!れーみゅのきゃわいいもみあげしゃんがぁぁぁ!!」 「おぢびぢゃぁぁん!どぼじでごんなひどいごどずるのぉぉぉ!!」 「どりぇいにょくちぇにいもーちょにひどいこちょしゅるにゃぁぁぁ!!!」 赤れいむの片割れのもみあげが、投げ出された際の衝撃に耐え切れず放り出された拍子に千切れたようだ。 もっとも、青年が意図してやったことではない。ただ赤れいむのもみあげが脆すぎただけだ。 「れいむのおちびちゃんがかわいそうだよ!! これからどうやってぴこぴこすればいいの!!?」 「ぴこぴこしゃんはゆっくちできちゃにょにぃぃぃ!!」 「くしょどりぇいにょくしぇににゃまいきぢゃよ! にゃんちょかいっちゃりゃどうにゃにょ!?ぷきゅ~!!」 「・・・・・・」 ピーピーと鳴き喚く野良一家であったが、青年は何も言わずに、ただ見下ろしている。 その、どことなくゆっくりした様子に野良一家の怒りは更に深くなった。 「はやきゅにゃんちょきゃちりょ!くしょじじい!!」 青年は何も答えない。 「かわいいおちびちゃんにはやくあやまってね!!それといしゃりょうとしてあまあまうわのせしてね!!」 こちらをじっと見つめたまま、微動だにもしない。 「きゃっしゅしゃんでみょいいよ!!たくしゃんよこちてにぇ!! あちょきゃわいしょうにゃいもーちょにどげじゃしちぇあやまっちぇね!」 そのままゆっくりと足を上げる。 「「はやきゅきゃわいしょうにゃれーみゅ(いもーちょ)にあやまりぇ!!」」 「れいむはしんぐるまざーなんだよ!!どれいははやくやさしくしてね!!」 そして、まるでれいむ達の抗議(笑)を嘲笑するかのように、少し息を吐いた。 「「「ゆがあぁぁ!!むじずるなぁぁ゛ぁ゛!!!『ブチッ』「ぴっ!」」」 青年が足を踏み付ける様に下ろすと同時に、何かが潰れる音がした。 「ゆっ!?なんのお・・・お・・・おちび・・ちゃん・・・?」 親れいむが何事かと音のした方向に視線をよこすと、 そこには青年の足と、足の下には地面に広がった餡子の花。 この状況を見ればいくら間抜けで物分りの悪いれいむでも一瞬で理解できる。 あれは、もみあげをなくしてないていたおちびちゃんだ。 「おぢびぢゃぁぁぁ゛ぁ゛ん゛!!!」 「ゆわぁぁぁ!!!れーみゅ!!れーみゅぅぅぅ!!!」 あまりの惨たらしい光景に叫ぶ野良親子。 そして、それでも尚微動だにしない青年。青年は黙って野良一家を見下ろしている。 大事な家族が殺されて黙っている者はいないとばかりに、れいむたちは怒りを青年にぶつけようとした。 あまあまなんか関係ない。もう奴隷にもしてやらない。 きゃっしゅさんの力を使っておちびちゃんと同じようなめに遭わせてやる!! 「おちびちゃんをころしたくそじじいはきゃっしゅさん・・・で・・・・」 「よきゅもれーみゅにょいもーちょをころちたにゃ!しょんにゃく・・じゅ・・・・」 しかしその思いも一瞬で打ち砕かれてしまった。 「・・・・・・」 先ほどまで穏やかだった青年の表情は、全く正反対の物になっていた。 今の青年の眼はどこまでも無関心な物に対するもので、冷たかった。 どうということはない。 青年の眼を見た瞬間に、勇ましい怒りなど吹き飛んでしまったのだ。 「ゆっ・・ゆっ・・・ゆあぁ・・・」 「たしゅけちぇ・・・ころちゃにゃいでぇ・・・」 青年の眼は今までれいむ達が散々見てきた、決して関わってはいけない種類の人間の目。 ゆっくりを生き物どころか、ゴミでしかないと思っている人間のそれだった。 野良時代に散々逃げ回ってきた種類の人間が目の前にいるというだけで、 親れいむは。いや、赤れいむですらも反抗や復讐をする気など消え失せてしまった。 「ゆ・・ゆるじでぐだざい!もうじじいだなんでいいばぜんがら!!」 「にゃんでぇ!?れーみゅにはきゃっしゅしゃんがありゅにょにぃぃ!!」 できる事といえば、無駄だとわかっていての命乞いだけ。 徹底的に染み付いた負け犬根性を覆せるほど、この場においてきゃっしゅさんは頼りになる物ではなかった。 が、青年はそれすらも聞いていない。 ただ、ゆっくりとしゃがみこんで、れいむ達に顔を近づけて 「これでもう、あれこれ心配する必要無いだろ?」 言い放った。 れいむ達は、凍りついた。命乞いの言葉すら出なくなった。 れいむ達が固まったのを見て、青年は立ち上がる。表情は変えない。 そのまま十秒ほどして野良親子がガタガタと震え出すのと同時に、後ろの方から声がした。 「あれ。先輩、おはようございます。どうしたんッスか?こんなとこで。あ、饅頭」 声の主は、とても大きくガッチリとした体つきの青年。どうやら青年の同僚、後輩のようだ。 後輩の姿を確認した青年は一瞬で先ほどまでの穏やかな顔つきに戻った。 とは言っても、れいむ達を見るときの目だけは全く変わっていないのだが。 「ああ、おはよう。実はこいつらが店に入ってきてね。おかげで入り口付近がドロドロさ」 「あー。それは災難でしたね。で、どうするんですか?それ」 後輩に指を指されてれいむ達の身体がビクリと震える。もはや声も出ない。 「それなんだけど、こいつら捨ててきてくれない?」 「はい?・・・俺がッスか?」 「そうそう。近所の自然公園の近くに行って、投げ捨ててくれればそれでいいからさ。 僕がやってもいいんだけど・・・もしこの格好でゴミの投げ捨て見られちゃ、まずいでしょ?」 「まあ店の評判に関わりますね。そういう事なら別にいいッスよ。 投げ込んでもいいならそんなに時間も掛からないし、ここで潰して後片付けさせられるよりなんぼかマシです」 「悪いね。今の時間帯なら人も居ないから多分大丈夫だと思うよ。 でも一応場所は選んでね。もしそれで遅くなっても、事情は僕から言っておくから心配しないで。 ああ、小さい方はでかい方の口の中に突っ込んで、纏めてから投げた方がいいよ。 そうすれば着地の衝撃で潰れないから公園を汚さなくて済む。適度に弱らせられるし」 「ウッス。じゃ、やりますか」 あれよという間に話はまとまり、 青年のGOサインを貰った後輩はゴム手袋を嵌めて、気だるそうに野良親子に近寄る。 そして突如迫り来る後輩の姿を見て焦るのは野良れいむの親子だ。 「な、なに!?ちかよらないでね!!」 「ゆっくちできにゃいにんげんはきょっちきゅるにゃぁぁ!!」 先ほどまで恐怖で震えて青年達の話を何も聞いていなかった親子であったが、流石にこの妙な雰囲気には気付く。 そして後輩の姿を見て警戒するのも当然の事。 何故なら後輩の青年もまた、あの関わってはならない人間の眼をしていたから。 「きょにゃいでにぇ!!ゆ・・ゆ・・・くるにゃぁぁうぎゅ!?」 精一杯の抵抗もむなしく、赤れいむは後輩の青年に掴まれてしまう。 「おちびちゃんをはなしてね!!れいむおこるよ!ぷ『ボキャッ!!』ぎゅっ!!?」 そして大事な子供を取り返さんとなけなしの勇気を振り絞って精一杯の抵抗であるぷく~をしようとした所に、 思いっきり赤ゆを持った方の拳を突き入れられた。 「よ・・・っと。ほれ、吐き出すなよ。何度でも歯ぁヘシ折って突っ込むからな~」 「むぐぅぅぅ!!べいぶぼぶぶぐびいばぼがばびびぼびびびゃん゛ばぁ゛!!」 おそらく歯を折られたことを嘆いているのだと思われるが、口を閉じているせいで何を言っているのかは解らない。 閉じているというよりも、後輩の青年の手によって無理矢理閉じられていると言った方が正しいのだが。 「さっさと終わらせますか~っと。・・・あれ?なんだこれ。千円札?」 親れいむの髪に引っかかっていた紙切れを見て、後輩が呟いた。 「ん?ああ、持ってきてたのか。随分ちゃっかりしてるもんだねえ」 「金持ってるゆっくりってのも珍しいッスね。 それにしても・・・この千円札どうしましょうか?」 「後で僕が交番にでも届けておくよ。千円でもお金はお金だし。 どうせ落ちてたのをガメたんだろうし、もしかしたら持ち主が出てくるかも」 「わかりませんよ。もしかしたら“おうた”で稼いだものかも」 「あの公害並の騒音で?ハハッ、中々面白い冗談だね。 あんなもの、グリンピースがどうとか言ってる保護団体ですら金なんか払わないよ」 「でしょうねぇ。さーて、急ぎましょうか。これから掻き入れ時ですしね!」 「ああ。僕もさっさと潰れた饅頭片付けて、そろそろ戻らないと!」 こうして和やかに話した後、眼を白黒させながらもがくれいむを抱えて後輩は去っていった。 青年は早足で掃除道具を持ち出し、手早く饅頭の残骸を片付ける。 そして、あれが来るだけで随分余計な仕事が増えるなぁ。と、一人でぼやきながら店内に戻った。 向こうでは、今まさに汚れた饅頭が空を飛んでいるところだった。 ―――――――――― 「………ぃぃいいい!!!っゆぎぃ!!『ゅ…ぃ!!』げぺっ!!」 思いっきり地面とちゅっちゅしたれいむは、ピクリともせずにその場に転がった。 「うぅ゛・・・どぼじでぇ・・・」 れいむは皮が破れそうな痛みでロクに身体も動かせないまま考えていた。 「きゃっしゅさんがあればにんげんはでいぶのどれいに・・・」 そう。きゃっしゅさんがあれば、人間は言うことを聞くのではなかったのか。 そもそもれいむがきゃっしゅさんの存在を知ったのは、子ゆっくりの頃である。 野良であったれいむは父も居らず、唯一の親であった母れいむを見て育ってきた。 れいむの記憶に残る母は、いつもおうたを歌っていた。 赤ゆっくりの頃も最低限の食糧しか獲ろうとせず、その代わりにゆっくりできるおうたを聴かせてくれた。 そして、自分がゴミ漁りをできるようになると食糧集めは全て自分に任せて、 今度は自分に聴かせるのではなく、いつも人間が沢山いるところでおうたを歌った。 当時のれいむはよく聞いたものである。「どうしてそんなにおうたばっかりうたうの?」と。 それに対する親の答えは、いつも「にんげんさんはこうやってればきゃっしゅさんをくれるんだよ!」だった。 毎日毎日、母れいむはおうたを歌い続けた。 きゃっしゅさんとはそこまで苦労するほど良い物なのだろうか? その疑問に対して母れいむは 「きゃっしゅさんはすごくゆっくりできるんだよ。 あれがあればにんげんさんだってさからえないよ。 あまあまだってほしいだけたべれるよ!もうこんなくらしをしなくてすむんだよ!!」 ひたすらそう答え続けた。まるで自分に言い聞かせるように、いつだってそう言い続けた。 れいむはどれだけ母が頑張っているか、よくわかっていた。 でもこれっぽっちも。きゃっしゅさんどころかあまあまの一欠片でさえ、誰もくれなかった。 それどころか必死に歌う母れいむに誰も見向きもしなかった。 あんなにれいむが大好きなおうたをがんばっておかあさんは歌っているのに・・・ そして母が生きている間にれいむがキャッシュさんを見ることは、ついぞ無かった。 れいむにとってはとってもゆっくりできるお歌だったのに、 うるさいと言われて母れいむはあっさりと潰されてしまったから。 幸いというべきか、ご飯を集めながらいつも遠くで母の姿を見ていたれいむはそれに巻き込まれることは無かった。 そして、生き残ったれいむは一つの目標を立てることになる。 「なにをしてもきゃっしゅさんをてにいれてしあわせーっになる」と。 結局きゃっしゅさんがどういうものなのか、具体的にれいむが知らされることはなかった。 しかし愛する母がゆん生をかけて求めたものなのだ。きっとすばらしいものに違いない。 きゃっしゅさんを手に入れて幸せになることが、母への弔いになるように思えて仕方が無かった。 そして月日は流れ、いつしかれいむは成ゆっくりになっていた。 しかし、未だにきゃっしゅさんには巡り会えない。 れいむは、おうたを歌ってきゃっしゅさんをもらう事は考えなかった。 自分よりもゆっくりしたおうたを歌えた母が潰されたのに、自分が上手くいくとは思えなかったから。 だから何か別の方法で探そうと決めたのだ。 が、なにを思いつくわけでもなく時は過ぎていく。 そもそも今日を生きるだけで精一杯で、きゃっしゅさんを貰う案など考える暇が無いのだ。 そんなある日――― 「ゆっふっふ、れいむ!これをみるんだぜ!!」 「なに?まりさ。・・・なんなの?そのぺらぺらさん」 「なんだ。れいむしらないのかぜ?これはきゃっしゅさんなんだぜ!!」 「そ、それがきゃっしゅさんなの!?」 「そうだぜ!!このぺらぺらさんがいちばんゆっくりできるきゃっしゅさんなんだぜ!! さっきおちてたのをまりささまがひろってまりささまのものにしたんだぜ!!」 「ゆゆ~ん。うらやましいよぉ~・・・」 「ゆふん!まりささまはこれでにんげんをどれいにしてゆっくりするのぜ! じゃあうすぎたないれいむはこれからもがんばってなまごみさんでもあさってるんだぜ!!」 そう言って野良仲間のまりさは元気に跳ねていった。 その後ろ姿を羨ましげに見つめるれいむ。 しかし、 「見つけたぞ、この泥棒饅頭!!」 「ゆっ!?ゆぎぃ!!」 突然まりさは人間に潰された。 少し離れたところで、れいむが固まりながら見ていると 「ど、ど・・ぼ・・じで・・・」 「うるせぇ!人が落とした金勝手に拾いやがって! これだからてめぇら野良は見過ごせねぇんだ。とっととくたばれ、このゲスが!!」 「ゆ゛っゆ゛っ・・・も、もっどゆっぐりあ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!やべでっ……」 あっけなくまりさは、人間の手によって殺されてしまった。 この件でれいむはきゃっしゅさんの形と 「落ちてるきゃっしゅさんは拾っちゃいけない」ということを学んだ。 やはり母がやっていたように人間をゆっくりさせて、きゃっしゅさんを貰わなくちゃいけない。 今度こそれいむは何をすべきかを見定めたのだ。 そして紆余曲折を経て、ようやくあの目障りなチビと引き換えに念願のきゃっしゅさんを手に入れた。 誰かから殺して奪い取ったわけでもなく、本当の意味で手に入れたきゃっしゅさん。 これさえ人間に見せれば何でも叶うはずだった。 そのはずだった。なのに・・・ 「ぜんぜんゆっぐりでぎないよぉ・・・おがあざんのうぞづぎぃ・・・」 何故こんな目に会っているのだろう。おまけに大事なおちびちゃんまで失って。 ・・・そうだ、おちびちゃん!れいむのおくちのに入ってたおちびちゃんは!? 「ゆ・・ゆ・・ゆっ・・・くち・・・」 口の中にいたはずの赤れいむは、れいむのすぐ傍で倒れていた。 「おちびちゃん!!」 れいむは痛みや怪我で動かない体を必死に引きずって、赤れいむの下へと這いずっていく。 どうやられいむが地面にぶつかった時に口から吐き出されたらしい。 激突によるダメージは無いようだ。しかし・・・ 「い・・いちゃいよ・・・おかーしゃん・・・」 「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!・・・どぼじであんござんでてるのぉぉぉ!!?」 赤れいむは、あんよから餡子を漏らしていた。 出ている量は多くないが、ただでさえ小さな赤ゆが命の源を垂れ流しているのだ。 このまま放っておけばいつか致命的な量になるのは、誰から見ても明らかである。 「ぞんなぁ!でいぶのおぐぢはあんっぜんっだったはずなのにぃ!!」 れいむはそう言うが、事の真相は「れいむが着地の拍子に、子供の皮を噛み切った」というもの。 つまりはれいむのせいである。 しかし、れいむがそんなことを理解できるはずもない。 「ぺーろぺーろ!おちびちゃんゆっくりしないでなおってね!!ぺーろぺーろ!!」 ただ必死に傷口を舐めるだけだ。 しかし勿論舐めるだけで傷が治ったりはしない。 成ゆっくりならともかく、赤ゆっくりではなおさらだ。あくまでも一時的な凌ぎにしかならない。 「どうしよう!れいむのひとりしかのこってないおちびちゃんがしんじゃうよ!どうしよう!」 為す術もなく慌てるれいむ。 そんなれいむを、疎ましげな様子で覗き込む一つの影があった。 「あん?騒がしいな。また野良かよ・・・あらら、死に掛けてら」 「ゆっ!?にんげんが・・・お、おにいさん!!」 「へ?なんで俺のこと知ってんの?」 「まえにくらいときにあったでしょ?わすれちゃったの?」 「・・・ああ、あのときの一家か!」 そう。影は一昨日の夜に遭った、あのクズときゃっしゅさんを交換した人間だった。 そうと分かったれいむは、子供の事も忘れて怒りを男にぶつけた。 「どういうことなの!あのきゃっしゅさんみせてもにんげんがどれいにならなかったよ!」 それに対して男は飄々とした態度を崩さない。 「キャッシュさん?・・・ああ、やっぱり使えなかったか」 「やっぱりって、じゃああれはほんものじゃなかったんだね!!」 「いいや?あれは間違いなく本物だよ。俺に偽札持つ度胸なんてあるわけないじゃん」 「ゆ!?じゃ、じゃあなんで・・・」 「う~ん、理由は沢山あるけど・・・一番の理由はお前がゆっくりだから、かな」 その言葉を聴いた途端、れいむは凍りついた。 「お前、お金がどう使えばどうなるか、ちゃんと知ってるか?」 「ゆ・・きゃっしゅさんはみせればなんでも・・・」 「ほらわかってない。普通に考えて、見せれば何でも上手くいく道具なんてあるわけないだろ」 「じゃあなんで・・・」 「それを知っても意味がないんだよ。だってお金ってのはさ、 人間だけの、人間による、人間のための道具なんだから。 普通は人間とまともに商売するなんて事、できるわけないのに」 「でもおにいざんは・・・」 「俺?俺は、ほら、酔ってたとはいえお前の言う通りスッキリしちゃったんだからさ。 饅頭が相手でも取引成立したのを無視して―――って言うのも後味が悪いんだよ。よく律儀だって言われます」 「ぞんなぁ・・・じゃあでいぶのかんっぺきっなさくせんさんは・・・」 「完璧って、どこが?そりゃおまえらみたいな汚い饅頭がいきなり店に来て 『さっさとなんでもいうこときいてね!!』だなんて、千円札ごときを振り回して言えば追い出されるだろ。 いやー、まさか本当にやるとは。馬鹿な事したなぁ。チビも・・・あ、一匹いなくなってるじゃん。死んだ?」 人間の言葉を聴いて、またもやれいむは子供のことを思い出した。 「おちびちゃん!れいむのだいじなおちびちゃん!!」 「なんか大変そうだなあ。・・・じゃ、頑張って」 叫ぶれいむを一瞥して、去ろうとする男。 「まってよ!どこいくの!?れいむたちをおいてかないでね!!」 が、唯一助けを求められそうな存在をれいむが逃がす筈もない。 「え~?俺もこれから休日だからこそ、ありすと一緒にこのケーキ食べる仕事が待ってるんだけど」 「け、けーきさん!?これにはけーきさんがはいってるの?」 男が軽く掲げた箱に、れいむの目が釘付けになる。 「ああ。ここのケーキはここらへんでも評判でな。 必死に並んで―――って、お前らに行列の価値なんて分かる訳ないか」 ケーキさん。ゆっくりにとって最高のあまあまだ。 あのあまあまがあればれいむの怪我どころかおちびちゃんも助かるかもしれない。 「そのあまあまさんれいむたちにちょうだいね!ぜんぶちょうだいね!!」 「え、やだよ。なに言ってんの。今の話聞いてたか?常識的に考えてありえねえ」 「どぼじでぞんないじわ゛るいうのぉぉ゛ぉ゛!!?」 「だからこれはありすと俺の分なんだって。何故に貴様らなんぞにやらにゃならんのだ」 ありす・・・あのクズか!あんなクズよりも 「あんなくずよりもでいぶたちのほうがだいじでじょぉぉぉ!!?」 「俺にとっちゃ自分の子や姉妹をクズクズ平気で言うでいぶの方がよっぽどクズだよ」 「いいがらざっざどよごぜぇ゛ぇ゛!!ぐずにんげんん゛ん゛!!」 「へーへー、そうですよっと。俺ァ愚図だから賢いでいぶさんの言う事は解りませんわぁ。 そんじゃあ賢いゲスでいぶさん、お達者で~。これから楽しい楽しいティータイムがありますもんで」 れいむの言うことを受け流して去ろうとする男。 「ゆ゛っ!?ゆ゛っ!?ごべんなざい!みずでないでぐだざい! でいぶがわるがっだでず!おにいざんはぐずじゃないでずぅぅ゛ぅ゛!!」 これはいかんと、急いでれいむが謝った。反射的な鳴き声だとしても、たいしたものだ。 「えぇ~?もういいじゃん。俺が愚図でいいから帰らせてくれよ。そこら辺はどうでもいいからさ」 そもそも帰りたいならさっさと無視して去ればいいのだが、ちゃんと付き合う辺りこの男も中々律儀なものだ。 「でいぶだちそれがないどじんじゃうんでず。がわいぞうなんでず。 ぜめでおぢびぢゃんだげでも・・・」 必死に頼み込むれいむに対して何か感じ入ったのか、男は少し考え込んだ末に 「・・・別にいいよ、考えてやっても」 なんと、承諾した。これを聞いてれいむは大喜びだ。 「ほんとうに!?ありがとうおにいさん!おれいに―――」 「いや。御礼とかはいいから、金よこせ」 「・・・ゆ?」 「だから金だよ、金。人間に何かをしてもらうときにこそ、金が必要なわけ。 わかる?お金。money。キャッシュさん!」 「れ、れいむきゃっしゅさんなんて・・・」 「俺が昨日渡したやつあるだろ?あれ渡せばお前も助けてやるよ。それでも釣りが返ってくるし」 「だかられいむはもうきゃっしゅさんはもってないんだよ!にんげんにとりあげられちゃったよ!!」 「あ、やっぱりそっかー。それじゃあなおせないや。いやーざんねんだなあ」 棒読みの台詞でもわかるとおり、男は全く残念そうに見えない。大体は予測していたのだろう。 「どぼじでぇぇ!?ぞんないじわるいわないでだずげでよぉ!!」 「だって、お前らだって何かするときあまあまとか要求するだろ? なのに何でお前らだけタダで助けてやらなきゃなんねーのよ」 「でいぶはしんぐるまざーなんだよ!かわいそうなんだよ!! しかもおちびちゃんまでしにそうなんだよ!だから!」 「助けてねって?じゃあそんな可哀相なお前らに虐め倒された挙句、 はした金で捨てるように売られたありすはもっと可哀相だなあ。と、言う訳でこれはありすにあげよう。それじゃ」 またも踵を返そうとする男に対して、れいむは引き止める為の言葉を捜す。 しかし、そう何度も都合よく思いつくわけがない。それでもれいむは必死に考えた。 そして出た言葉が 「じゃあかわいいおちびちゃんをうるからそれでおちびちゃんとれいむをたすけてね!!」 これである。 なにをバカな、と思う無かれ。れいむはいたって真剣に、身を切るような想いで言っているのだから。 まあそれでも 「なにをバカな事を・・・」 言っちゃうものなのだろう。 「で・・・でいぶばかじゃないぃぃぃ!!」 「いやあ、十分馬鹿だって。お前さっき俺がなんて言ったか覚えてるか? お前らはクズだって言ったんだよ。 なんで商品価値ゼロのクズを助けるために、わざわざそれを買わなきゃいけないわけ?」 「でいぶもおぢびぢゃんもくずじゃ・・・だってくずのありすをかったのに!」 「・・・じゃあ、そこの死に掛けのチビは“おうた”を歌わず静かにしていられるか?」 「なんでぇ・・・?おうたはゆっぐりできるのにぃ・・・」 「それはお前の感性だろ?第一こっちは静かにしてもらわないと困るんだよ おまえだって、例えば・・・ゆっくりできないやつから隠れてるときにチビに騒がれちゃ困るだろ?」 「ぞれは・・・お、おぢびぢゃんはいつもげんきいっぱいだよ・・・」 「そうか。じゃあ駄目だな。 ちなみにありすは俺の言うことをきいてちゃんと静かにしているよ。都会派とも田舎物とも言わずにな」 それはそうだ。だってれいむ達が散々うるさいって虐めたんだから。 「それじゃ次。ちゃんと俺の言う通り、はしゃがずに大人しくしていられるか? 理由はこれも同じだよ。ゆっくりできないやつが(以下略」 「ゆぅ・・・おちびちゃんはできないよぉ」 「だろうなあ。ちなみにありすはどこでだって大人しくしていられるぞ。 コーディネイトとか言って部屋も散らかさない上に、お家宣言のおの字も出しやしない」 あたりまえだ。れいむ達がいつも隅に追いやっていたせいで、決まった場所から動かなくなっていたのだから。 「ならご飯を食べる時は……」 「ぼうやべでぇぇ・・・」 その後も男はずっと質問を繰り返した。 ありすに比べてそこのチビはどうだ?俺の言う事が聞けるか?お前にとって本当にゆっくりできる存在か? それに対するれいむの答えは、常にNO。 れいむの立場で例えを出された事で、 自分にそっくりなおちびちゃんがどれだけゆっくりしてないかをこの上なく理解させられる事になった。 しかしそれでも認めることができない。 れいむにとって、自分と同じ姿のおちびちゃんは世界一可愛いものだったのだから。 「まあそういうわけだ。お前も、お前の大事なおちびちゃんも、ありすに比べりゃクズ同然。 そんなクズを引き取った上になんで助けてやらなきゃならないんだって話だろ?」 「うぞ・・うぞだぁ・・・でいぶのかわいいおぢびぢゃんは・・ゆっぐりぃ・・・」 「まあ実際ありすはよくできたゆっくりさ。もしかしたらお前、名ブリーダーかもな。 あれだけの躾がされたゆっくりを店で買おうとしたら、七、八万は掛かるだろうなあ。 具体的には、お前にやったキャッシュさんと比べて(お前達には)数え切れないくらい沢山の価値だ」 それを聞いたれいむは、呆然としている。 男の言葉が理解できないのだろうか。それとも、理解したくないのだろうか。 「だからあの千円もそれに比べれば安いものだったんだよ。 それでもお前にとっちゃ、数万円に匹敵する価値があっただろうけど 肥溜めにでも落としたと思えば。いや、それ以上にどうとも思わなかったね。 まあ、俺はちゃんと代価を払わないと物を大事にできない性質の人間でさ。 やっぱりあれだけでも払っといて良かったと思うよ。おかげで今はありすのことが可愛くて仕方ない」 「でいぶのきゃっしゅさん・・・かわいいおちびちゃん・・・」 「でも問題もあってな・・・そうだ!れいむ、取引をしよう!!」 「・・・ゆ?」 「お前のものを貰う代わりに、金をやるよ。つまり商売だ」 「ほんとに?それなられいむたちたすかるの!?それならしょーばいするよ!!」 男の言葉で再び元気を取り戻すれいむ。 しかしそんなれいむの言う事には全く反応せずに、男はれいむの傍に近づいた。 そして――― 「じゃあ、これ貰っていくな」ブチッ 「ゆぎっ!!・・・ゆ・・ゆ・・・ゆあぁぁぁ!!でいぶのおりぼんざんがぁぁぁ゛ぁ゛!!!」 男に千切られたのは、れいむが命と同じくらいに大事にしているおかざりだった。 「それじゃ、これが代金だ。ほらよ」 そしてれいむの前に投げ出されたのは、小さな小さな薄っぺらい玉。 表面に1と描かれたそれは、この上ないほどに軽い音を立てて地面に落ちた。 「これがお前の薄汚いリボンの価値だ。まあ妥当な所だろう?」 「かえじでね!!それがないどゆっぐりでぎない!!がえじでよおおぉぉ!!!」 「何言ってるんだ。その一円玉があれば大事なチビを助けられるぞ。 ・・・まあ、それにはあと百枚ほど。数え切れないほどのそれが必要だけどな!!」 「どぼじで!?でいぶのおりぼんざんがどぼじで!?」 れいむは必死に訴えかけるが、もう男はそんなものは聞いていないようだった。 「ありすの奴、良い子なのはかまわないんだけど、ちょっと情が深すぎるんだよなあ。 早く忘れりゃいいのに、まだお前らの事心配してるみたいでさ。やたら心配するわけよ。 だからこれ使って適当な作り話でもでっち上げようかと思ってな。 『お前の家族は全員事故で無残に死んでたからせめてこれだけでもと思って持ち帰ってきた。 お前は運良くあいつらに最後に救われたんだと思って、精一杯幸せになれるように楽しく生きろ』ってさ。 後は俺がしつけを間違えなきゃ、そのまま完璧なありすの出来上がりだ。いやー、胸が躍るわ!じゃあな!」 大きな笑い声を上げながら今度こそ男は去って行った。 そして、ただ呆然とその後ろ姿を見送るれいむ。 れいむには何が残ったのだろう。 「でいぶはぎゃっじゅざんでゆっぐりじだがっだだけなのにぃ・・・」 ひたすら子供である自分の事も顧みずにきゃっしゅさんの為に歌い続けた母は、何一つ報われる事無く死んでいった。 偶然きゃっしゅさんを手に入れたまりさは、それを活かす機会すら与えられずに殺された。 そして自分は――― ただの思い込みにゆん生を捧げた挙句、大事なおかざりやおちびちゃんも奪われて、こうして傷だらけになっている。 きゃっしゅさんとはなんだったのだろうか。 本当にゆん生も何もかも懸けてまで求めるほど価値があるものだったのだろうか。 答えはもう出ている。今のれいむの姿が、その答えだ。 そこには人間が作った勝手なシステムに踊らされた結果である、哀れなゴミ饅頭が一匹いるだけだった。 「ゆ・・・ゆっくちぃ・・・」 「お、お・・・おちびちゃん!!まだいきてたんだね!!」 いや、一匹ではない。男とのやり取りですっかり忘れていたが、赤れいむがまだ生きていたのだ。 だがしかし、それでも油断できる状況ではない。相変わらず餡子が少しづつ漏れ出ているのだから。 むしろ先ほどよりも明らかに弱っている。もう目の前にいる者を認識すらできないほどに。 このままいけば、やがて餡子不足で息絶えるだろう。 が、たとえそうであっても 「このこだけはたすけるよ・・・もうれいむにはこのこしかのこってないよ!!」 れいむは諦めない。例えリボンが無くて母だと認められなくても、 この先自分がどれだけゆっくりできなくても、この子だけは守ってみせる。 何にも得られなかったれいむのゆん生に、せめてたった一つでも何かを残しておきたかったから。 「ゆっくりてあてするよ・・・ゆーしょ、ゆーしょ」 れいむは痛む身体を引きずって、公園の小さな雑木林の中へ子供を運んでいく。 お飾りが無いれいむが他のゆっくりや人間に見つからないようにする為だ。 「ゆひぃ・・・ゆひぃ・・・ゆっくりてあてするよ。 ぺーろぺーろ。おちびちゃんげんきになってね・・・ぺーろぺーろ」 「だ・・れきゃ・・・たしゅけ・・・ちぇ・・・」 そして自分の身体も省みず、少しでも傷を塞ぐべく一心不乱に傷口を舐め続けた。 あまあまも貰えず、他のゆっくりに助けも求められないれいむにはもうそれしかすることがなかった。 それでもれいむは助かると信じて舐め続ける。 今度こそ正真正銘、自分の全てを懸けて挑んでいるのだから。 「なおしてみせるよ・・・ぜったいにおちびちゃんだけはたすけてあげるからね!!」 「もっちょ・・ゆ・・・っくち・・・ちた・・・きゃ・・っちゃ・・よ・・・ぉ・・・・」 この救命作業は一時間後、れいむの疲労がピークに達して意識を手放してしまうまで続いた。 まあ結局、だからと言ってなにが変わるわけでもない。 動く饅頭一匹がどれだけ死に物狂いになろうとも それだけで奇跡が起こせるほど、この世界は優しく作られてはいなかった。 飾りも無く、生涯懸けてようやく得たお金(チャンス)も失い、まむまむに大穴が開いて他の部分も傷だらけ。 そんな満身創痍のれいむが翌朝一番最初に目にする物は、 餡子が全て抜けてシワシワに萎んで黒ずみ、苦悶の表情を貼り付けたまま息絶えている我が子の姿であった。 ・あとがき 言葉話せてお金持ってれば買い物できるの?そんな訳ないよね! 数百円程度で品位ゼロの、しかも饅頭にヘーコラするとか有りえないでしょう。 余談ではありますが、ゆっくりが自業自得で空回りして無残な目に遭う悲劇(笑)が大好きです。 賛同してくれる方募集中。 では、最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!! また今度! 小五ロリあき 挿絵 byM1 ・過去作品 ふたば系ゆっくりいじめ 412 僕と『あの子』とゴミ饅頭と ふたば系ゆっくりいじめ 446 俺とゲスと自業自得な餡子脳 ふたば系ゆっくりいじめ 460 弱虫まりさとほんとの勇気 ふたば系ゆっくりいじめ 484 ドスと理想と長の資格 前 ふたば系ゆっくりいじめ 494 ドスと理想と長の資格 後 ふたば系ゆっくりいじめ 514 僕とさくやとおぜうさま ふたば系ゆっくりいじめ 548 てんことれいむとフィーバーナイト 前編 ふたば系ゆっくりいじめ 559 てんことれいむとフィーバーナイト 後編 ふたば系ゆっくりいじめ 583 ゆっくりしたけりゃ余所へ行け ふたば系ゆっくりいじめ 599 はじめてのくじょ~少女奮闘中~ ふたば系ゆっくりいじめ 615 お兄さんは静かに暮らしたい ふたば系ゆっくりいじめ 659 よくあるお話 ふたば系ゆっくりいじめ 674 かわいいゆっくりが欲しいなら ふたば系ゆっくりいじめ 701 おうちは誰の物? 小五ロリあきの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 結論 ゆっくりは所詮馬鹿である -- 2018-06-01 18 15 39 れいむがヤクルトスワローズと同じくらいしか価値がないことがわかった。 つまり、れいむがゆっくりしたりヤクルトが優勝したりすると誰も幸せになれない。 -- 2016-03-15 21 48 12 お兄さん得したね♪ -- 2016-01-27 13 34 07 数百円程度で品位ゼロの、しかも饅頭にヘーコラするとか有りえないでしょう。 ところが日本では害饅頭以下のゴミにもへーコラせねばならんのだが -- 2015-09-26 22 11 54 流石は餡子脳!肝心な所は抜かして都合良く覚える♪ 人間でも大金積んで奴隷に成れ!と言う奴は非難轟々だろ。 お兄さんは律儀だけど人望有りそうだ。友人に欲しいな。 アリスはきっと金バッジ級だね!末長くお幸せに♪ 余談ではありますが、ゆっくりが自業自得で空回りして無残な目に遭う悲劇(笑)が大好きです。 賛同してくれる方募集中。 激しく同意!歩く死亡フラグの王道と言っても良いね♪ では、最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!! また今度! -- 2015-09-11 00 21 04 たまらねえぜ! -- 2014-11-09 14 18 12 ってか、キャッシュさんってどこでおぼえたんだよー。わからないよー。 -- 2014-08-19 19 27 12 朝からいい気分だ。 -- 2014-03-13 09 12 13 絵が!絵が怖いよ! -- 2013-03-17 21 43 48 善良は幸せになるべき -- 2012-10-08 16 11 50 虐待された子はいい子に育てやすい。これ法則です しかし、れいぱぁが引き継がれなくて良かったよ -- 2012-09-25 14 25 11 でいぶを精神的に追い詰めるとは、、、こいつできる -- 2012-08-10 17 06 33 いままでのSSの中で1番面白いし良作だった!! いい感じ! -- 2012-07-25 17 52 11 千円札と一円玉の対比が効いてていいね 両親とは正反対なありすには幸せに過ごしてほしいものだ -- 2012-03-25 22 46 55 1円だけw -- 2011-12-12 19 09 01 さいこーーー -- 2011-10-02 00 31 39 ↓X7 日本は客も下手に出てるだろ 金を出して買うのに’ください’なんて言うのは日本人くらいじゃないか? 以前日本語がまだたどたどしい中国人が店番してるとこで’それください’って言ったら ぎょっとした顔をされた、すぐにピンときて買うって意味ですよと伝えたら分かってくれたが でもまあ確かに’ください’って変かもなとも思ったよ -- 2011-08-25 04 19 05 人間すら奴隷に出来る魔法のアイテムは 人間から恵んで貰わないと手に入らないって時点で矛盾してる事に気付かんのかね -- 2011-01-19 17 22 53 このお兄さんはいい人だな -- 2010-12-31 15 43 48 お兄さんと一緒にありすが出てきてもおもしろかたと思ったわ。乙 -- 2010-11-15 04 58 24